13 / 50
第13話 怪盗誘導作戦
しおりを挟む
「……」
私は怪盗が立っていたシャンデリアを見上げたまま、黙り込んでいた。暗闇に溶け込むようにして消えていったが、まだそこに残っているような気がしてならない。
なにより、頭の中でさっきの言葉が何度も反響し、そのたびに違和感が強くなっていく。
うーん……、さっきの台詞といい、あのシャンデリアといい、やっぱりおかしいわよね……。
「シルヴィア様、どうかさなれましたか?」
衛兵の問いかけに私はハッと我に返り、軽く首を振って答えた。
「あ、いえ。変だな、と思いまして」
「?」
「あの怪盗、まだあそこにいませんか?」
とシャンデリアを扇で差せば、衛兵も一緒に見上げて目を細めた。
「……さぁ、暗くて僕にはよく分かりませんが」
「それにさっきの言いぐさも引っかかります。あれではまるで……」
「殿下ぁ!」
突然、ルミナ様が甘ったるい声を出してルース殿下にすり寄ろうとした。しかし腕を衛兵に捕まれているせいで、身動きがとれないでいる。
それでもルミナ様は嬉しそうにきゃぴきゃぴと言葉を紡いだのだった。
「ルミナ、いいこと思いつきましたんですけど! 聞いて下さいます?」
ルミナ様ったら、また令嬢の皮を被って……。
でも思いついたって、いったい何を?
「おお、なんだルミナ」
ルース殿下はパッとルミナ様の言葉を聞く、甘やかしモードに入ってしまった。
は?
ちょっと待ってくださいなルース殿下。あなたルミナ様に騙されたばかりでしょうに……。
それなのに、なにあっという間に元に戻っているの、この人。
呆れている私の前で、二人は話を進めていく。
「あのおっかない怪盗さん、ルミナの首飾りを狙ってるみたいですわねぇ」
「お前の首飾りではなく王家の首飾りだがな。さて、あいつが降りて奪いに来る前に対策を考えなければ……」
「そ・こ・でぇ、ルミナから提案があるです! ……ああん、取れないですぅ」
ルミナ様は腕を首の後ろに回した。
首飾りをとろうとしているのだ。
が、衛兵に片腕を捕まれているため片手である。片手ではうまくできないのは当たり前だ。
「お手伝いしますわ」
なにを考えているのか分からないが、とりあえず不便そうなので申し出てみる。だが彼女は私を制し、ルース殿下に可愛らしい視線を向けた。
「シルヴィア様よりもぉ、殿下に手伝ってもらいたいですぅ」
「ああ、うむ」
請われたルース殿下は薄闇のなかでも分かるくらいハッキリと鼻の下を伸ばして、ルミナ様の背後にまわり、うなじに指をかけた。
「うふふ、くすぐったいですー」
「こら、そんなにくねくね動くのではない。ただでさえ暗いのだからな。まったく、お前はしょうのない奴だ」
「うふふ、きゃふふー」
キャッキャするルミナ様と、そんな彼女にまんまと載せられてまんざらでもなさそうなルース殿下。
殿下好みの女の子の演技をして、なにを考えているのだろう。
しかしまあ、これはこれで見上げたものである。そしてそれにまんまとハマるルース殿下は、本当にどうしようもない男だ。先ほど彼女の本性を見たばかりだというのに……。
さて、ルミナ様はなにを考えているのか。
「……よし。取れたぞルミナ」
「じゃあその首飾り、ルース殿下にお返しするですっ」
ルミナ様が首飾りを渡すと、ルース殿下は嬉しそうにそれを受け取った。
「ありがとう、ルミナ。よく決心してくれた。しかと受け取ったぞ」
ルミナ様は微笑んで「どういたしましてですぅ」と言ったかと思うと、次に意外なことを口にした。
「でっ、早速なんですけどぉ、ルミナは逃げようと思いますの」
「は?」
これにはさすがのルース殿下も聞き返していた。
「首飾りを返したから自分を逃がせ、という司法取引……か? 俺はそんな取引に応じたつもりはないのだが」
殿下が半ば呆れたように訊ねると、ルミナ様は得意げに微笑んだ。
「殿下っ、ルミナが逃げるのは司法取り引きなんかじゃありませんの。いいですか、ルミナが逃げるのは怪盗誘導作戦の一環ですのよ」
「「「怪盗誘導作戦?」」」
私、ルース殿下、そして衛兵が声を揃えて驚きの声をあげる。
なにその作戦。ルミナ様はなにを考えたっていうの?
理解が追いつかないわ。
「いま、ルミナは殿下に首飾りを渡しましたわよね?」
「ああ。確かに返してもらったぞ」
「でもそれを怪盗は知りません。だからルミナ、これから大声で叫びながら逃げようと思いますの。そしたらあの怪盗さん、ルミナを追ってきますよね。だってルミナが首飾りしてるって思ってるんですもの」
ああ、なるほど。つまり囮になるつもりなのね。さすがはルミナ様、小賢しいことを考えるものだ。
やっぱり人を罠にはめようとした悪党の考えることは違うわね。
いえ、褒めてるのよこれは。
……ってそうはいくか! そのまま逃げるつもりでしょ、これ!
私は怪盗が立っていたシャンデリアを見上げたまま、黙り込んでいた。暗闇に溶け込むようにして消えていったが、まだそこに残っているような気がしてならない。
なにより、頭の中でさっきの言葉が何度も反響し、そのたびに違和感が強くなっていく。
うーん……、さっきの台詞といい、あのシャンデリアといい、やっぱりおかしいわよね……。
「シルヴィア様、どうかさなれましたか?」
衛兵の問いかけに私はハッと我に返り、軽く首を振って答えた。
「あ、いえ。変だな、と思いまして」
「?」
「あの怪盗、まだあそこにいませんか?」
とシャンデリアを扇で差せば、衛兵も一緒に見上げて目を細めた。
「……さぁ、暗くて僕にはよく分かりませんが」
「それにさっきの言いぐさも引っかかります。あれではまるで……」
「殿下ぁ!」
突然、ルミナ様が甘ったるい声を出してルース殿下にすり寄ろうとした。しかし腕を衛兵に捕まれているせいで、身動きがとれないでいる。
それでもルミナ様は嬉しそうにきゃぴきゃぴと言葉を紡いだのだった。
「ルミナ、いいこと思いつきましたんですけど! 聞いて下さいます?」
ルミナ様ったら、また令嬢の皮を被って……。
でも思いついたって、いったい何を?
「おお、なんだルミナ」
ルース殿下はパッとルミナ様の言葉を聞く、甘やかしモードに入ってしまった。
は?
ちょっと待ってくださいなルース殿下。あなたルミナ様に騙されたばかりでしょうに……。
それなのに、なにあっという間に元に戻っているの、この人。
呆れている私の前で、二人は話を進めていく。
「あのおっかない怪盗さん、ルミナの首飾りを狙ってるみたいですわねぇ」
「お前の首飾りではなく王家の首飾りだがな。さて、あいつが降りて奪いに来る前に対策を考えなければ……」
「そ・こ・でぇ、ルミナから提案があるです! ……ああん、取れないですぅ」
ルミナ様は腕を首の後ろに回した。
首飾りをとろうとしているのだ。
が、衛兵に片腕を捕まれているため片手である。片手ではうまくできないのは当たり前だ。
「お手伝いしますわ」
なにを考えているのか分からないが、とりあえず不便そうなので申し出てみる。だが彼女は私を制し、ルース殿下に可愛らしい視線を向けた。
「シルヴィア様よりもぉ、殿下に手伝ってもらいたいですぅ」
「ああ、うむ」
請われたルース殿下は薄闇のなかでも分かるくらいハッキリと鼻の下を伸ばして、ルミナ様の背後にまわり、うなじに指をかけた。
「うふふ、くすぐったいですー」
「こら、そんなにくねくね動くのではない。ただでさえ暗いのだからな。まったく、お前はしょうのない奴だ」
「うふふ、きゃふふー」
キャッキャするルミナ様と、そんな彼女にまんまと載せられてまんざらでもなさそうなルース殿下。
殿下好みの女の子の演技をして、なにを考えているのだろう。
しかしまあ、これはこれで見上げたものである。そしてそれにまんまとハマるルース殿下は、本当にどうしようもない男だ。先ほど彼女の本性を見たばかりだというのに……。
さて、ルミナ様はなにを考えているのか。
「……よし。取れたぞルミナ」
「じゃあその首飾り、ルース殿下にお返しするですっ」
ルミナ様が首飾りを渡すと、ルース殿下は嬉しそうにそれを受け取った。
「ありがとう、ルミナ。よく決心してくれた。しかと受け取ったぞ」
ルミナ様は微笑んで「どういたしましてですぅ」と言ったかと思うと、次に意外なことを口にした。
「でっ、早速なんですけどぉ、ルミナは逃げようと思いますの」
「は?」
これにはさすがのルース殿下も聞き返していた。
「首飾りを返したから自分を逃がせ、という司法取引……か? 俺はそんな取引に応じたつもりはないのだが」
殿下が半ば呆れたように訊ねると、ルミナ様は得意げに微笑んだ。
「殿下っ、ルミナが逃げるのは司法取り引きなんかじゃありませんの。いいですか、ルミナが逃げるのは怪盗誘導作戦の一環ですのよ」
「「「怪盗誘導作戦?」」」
私、ルース殿下、そして衛兵が声を揃えて驚きの声をあげる。
なにその作戦。ルミナ様はなにを考えたっていうの?
理解が追いつかないわ。
「いま、ルミナは殿下に首飾りを渡しましたわよね?」
「ああ。確かに返してもらったぞ」
「でもそれを怪盗は知りません。だからルミナ、これから大声で叫びながら逃げようと思いますの。そしたらあの怪盗さん、ルミナを追ってきますよね。だってルミナが首飾りしてるって思ってるんですもの」
ああ、なるほど。つまり囮になるつもりなのね。さすがはルミナ様、小賢しいことを考えるものだ。
やっぱり人を罠にはめようとした悪党の考えることは違うわね。
いえ、褒めてるのよこれは。
……ってそうはいくか! そのまま逃げるつもりでしょ、これ!
0
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
婚約破棄された公爵令嬢エルカミーノの、神級魔法覚醒と溺愛逆ハーレム生活
ふわふわ
恋愛
公爵令嬢エルカミーノ・ヴァレンティーナは、王太子フィオリーノとの婚約を心から大切にし、完璧な王太子妃候補として日々を過ごしていた。
しかし、学園卒業パーティーの夜、突然の公開婚約破棄。
「転入生の聖女リヴォルタこそが真実の愛だ。お前は冷たい悪役令嬢だ」との言葉とともに、周囲の貴族たちも一斉に彼女を嘲笑う。
傷心と絶望の淵で、エルカミーノは自身の体内に眠っていた「神級の古代魔法」が覚醒するのを悟る。
封印されていた万能の力――治癒、攻撃、予知、魅了耐性すべてが神の領域に達するチート能力が、ついに解放された。
さらに、婚約破棄の余波で明らかになる衝撃の事実。
リヴォルタの「聖女の力」は偽物だった。
エルカミーノの領地は異常な豊作を迎え、王国の経済を支えるまでに。
フィオリーノとリヴォルタは、次々と失脚の淵へ追い込まれていく――。
一方、覚醒したエルカミーノの周りには、運命の攻略対象たちが次々と集結する。
- 幼馴染の冷徹騎士団長キャブオール(ヤンデレ溺愛)
- 金髪強引隣国王子クーガ(ワイルド溺愛)
- 黒髪ミステリアス魔導士グランタ(知性溺愛)
- もふもふ獣人族王子コバルト(忠犬溺愛)
最初は「静かにスローライフを」と願っていたエルカミーノだったが、四人の熱烈な愛と守護に囲まれ、いつしか彼女自身も彼らを深く愛するようになる。
経済的・社会的・魔法的な「ざまぁ」を経て、
エルカミーノは新女王として即位。
異世界ルールで認められた複数婚姻により、四人と結ばれ、
愛に満ちた子宝にも恵まれる。
婚約破棄された悪役令嬢が、最強チート能力と四人の溺愛夫たちを得て、
王国を繁栄させながら永遠の幸せを手に入れる――
爽快ざまぁ&極甘逆ハーレム・ファンタジー、完結!
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる