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第3章 淫武御前トーナメントの章
33話 2回戦
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33話 2回戦
淫魔たちの生みの親である龍司は、大会に出場しているわけでも、ましてや大会の運営に参加しているわけでもない。
しかし、この国を動かす政治家の半数が淫魔であり、彼の子どもである以上、この国を牛耳っているといっても過言ではなかった。
それゆえ彼を知るものは、彼を〝裏社会〟のドンと呼んだ。
そんな彼を招待するためだけに作られた超VIPルームに、彼を追い掛けてマーラがやってきたのだ。
「話が……違うんではないか」
マモンに堕ちた翔子と、マモンの2人をそのままに、龍司はまるで飽きたかのように消えたのだ。
「ア゛? 2度もやられてなに寝ぼけたこといってんだテメェ?」
「ぐ、っ……」
「どうしても翔子と戦いてぇって言うから戦わせてやったんだろうが。負けておいてなに言ってやがんだのろまが!」
翔子に殺されてから、マーラは龍司に蘇らせてもらい、それから再戦を夢見て血の滲むような修練を積み、今日まで生きてきた。
結果、マーラは敗れたのだ。
「ぐ……。龍司殿っ、何を、何を考えている……。龍司殿の行動には一貫性の欠片も感じられない。世界を淫魔で埋めたい訳でも、世界をひっくり返したい訳でもない……。今日、ますます分からなくなったぞ」
「くだらねぇこと言ってんじゃねぇ。お前はこれから翔子を好きに出来るんだ。よかったじゃねぇか。そうだろ? たまに来る命令にだけ従っていれば幸せに暮らせるからよ。なぁ?」
――なにが、幸せだ。このようなやり方で言いなりにして何が楽しい。
そんなところにあるゴールに何の意味がある。
「分かったらとっとと失せろや」
観光客のようなふざけた格好で似合わない社長椅子に座っている龍司が、さらにふざけたように椅子をクルンと回転させてそっぽを向いたのだ。
「グウッ……」
殴り掛かれるなら殴り掛かりたい。しかし、この男には逆立ちしても勝てない。
……誰も、勝てない。
翔子を手にしたい。自らの腕尽くでだ。
それが蘇ってからのマーラの目的だった。生きる理由でもあった。
達成するために身体を一から鍛え直した。
時折伝えられる龍司からの指令もこなし続けた。
全ては翔子を超え、そして手に入れるためだった。
超えずに手に入れて意味はあるのか? こんな姑息なやり方で手に入れて、どんな声で翔子くんと会話をしろというのだ。どんな顔をして会えというのだ。
奇妙なくらいにレッドカーペッドに足が沈んだ。
障害物がないにもかかわらず、廊下に転げてしまいそうだった。控え室までの通路が初めて通る道のように覚束なく、その癖して新鮮味は全くなかった。
もうすぐ2回戦が始まるというのに、試合ホールから聞こえてくる大会アナウンスの声も、歓声もすごく作り物に感じられた。
「あまり気にしないほうがいいわよぉ~。なーんてね。あたしが言えた義理じゃないけど~♪」
「翔子……くん……」
待ち伏せしたように立っていた翔子が、慈愛に満ちた女神に見えていた。
妖しい女。底知れぬ恐さを与えてくる女。それらの印象をひっくり返すくらいの温かなオーラを纏っていて、そのオーラに包まれた身体がジーンッ……、と震え上がった。
「続き。しましょうか」
翔子に促されるままに、2人は2回戦を前にして行方を眩ますのであった。
*****
そして、翔子ことオネエが行方不明になって、一番の被害を被るのはこの2人である。
「やっと、終わ……り……うぇ……」
「ナツキーお疲れさまー」
「え、エリナ? あ、あれ? エリナ、だよね? ……どうして……ここに…………ぶっ……」
一回戦の罰ゲームが終わり、輪姦地獄から解放されたナツキは、胃から戻りそうな白濁を押し返すように唾を飲み込んだ。
散々な目に遭ったばかりのナツキであったが、どうしたわけかスクエアコートの端、待機席にエリナが座っていて、思ったままに疑問をぶつけたのだ。
「あーついさっきまで医務室で寝てたんだけどー、予選で戦った卑怯じいさんに叩き起こされたんだよねー。で、この会場にいけって言われたからきたー」
「そ、そう…………、小金井が……っ? はぁ、はぁ……。オ、オネエは……?」
「さぁー? それよりナツキーすごい臭いしてるけど大丈夫なの? ドロドロだし」
「大丈夫じゃないよ……っ、でも、もう、……次始まるでしょ」
『続いて第2回戦、魔裸利亜チームVS風チーム!! コートに整列してくださーーい!!!!』
言ったそばから、と思ったナツキではあったが、整列?
予選、そして一回戦も、気付けば戦いが始まったり、乱入だったりと、思えばナツキはまともに試合に臨んでいなかった。それもあって、ナツキは初心者丸出しな感じに、あたりをキョロキョロ見回した。
――全部オネエが進めてくれていたからだ。どうしたら……。
と言うかオネエは? 思う中、エリナが相手チームと交渉を始めた。
「1人棄権だから勝ち抜き戦のほうが助かるんだけどー、だめ?」
勝手に話を進めるエリナに慌てて、ナツキが耳元にコソコソと問い掛ける。
「エリナっ、本気なの? 棄権ってオネエだよね? オネエはどこにいったの?」
「知らなーい。来れないとしか聞いてないよ?」
オネエとは別々に罰ゲームを受けてから一度も再会していない。
イヤでも不安にさせられる。
そんな中、向かいに並んだ対戦相手の男達がひそひそ話しを始めた。
「勝ち抜きだってよ」「あぁ、運良く翔子がでねぇ」「一回殺されてるからトラウマもんだ……」「厄介なチビガキも戦えそうにねぇな。やられすぎて立っているのもやっとだぜ」「残り1人は、俺たちより弱い。――圧倒的に弱かった奴以外戦えねぇ。勝った」
わざとなのか、と思ってしまうくらいに、淫魔達のやり取りは丸聞こえだった。
対戦相手の淫魔達はエリナをバカにするだけあって、実力があるのは見て取れた。予選、一回戦を戦い終えて無傷なのがなによりの証拠だった。
勝ち抜き戦にしても、星取り戦にしてもナツキ達の不利に変わりはなかった。
しかしそれはあくまでエリナの実力が予選の時と同じままの場合の話だ。
予選でのエリナは忍びとしての能力が封じられていた。
予選だけではない。
エリナは、ナツキが出会った日からずっと力を使えずにいたのだ。
そして、力の封印が解けたエリナは、全ての元凶であるマモンを倒してのけたのだ。
それもあって、――エリナの実力を見てみたい。そう、強く思わされていた。
「ああ。勝ち抜き戦でかまわねぇぜ」
「ふふん♪ ナツキー、ペース配分ミスったときは出番回るかも知れないから、そのときはおねがーい。さっきもおもいっきりミスって倒れちゃったからさー」
医務室で寝こんでしまうくらいの、ガス欠に陥る忍術。出番が来る可能性は十分考えられると思いながらも、ナツキは試合を観戦する。
――向かい合ったままのエリナと対戦相手の男。
アナウンス、そして観客たちも固唾を呑んで見守る。そしてナツキが眉を跳ねさせた直後だった。
「グェあっ!?」
男の足元から一瞬の竜巻が生まれて消えた。その刹那、男の装い全てが散り咲いて、コートの上に精臭が広がった。
まるで30秒後のコマに一瞬で飛んだ、そんな圧倒的な光景だった。
――これは……。
観客、そしてアナウンス。コートに上がることを許された審判さえもが、固唾を呑んだ硬直のまま、静けさを保っていた。
「オ゛…………、ぉ、オ…………ォ……」
斬り合いで敗れた侍が、倒れないまま踏ん張って、不自然ながらに千鳥足でバランスを取ろうとしている。そんな奇怪な体勢の男がバダッ!
潰れるように石綿に倒れた。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
エリナが膝を二回屈伸してのストレッチでクールダウンしている中――、犯されるのを楽しみにしていた筈の観客までもが沸き上がった。
恐らく何が起きたのかを理解出来た者など殆どいないだろう。
まるでフィギュアスケートの選手が百倍速でトリプルアクセルを決めるような空中殺法で、衣服をズタズタに裂きながら3度射精に導いていたのだ。
「ナツキーさっきより力のコントロール出来たー! これならあと2人といわず、20人ぐらい余裕だよー」
「あ……、うん」
ナツキはエリナと1度戦っている。
その時ナツキがエリナに持った印象は、トリッキーな戦い方を得意とするタイプだった。相手の読みを外すためにリーチを変えたりしてペースを乱すタイプ。そんな印象だった。
しかしその型は、忍術が使えなくなってから生み出されたフォームなのだろう。
それくらい今目の前で踊られた演舞には、小手先の技が必要なかった。
「残るはあんた1人っ――、トウッ!」
「グァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
強い。マグレでも何でも無く、エリナの実力は本物だった。
見た目は巨乳小学生に退化したのに強い。オネエより強いかも知れない。
ほんとに、盗られる……。オネエを、……奪われる。
ぐっ……。
「ナツキー、これで三回戦進出っ……って何その顔?」
「今度はエリナが泥棒猫みたいになってるからね!」
「は??」
「とぼけてもダメだからね!」
*****
「ひゃ、あははははははっ! あっ、あひっ、あはははっ!」
勘違いが過ぎるナツキは、オネエとの関係についてエリナと休戦協定を結ぶがために、エリナと交渉しようとしたものの大笑いで跳ね返されていた。
「ひゃああっ、あはははっ! ば、ばかじゃないの!? あ、あひっ、あははっ!」
小学生。自分よりも小さな身長の女の子に馬鹿にされている。
それもコンプレックスの乳房だけ異様に発達している小学生に、くの字に腰を折られて笑われたのでは堪らない。
「何で淫魔を好きになるのさっ、あははっ! あたし淫魔に両親殺されてるんだよ? だいたい服部のどこが良いわけー?」
「榎本くんよりは良いよ」
どうやらエリナはほんとのほんとにオネエにはそういった感情を持ち合わせていないらしく、ナツキは一つ不安が解消されて控え室への足取りを軽くしていた。
よかった……よかった……。
馬鹿にされたことさえどうでも良くなるくらい良かった。
エリナはオネエに恋愛感情は持ち合わせていない。
「ふふんっ♪」
普段なら気になる筈の、廊下から流れて来る湿った音色でさえ気にならないほど、ナツキは大きな鼻歌を歌っていた。
この時のナツキは、この粘膜音が、まさか不幸を呼ぶ旋律とは思ってもいなかったのだ。
「んっ、はぁ、はぁ……んっ……ま、また逝きそうっ……」
どこぞのカップルがイチャイチャしていて、ナツキは歩調を速めて去ろうとした。
が、その足取りは、まるで乾いていないコンクリートに片足を突っ込んでしまったように止まった。
淫魔が集う大会だけあって、廊下に出れば度々目にする光景ではある。
しかしそれはあくまで、アベックの1人が、ついさっき噂にしていたオネエでなければの話だ。
「オネエ…………。そこでなにしているの……?」
淫魔たちの生みの親である龍司は、大会に出場しているわけでも、ましてや大会の運営に参加しているわけでもない。
しかし、この国を動かす政治家の半数が淫魔であり、彼の子どもである以上、この国を牛耳っているといっても過言ではなかった。
それゆえ彼を知るものは、彼を〝裏社会〟のドンと呼んだ。
そんな彼を招待するためだけに作られた超VIPルームに、彼を追い掛けてマーラがやってきたのだ。
「話が……違うんではないか」
マモンに堕ちた翔子と、マモンの2人をそのままに、龍司はまるで飽きたかのように消えたのだ。
「ア゛? 2度もやられてなに寝ぼけたこといってんだテメェ?」
「ぐ、っ……」
「どうしても翔子と戦いてぇって言うから戦わせてやったんだろうが。負けておいてなに言ってやがんだのろまが!」
翔子に殺されてから、マーラは龍司に蘇らせてもらい、それから再戦を夢見て血の滲むような修練を積み、今日まで生きてきた。
結果、マーラは敗れたのだ。
「ぐ……。龍司殿っ、何を、何を考えている……。龍司殿の行動には一貫性の欠片も感じられない。世界を淫魔で埋めたい訳でも、世界をひっくり返したい訳でもない……。今日、ますます分からなくなったぞ」
「くだらねぇこと言ってんじゃねぇ。お前はこれから翔子を好きに出来るんだ。よかったじゃねぇか。そうだろ? たまに来る命令にだけ従っていれば幸せに暮らせるからよ。なぁ?」
――なにが、幸せだ。このようなやり方で言いなりにして何が楽しい。
そんなところにあるゴールに何の意味がある。
「分かったらとっとと失せろや」
観光客のようなふざけた格好で似合わない社長椅子に座っている龍司が、さらにふざけたように椅子をクルンと回転させてそっぽを向いたのだ。
「グウッ……」
殴り掛かれるなら殴り掛かりたい。しかし、この男には逆立ちしても勝てない。
……誰も、勝てない。
翔子を手にしたい。自らの腕尽くでだ。
それが蘇ってからのマーラの目的だった。生きる理由でもあった。
達成するために身体を一から鍛え直した。
時折伝えられる龍司からの指令もこなし続けた。
全ては翔子を超え、そして手に入れるためだった。
超えずに手に入れて意味はあるのか? こんな姑息なやり方で手に入れて、どんな声で翔子くんと会話をしろというのだ。どんな顔をして会えというのだ。
奇妙なくらいにレッドカーペッドに足が沈んだ。
障害物がないにもかかわらず、廊下に転げてしまいそうだった。控え室までの通路が初めて通る道のように覚束なく、その癖して新鮮味は全くなかった。
もうすぐ2回戦が始まるというのに、試合ホールから聞こえてくる大会アナウンスの声も、歓声もすごく作り物に感じられた。
「あまり気にしないほうがいいわよぉ~。なーんてね。あたしが言えた義理じゃないけど~♪」
「翔子……くん……」
待ち伏せしたように立っていた翔子が、慈愛に満ちた女神に見えていた。
妖しい女。底知れぬ恐さを与えてくる女。それらの印象をひっくり返すくらいの温かなオーラを纏っていて、そのオーラに包まれた身体がジーンッ……、と震え上がった。
「続き。しましょうか」
翔子に促されるままに、2人は2回戦を前にして行方を眩ますのであった。
*****
そして、翔子ことオネエが行方不明になって、一番の被害を被るのはこの2人である。
「やっと、終わ……り……うぇ……」
「ナツキーお疲れさまー」
「え、エリナ? あ、あれ? エリナ、だよね? ……どうして……ここに…………ぶっ……」
一回戦の罰ゲームが終わり、輪姦地獄から解放されたナツキは、胃から戻りそうな白濁を押し返すように唾を飲み込んだ。
散々な目に遭ったばかりのナツキであったが、どうしたわけかスクエアコートの端、待機席にエリナが座っていて、思ったままに疑問をぶつけたのだ。
「あーついさっきまで医務室で寝てたんだけどー、予選で戦った卑怯じいさんに叩き起こされたんだよねー。で、この会場にいけって言われたからきたー」
「そ、そう…………、小金井が……っ? はぁ、はぁ……。オ、オネエは……?」
「さぁー? それよりナツキーすごい臭いしてるけど大丈夫なの? ドロドロだし」
「大丈夫じゃないよ……っ、でも、もう、……次始まるでしょ」
『続いて第2回戦、魔裸利亜チームVS風チーム!! コートに整列してくださーーい!!!!』
言ったそばから、と思ったナツキではあったが、整列?
予選、そして一回戦も、気付けば戦いが始まったり、乱入だったりと、思えばナツキはまともに試合に臨んでいなかった。それもあって、ナツキは初心者丸出しな感じに、あたりをキョロキョロ見回した。
――全部オネエが進めてくれていたからだ。どうしたら……。
と言うかオネエは? 思う中、エリナが相手チームと交渉を始めた。
「1人棄権だから勝ち抜き戦のほうが助かるんだけどー、だめ?」
勝手に話を進めるエリナに慌てて、ナツキが耳元にコソコソと問い掛ける。
「エリナっ、本気なの? 棄権ってオネエだよね? オネエはどこにいったの?」
「知らなーい。来れないとしか聞いてないよ?」
オネエとは別々に罰ゲームを受けてから一度も再会していない。
イヤでも不安にさせられる。
そんな中、向かいに並んだ対戦相手の男達がひそひそ話しを始めた。
「勝ち抜きだってよ」「あぁ、運良く翔子がでねぇ」「一回殺されてるからトラウマもんだ……」「厄介なチビガキも戦えそうにねぇな。やられすぎて立っているのもやっとだぜ」「残り1人は、俺たちより弱い。――圧倒的に弱かった奴以外戦えねぇ。勝った」
わざとなのか、と思ってしまうくらいに、淫魔達のやり取りは丸聞こえだった。
対戦相手の淫魔達はエリナをバカにするだけあって、実力があるのは見て取れた。予選、一回戦を戦い終えて無傷なのがなによりの証拠だった。
勝ち抜き戦にしても、星取り戦にしてもナツキ達の不利に変わりはなかった。
しかしそれはあくまでエリナの実力が予選の時と同じままの場合の話だ。
予選でのエリナは忍びとしての能力が封じられていた。
予選だけではない。
エリナは、ナツキが出会った日からずっと力を使えずにいたのだ。
そして、力の封印が解けたエリナは、全ての元凶であるマモンを倒してのけたのだ。
それもあって、――エリナの実力を見てみたい。そう、強く思わされていた。
「ああ。勝ち抜き戦でかまわねぇぜ」
「ふふん♪ ナツキー、ペース配分ミスったときは出番回るかも知れないから、そのときはおねがーい。さっきもおもいっきりミスって倒れちゃったからさー」
医務室で寝こんでしまうくらいの、ガス欠に陥る忍術。出番が来る可能性は十分考えられると思いながらも、ナツキは試合を観戦する。
――向かい合ったままのエリナと対戦相手の男。
アナウンス、そして観客たちも固唾を呑んで見守る。そしてナツキが眉を跳ねさせた直後だった。
「グェあっ!?」
男の足元から一瞬の竜巻が生まれて消えた。その刹那、男の装い全てが散り咲いて、コートの上に精臭が広がった。
まるで30秒後のコマに一瞬で飛んだ、そんな圧倒的な光景だった。
――これは……。
観客、そしてアナウンス。コートに上がることを許された審判さえもが、固唾を呑んだ硬直のまま、静けさを保っていた。
「オ゛…………、ぉ、オ…………ォ……」
斬り合いで敗れた侍が、倒れないまま踏ん張って、不自然ながらに千鳥足でバランスを取ろうとしている。そんな奇怪な体勢の男がバダッ!
潰れるように石綿に倒れた。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
エリナが膝を二回屈伸してのストレッチでクールダウンしている中――、犯されるのを楽しみにしていた筈の観客までもが沸き上がった。
恐らく何が起きたのかを理解出来た者など殆どいないだろう。
まるでフィギュアスケートの選手が百倍速でトリプルアクセルを決めるような空中殺法で、衣服をズタズタに裂きながら3度射精に導いていたのだ。
「ナツキーさっきより力のコントロール出来たー! これならあと2人といわず、20人ぐらい余裕だよー」
「あ……、うん」
ナツキはエリナと1度戦っている。
その時ナツキがエリナに持った印象は、トリッキーな戦い方を得意とするタイプだった。相手の読みを外すためにリーチを変えたりしてペースを乱すタイプ。そんな印象だった。
しかしその型は、忍術が使えなくなってから生み出されたフォームなのだろう。
それくらい今目の前で踊られた演舞には、小手先の技が必要なかった。
「残るはあんた1人っ――、トウッ!」
「グァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
強い。マグレでも何でも無く、エリナの実力は本物だった。
見た目は巨乳小学生に退化したのに強い。オネエより強いかも知れない。
ほんとに、盗られる……。オネエを、……奪われる。
ぐっ……。
「ナツキー、これで三回戦進出っ……って何その顔?」
「今度はエリナが泥棒猫みたいになってるからね!」
「は??」
「とぼけてもダメだからね!」
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「ひゃ、あははははははっ! あっ、あひっ、あはははっ!」
勘違いが過ぎるナツキは、オネエとの関係についてエリナと休戦協定を結ぶがために、エリナと交渉しようとしたものの大笑いで跳ね返されていた。
「ひゃああっ、あはははっ! ば、ばかじゃないの!? あ、あひっ、あははっ!」
小学生。自分よりも小さな身長の女の子に馬鹿にされている。
それもコンプレックスの乳房だけ異様に発達している小学生に、くの字に腰を折られて笑われたのでは堪らない。
「何で淫魔を好きになるのさっ、あははっ! あたし淫魔に両親殺されてるんだよ? だいたい服部のどこが良いわけー?」
「榎本くんよりは良いよ」
どうやらエリナはほんとのほんとにオネエにはそういった感情を持ち合わせていないらしく、ナツキは一つ不安が解消されて控え室への足取りを軽くしていた。
よかった……よかった……。
馬鹿にされたことさえどうでも良くなるくらい良かった。
エリナはオネエに恋愛感情は持ち合わせていない。
「ふふんっ♪」
普段なら気になる筈の、廊下から流れて来る湿った音色でさえ気にならないほど、ナツキは大きな鼻歌を歌っていた。
この時のナツキは、この粘膜音が、まさか不幸を呼ぶ旋律とは思ってもいなかったのだ。
「んっ、はぁ、はぁ……んっ……ま、また逝きそうっ……」
どこぞのカップルがイチャイチャしていて、ナツキは歩調を速めて去ろうとした。
が、その足取りは、まるで乾いていないコンクリートに片足を突っ込んでしまったように止まった。
淫魔が集う大会だけあって、廊下に出れば度々目にする光景ではある。
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