死に戻りした転生先が、悪役令嬢(私)じゃなくて私を断罪した大嫌いな王子だった件

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 私の中で、ある思いが燻っていた。

 それは、アレク王子が「僕ジュリアに殺された」と言った事だ。

 ……“も”って何?と。

 確かに私を陥れたのはヒロインだ。だが、その私の死刑を決めたのは……決める権限を持っていたのは“第一王子”なのである。

 つまり、私を殺したのはアレク王子なのだ。

 その時はまるで自分が被害者のように振る舞う王子に怒りさえ湧いていた。ハッキリ言って被害者は私だと叫んで殴りたいくらいだ。馬鹿みたいな理由で殺されて、死に戻りしたかと思えば私を殺した張本人に転生してしまったのだから。

 そんな時に喧嘩を売られて黙っていられるほど、私は人間が出来てはいない。まぁ、多少は八つ当たりだけども。


「お、王子……?」

「何を変な事を言ってるんですか?」

 から突然言われたその命令内容に見るからに戸惑うふたりの姿が面白くて思わず「ふっ」と笑いが込み上げてきてしまった。

「……そうだ、合言葉。僕らだけの秘密の合言葉を、もちろん覚えてるよね?」

「え?えぇ、それはもちろん!我々は魂の盟友です。もしも生まれ変わっても、すぐに王子だとわかる自信がありますからね!この忠誠心さえあれば、たったひと言“合言葉”を言ってくれれば────「“僕だよ”って?」は、はい!目を見てそう言っていただければきっと来世でもすぐに分かる自信が……あり、ます…………………」

 私はその時どんな顔でマーカーとサイラスを見ていたのだろうか?王子スマイルは作っていたはずなのだけど、ふたりはなんだか恐ろしい物でも見たような顔をして生唾を飲み込んでいた。

「……ふふっ、それは頼もしいね。ごめん、さっきの命令は冗談だよ。“なんでも”なんて言うから、つい試したくなっただけなんだ。
 今日はもう疲れたから、詳しい話は明日にしよう。それと、ルティア・シューレクト公爵令嬢については僕の指示なく勝手に手を出さないように。これは冗談ではなく王子としての命令だ。いいな?」

「は、はい!あの悪役令嬢は王子の獲物と言うことですね?!さすがはアレク王子!聖女ジュリアの憂いを自らの手で晴らすために我々には手出し無用と仰るとは……素晴らしい!王子があの悪役令嬢を懲らしめている間のジュリアの世話は我々にお任せください!」

「手を出さなきゃいいんですよね?!わかりました!」

 ひとり、絶対にわかっていなさそうな脳筋がいるがそこはあえてスルーすることにした。という約束くらいなら守れるだろう。

 このふたりがアレク王子に対して忠誠心が無いことはすでにわかっている。きっと王子は必死に“合言葉”を叫んだだろうに……相手にされないどころか馬鹿にされてどれだけ絶望したのか……まぁ、私に噛みついてきた時点で反省はしていないのは明確だ。

 こうしてふたりを部屋から追い出し、深く長い息を吐き出した。

 なんだか前世の記憶を思い出して気楽にはなったたものの、どうも悪役令嬢の感情に引っ張られてしまう気がした。気が付くと思考がダークサイド寄りになっているのだ。

 まぁ、ルティアからしたら王子とヒロイン、それにマーカーとサイラスも復讐対象なのでしかたないかもしれないけれど……それ以前からストレスが溜まっていたのよね。

 好き勝手するヒロインに私が注意をし、その度に泣きついてくるヒロインを慰めるために王子や攻略対象者達が私に文句を言ってくる日常を思い出して辟易としていた。

 まぁ、今はいい。とりあえずやる事は決まっているのだ。

 まずは“私”の冤罪を証明して死刑を回避すること……それが一番の目的だ。このまま王子として生きていくにしても、あのヒロインに攻略されるなんて死んでもゴメンである。

 それに────このままでは、どのみち王子はヒロインに殺されてしまうようだしね。

「さてと……」

 ゲームの進行度具合いを考えると、そろそろ仕上げのはずである。確か、アレク王子のイベントがあったはずだ。

ヒロインの目的が逆ハーレムルートなのは間違いない。ちなみに悪役令嬢の首をちょんぱしないとヒロインの逆ハーレムは確立しないという設定だ。ならばヒロインは何が何でも悪役令嬢を死刑にしようと動くだろう。運営よ、なんつー設定にしてくれたんだか。





 まぁ、私のヒロインへの好感度なんて……とっくにマイナスだけれども。

 どのみちゲーム通りだとしても悪役令嬢の死刑実行までは数日はかかるはずだ。婚約破棄だけならまだしも、さすがに公爵令嬢の死刑がそんなにすんなりと行われるわけがない。証拠の提出に証人からの聞き取り……それに、私と王子を婚約者にと認めた国王陛下の許可だ。もしあの死刑が国王陛下の知らない間にされていたとしたらそれだけで大問題である。

 そして────悪役令嬢の親……ルティアを可愛がってくれていたお父様であるシューレクト公爵がこの状況を黙って見ていたとは思えない。私が殺されるあの瞬間にお父様の姿は見えなかった。私は見捨てられたのか、それともなにか理由があったのか……それも知りたかった。

「……っ」


 考えれば考えるほど、首を切られた瞬間の恐怖と痛みを思い出して頭の中がスッと冷たくなる気がする。その度にここはゲームの世界だけど、私は本当に死んだんだと思い知らされるのだ。

 ヒロインが何をどうするかは前世の私がよく知っている。それにきっとなら正規ルートを好むプレイヤーがしないようなズル賢い方法を堂々としている気がしていた。あの時、最後に私に見せたあの醜悪な顔がそれを物語っていた。がどれだけ王子やヒロインを憎んでいるか……思い知るがいい。


「それじゃあまずは、ヒロインの手駒をどうにかしようかしら」


 前回はヒロインに好き勝手された挙げ句に手のひらの上で転がされたわけだが、次は私のターンである。


 さぁ、ヒロイン狩りの始まりだ。



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