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第二話 囚われの二年間
第二話 四
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牢の壁の高い位置には小さな格子窓がある。通風孔に過ぎないのでそこからの脱出は不可能だが、かろうじて空は見える。今のあかりにとってはそれだけで十分だった。
(今日で七回目の朝)
目覚めて一週間。
あかりの心は元来の強さを取り戻しつつあった。もしかしたら虚勢に過ぎないのかもしれないが、それでも気が張れるだけ自分は大丈夫だと信じられる。
小さいころからの習慣である朝の祈祷を朱咲へ捧げる。それに加えて、幼なじみのお守りを通して彼らの無事を確かめることがここ最近のあかりの日課になっていた。
「うん、無事だね。今日も結月と秋と昴が元気でありますように」
術がまともに使えなくても、あかりはこうして言葉を口に出すようにしている。言霊を感じると力の全ては失われていないのだと安心できたし、言葉に力が乗って術が使えるようになるかもしれないと考えたからだ。そして、遠い結月たちに想いが届けばいいと祈った。
食事は不定期で、供されたとしても微々たるものでしかない。
「私は心身ともに満たされてる。そう、お腹もいっぱい、元気も有り余ってるんだから」
ひもじいが、言霊の力があると信じ、こうして誤魔化している。
戻って来た牢番が不審な目であかりを睨んだ。しかしあかりは無視して、できる修行に集中した。
南の地があんなことになった以上、そこを司る朱咲も心配だった。あかりの十五年の人生で朱咲と交感したことは数えるくらいしかないが、修行がてら今日も朱咲に交感を試みる。
「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ、宇内八方御方長南、たちまち急戦を貫き、南都に達し、朱咲に感ず、奇一奇一たちまち感通、急々如律令」
霊剣は呼び出せないままなので、最後に行うべき霊剣を天に掲げるという所作はできないが、祝詞にはこめられるだけ気をこめた。しかし何も起こらない。
門番の視線が鋭さを増した。刺さるようなそれをあかりはひたすら知らないふりで通した。
(今日で七回目の朝)
目覚めて一週間。
あかりの心は元来の強さを取り戻しつつあった。もしかしたら虚勢に過ぎないのかもしれないが、それでも気が張れるだけ自分は大丈夫だと信じられる。
小さいころからの習慣である朝の祈祷を朱咲へ捧げる。それに加えて、幼なじみのお守りを通して彼らの無事を確かめることがここ最近のあかりの日課になっていた。
「うん、無事だね。今日も結月と秋と昴が元気でありますように」
術がまともに使えなくても、あかりはこうして言葉を口に出すようにしている。言霊を感じると力の全ては失われていないのだと安心できたし、言葉に力が乗って術が使えるようになるかもしれないと考えたからだ。そして、遠い結月たちに想いが届けばいいと祈った。
食事は不定期で、供されたとしても微々たるものでしかない。
「私は心身ともに満たされてる。そう、お腹もいっぱい、元気も有り余ってるんだから」
ひもじいが、言霊の力があると信じ、こうして誤魔化している。
戻って来た牢番が不審な目であかりを睨んだ。しかしあかりは無視して、できる修行に集中した。
南の地があんなことになった以上、そこを司る朱咲も心配だった。あかりの十五年の人生で朱咲と交感したことは数えるくらいしかないが、修行がてら今日も朱咲に交感を試みる。
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霊剣は呼び出せないままなので、最後に行うべき霊剣を天に掲げるという所作はできないが、祝詞にはこめられるだけ気をこめた。しかし何も起こらない。
門番の視線が鋭さを増した。刺さるようなそれをあかりはひたすら知らないふりで通した。
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