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第六章
モテる男の彼女①
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週明け、いつもの日常が始まる――
いつもと違うのは、私が蒼空さんのマンションから出勤するということ。
もちろん社内では内緒にするために、別々に出勤する。途中まで一緒に行こうと言われたが、通勤路になっているところを一緒に歩いていたら、誰に見られるかわからない。
蒼空さんが先に出勤し、私はいつもよりゆっくりめにマンションを出た。電車に乗らなくていいだけで、朝の余裕が全く違ってくる。
オフィスビルに着いて、高層階行きのエレベーターの順番を待つ。朝は一度では乗れずに、次が来るのも時間がかかるのだ。
やっとのことで、オフィスのある28階に着き、満員のエレベーターを降りて一息つける。
「おはようございます」
いつものように挨拶をしながらオフィスに入ったのだが、何やらいつもと様子が違った。いつもなら挨拶が返ってくるのに、こちらをチラチラ見て何かを言っている。
何があったのだろうか……
開発部2課の自分の席に向かっていると、前から林先輩がやって来きた。しかも、険しい表情をしている。
嫌な予感しかしない……
「ねえ。あなた? 週末に片桐課長と一緒に歩いていたのは」
「へ!?」
「二人が仲良く歩いているのを見たって子がいるの」
「……」
週末、オフィスビルの前を通った時にドキドキしたが、まさか本当に見られていたなんて思いもしなかった。それにしても、今の言い方のだと、目撃者は林先輩本人ではなさそうだ。この場をどう乗り切るべきか思案する。林先輩の声が大きくて、オフィス内全体から注目されているのだ。どこかに林先輩に週末のことを話した目撃者がいるかも知れない……。この状況下で下手に口を開いたら、墓穴を掘ってしまう。
「林、ちょっと来てくれ」
「は~い」
絶妙のタイミングで、蒼空さんが林先輩を呼んだ。私には尋問口調だった態度が一変、語尾にハートマークが見えそうな返事をしている。
「田中、お前もだ」
「え゛!?」
一方、蒼空さんに呼ばれた田中さんは、何かを察したのか林先輩とは正反対の、怯えたリアクションだ。
ひとまず窮地を切り抜けたようだが、林先輩にバレたも同然のこの状況はピンチに違いない。
いつもと違うのは、私が蒼空さんのマンションから出勤するということ。
もちろん社内では内緒にするために、別々に出勤する。途中まで一緒に行こうと言われたが、通勤路になっているところを一緒に歩いていたら、誰に見られるかわからない。
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オフィスビルに着いて、高層階行きのエレベーターの順番を待つ。朝は一度では乗れずに、次が来るのも時間がかかるのだ。
やっとのことで、オフィスのある28階に着き、満員のエレベーターを降りて一息つける。
「おはようございます」
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何があったのだろうか……
開発部2課の自分の席に向かっていると、前から林先輩がやって来きた。しかも、険しい表情をしている。
嫌な予感しかしない……
「ねえ。あなた? 週末に片桐課長と一緒に歩いていたのは」
「へ!?」
「二人が仲良く歩いているのを見たって子がいるの」
「……」
週末、オフィスビルの前を通った時にドキドキしたが、まさか本当に見られていたなんて思いもしなかった。それにしても、今の言い方のだと、目撃者は林先輩本人ではなさそうだ。この場をどう乗り切るべきか思案する。林先輩の声が大きくて、オフィス内全体から注目されているのだ。どこかに林先輩に週末のことを話した目撃者がいるかも知れない……。この状況下で下手に口を開いたら、墓穴を掘ってしまう。
「林、ちょっと来てくれ」
「は~い」
絶妙のタイミングで、蒼空さんが林先輩を呼んだ。私には尋問口調だった態度が一変、語尾にハートマークが見えそうな返事をしている。
「田中、お前もだ」
「え゛!?」
一方、蒼空さんに呼ばれた田中さんは、何かを察したのか林先輩とは正反対の、怯えたリアクションだ。
ひとまず窮地を切り抜けたようだが、林先輩にバレたも同然のこの状況はピンチに違いない。
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