35 / 137
第六章
モテる男の彼女①
しおりを挟む
週明け、いつもの日常が始まる――
いつもと違うのは、私が蒼空さんのマンションから出勤するということ。
もちろん社内では内緒にするために、別々に出勤する。途中まで一緒に行こうと言われたが、通勤路になっているところを一緒に歩いていたら、誰に見られるかわからない。
蒼空さんが先に出勤し、私はいつもよりゆっくりめにマンションを出た。電車に乗らなくていいだけで、朝の余裕が全く違ってくる。
オフィスビルに着いて、高層階行きのエレベーターの順番を待つ。朝は一度では乗れずに、次が来るのも時間がかかるのだ。
やっとのことで、オフィスのある28階に着き、満員のエレベーターを降りて一息つける。
「おはようございます」
いつものように挨拶をしながらオフィスに入ったのだが、何やらいつもと様子が違った。いつもなら挨拶が返ってくるのに、こちらをチラチラ見て何かを言っている。
何があったのだろうか……
開発部2課の自分の席に向かっていると、前から林先輩がやって来きた。しかも、険しい表情をしている。
嫌な予感しかしない……
「ねえ。あなた? 週末に片桐課長と一緒に歩いていたのは」
「へ!?」
「二人が仲良く歩いているのを見たって子がいるの」
「……」
週末、オフィスビルの前を通った時にドキドキしたが、まさか本当に見られていたなんて思いもしなかった。それにしても、今の言い方のだと、目撃者は林先輩本人ではなさそうだ。この場をどう乗り切るべきか思案する。林先輩の声が大きくて、オフィス内全体から注目されているのだ。どこかに林先輩に週末のことを話した目撃者がいるかも知れない……。この状況下で下手に口を開いたら、墓穴を掘ってしまう。
「林、ちょっと来てくれ」
「は~い」
絶妙のタイミングで、蒼空さんが林先輩を呼んだ。私には尋問口調だった態度が一変、語尾にハートマークが見えそうな返事をしている。
「田中、お前もだ」
「え゛!?」
一方、蒼空さんに呼ばれた田中さんは、何かを察したのか林先輩とは正反対の、怯えたリアクションだ。
ひとまず窮地を切り抜けたようだが、林先輩にバレたも同然のこの状況はピンチに違いない。
いつもと違うのは、私が蒼空さんのマンションから出勤するということ。
もちろん社内では内緒にするために、別々に出勤する。途中まで一緒に行こうと言われたが、通勤路になっているところを一緒に歩いていたら、誰に見られるかわからない。
蒼空さんが先に出勤し、私はいつもよりゆっくりめにマンションを出た。電車に乗らなくていいだけで、朝の余裕が全く違ってくる。
オフィスビルに着いて、高層階行きのエレベーターの順番を待つ。朝は一度では乗れずに、次が来るのも時間がかかるのだ。
やっとのことで、オフィスのある28階に着き、満員のエレベーターを降りて一息つける。
「おはようございます」
いつものように挨拶をしながらオフィスに入ったのだが、何やらいつもと様子が違った。いつもなら挨拶が返ってくるのに、こちらをチラチラ見て何かを言っている。
何があったのだろうか……
開発部2課の自分の席に向かっていると、前から林先輩がやって来きた。しかも、険しい表情をしている。
嫌な予感しかしない……
「ねえ。あなた? 週末に片桐課長と一緒に歩いていたのは」
「へ!?」
「二人が仲良く歩いているのを見たって子がいるの」
「……」
週末、オフィスビルの前を通った時にドキドキしたが、まさか本当に見られていたなんて思いもしなかった。それにしても、今の言い方のだと、目撃者は林先輩本人ではなさそうだ。この場をどう乗り切るべきか思案する。林先輩の声が大きくて、オフィス内全体から注目されているのだ。どこかに林先輩に週末のことを話した目撃者がいるかも知れない……。この状況下で下手に口を開いたら、墓穴を掘ってしまう。
「林、ちょっと来てくれ」
「は~い」
絶妙のタイミングで、蒼空さんが林先輩を呼んだ。私には尋問口調だった態度が一変、語尾にハートマークが見えそうな返事をしている。
「田中、お前もだ」
「え゛!?」
一方、蒼空さんに呼ばれた田中さんは、何かを察したのか林先輩とは正反対の、怯えたリアクションだ。
ひとまず窮地を切り抜けたようだが、林先輩にバレたも同然のこの状況はピンチに違いない。
23
お気に入りに追加
445
あなたにおすすめの小説
小さな恋のトライアングル
葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児
わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係
人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった
*✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻*
望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL
五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長
五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる