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第3章 淫武御前トーナメントの章
16話 VS蛙男♥(ディープキス絶頂)
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16話 VS蛙男♥(ディープキス絶頂)
話は、決勝トーナメント一回戦が始まる少し前まで遡る。
「――ピピーッ。1000回終了」
「は、はぐっ…………う、……あ……ひ、ひどぃ、酷いめに、あ、あっ、た……ほんとっにっ……はぁ……」
高速マシンバイブ男から絶頂を強制されていたナツキは、機械がプログラムを終えたことによって解放されたのであった。
結局のところ自我はなかったのか? あると、思い込むことさえプログラム?
自我があると私が思わされただけ?
はぁ……、頭が痛くなる。
小金井なら分かるのだろうか。というか無事なのだろうか。
精液に塗れた身体をそのままにして、ナツキは伏せったままの老体を揺らした。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないわひい、いぃ……」
「泣いてるの? はぁ……。ほんと酷い目に遭ったね。お互いに」
「こ、こむすめのくせに……1000回もやられたくせに、なんでなんともないんじやはぁ、なんで立てるんじやはあ、ば、――ばけものカァアアッ!」
平気そうだ。こんなに元気な声を出せるなら、立ち直るにもそんなに時間は掛からないだろう。
「1000回なんて逝かされてないよ。いくらくノ一でも1000回なんて逝かされたら死ぬよ」
「なぁにひぃ……ぃ……?」
「100回近くは逝かされたけど」
「なあにひ……。どういうこと、じやは、あ……あ……」
「絶頂のカウントを間違えてるって気付いてね。それで数え間違えたのと同じ反応したら、案の定一気にカウントが増えた」
小金井はきょとんとした目でナツキを見ていた。
突き込んでは逝き、引き抜かれては逝かされる。そんなナツキの喘ぎ狂っている様子を見て、まさかカウントを増やすための演技とは思ってもみなかったのだ。
ケロッとした顔で言われなかったら、とても信用できない話だ。
逝くと叫べばカウントが増えるような簡易なチェックではない。
脳波、身体、内分泌とあらゆる項目があってのチェック体制。
鯖を読めるような代物ではないのだ。
人間のチェックと違って逝った振りなど許されない。
「1から、あ……、で、でなおしじやあ、あ……、おぬしがにくべんき……になりたい、とあたまをさげる、よ、おな……ロボを……つくるわぁひぃ……」
*****
「遅れた理由になっていないわよぉおおおおおォオオオオーーーーーーーォッ!? あぁああれぇええええええええっ!?」
「なっ!? オネエエエッ!!!?」
ナツキがオネエに、ここ三日間起きた出来事の説明をしている最中。オネエが何者かによって観客席へと投げ飛ばされ、悲鳴と共に消えていったのだ。
咄嗟にナツキは周囲の気配を探る。
う゛っ……。
何で気付けなかったのかと思うほどのドブ臭さ。
臭いに気付くと、後から追い付いてくるように巨漢の男が現れた。
「やぁあ……、ぼくはマロッグ……邪魔な奴は、張り倒したよぉお……。でも安心してぇ……。きみは張り倒さない……。代わりに犯してあげるぅ……ぅへへへえぇ」
こいつが対戦相手……。倒せば一回戦突破。
「空気と同化していたの? ――カメレオンみたいだね」
余裕綽々に軽口を叩いているように見せてはいるが、内心穏やかではなかった。
不意打ちとはいえ、オネエが場外まで投げ飛ばされたのだ。
いくら空気と同化しても、気配は完全には絶てない。
オネエが見破れなかったとなると、それだけで実力者と察することが出来る。
大体この男はいつからリングにいたの?
思案出来るのはゴングが鳴るまでのわずかなあいだ。
出来るだけ、マロッグの能力の予測を立てておきたい。
そう思っていたが――ビュルルルッ!!!
鞭のように鋭利な舌が、ナツキの顔目掛けて飛んできた。
卑怯なッ――ッ、身体を捻りながら上体を仰け反らせて直撃を回避するも、体勢が崩れてしまう。
伏せってしまうも、ナツキは手の平をバンッ! と付いて、反動で飛び起きる。
「ぐっ! あぁああっ!?」
やはり間に合わなかった。
飛び起きたところを狙い撃つように首を締め上げられて、マロッグを見下ろせる位置にまで高々と吊されてしまう。
「かわいぃねぇえ……、ちっちゃくって、妹にしてあげたいくらいにかわいいねぇえ……」
はっきり言ってお断りだ。
間近で見て再認識させられたが、この男は本当に身体が大きい。
力士2人を横に並べても丸々隠せてしまうのではないか? そう思ってしまうほどにである。
兄妹と言うにはあまりに無理のある体格差だ。
あまりに大き過ぎて、廊下ですれ違ったら進路を変えないとならない。
友達からも、血の繋がりを疑われるだろう。
いや、そもそも透明になったり、びょいーんって舌が伸びる時点でお断りだ。
「また不意打ち? 図体でかい癖して小心者なんだんむっ!?」
首に巻き付いていた舌が、減らず口を黙らせるようにグプッと口の中を埋め尽くしてきた。卑怯は承知の上だったが、この男には堪え性というものが無いらしい。
グポッ、グボッ、とまるで餌を貪る肉食獣のように口の中を貪ってくる。
「ん、じゅ、ぶっ、ん、じゅ、んっじゅるっ!」
逝かせることだけを考えた淡泊な機械兵の相手をしたばかり。
野生本能丸出しのディープキスに強烈なギャップを感じさせられる。
「ちみおもしろいねぇえ拘束ほどけないくせに挑発する子初めてだあはぁはぁ」
この台詞には驚いた。内容にでは無い。
舌を捩じ込んできておきながら不自由を感じさせずに喋くってくるのだ。
蛇のように首を絞めつつ、ディープキスを繰り返して、その上喋る。
手足、否、指先以上に巧みな舌使いと言わざるを得ない。その器用さを兼ね揃えた舌が、激しいピストンを一転させた。
口の中でほぐれていって、無数の触手へとばらけていったのだ。
――き、きもち、わる……いっ……。う、うぇ……っ……。
まだレイプ紛いのピストンディープキスの方がマシだった。
極細触手たちが口の中で分解したせいで、あたかも自分が咀嚼してかみ砕いたような感覚に陥ってしまう。
気色の悪い異物感に、ナツキは眉を顰めた。
その表情を柔らかいものへとするように、触手が舌を形成する。
しかし、はっきり言って逆効果だった。
何度も何度も口の中で流動食を作らされている気分になる。
(――計算違いだっ、色々と……)
首を絞められて引き寄せられたナツキではあったが、そこまで強い拘束力を感じてはいなかった。丸腰では脱出出来ないものの、影遁の術を使ってクナイを手に取れば抜け出せるくらいの拘束。
ただ、出来ることならもっと近くに寄せられたタイミング、――肉棒での蹂躙が開始されたタイミングで抜け出したい。
必殺の間合いで影遁の術を行使したならば、一瞬で決着するだろう。
だからこそ切り札は温存しておきたい。
この考えからナツキは甘んじてディープキスを受け止めていたのだ。
しかし、一向に必殺の間合いまで引き寄せようとしてこなかった。
節操のない獣のようなピストンキスをしておいて、意外にも辛抱強く、身体を求めてはこなかった。
――とはいえ、私から率先して舌を絡めて愛撫すれば、こいつもたちまち欲情するだろう。
「んちゅぅ、ん、あはぁ、んっ、ちゅう……あ、れろっ……」
現状を打破しようと、ナツキは堕落へ片足を踏み入れた印象さえ与える仕草で舌を絡め合わせる。ナメクジの交尾のような、ねろっねろっと、舌全てを使っての濃密な絡み合いを演じていく。
不快感の強かった唾液をちゅるっ、と啜ってこくんっ、と飲み下す。
うっ……。鼻息を少し強めたせいで、汚水のような臭気を強く感じさせられる。
それでも不快を表情には表さずに、男の排泄器官のような舌を望んで口の中へと迎え入れていった。
このときナツキはミスを犯してしまった。脱出出来るときに脱出するべきだった。
この選択が判断ミスだったとナツキが気付くのは、まだまだ先のことだった。
*****
「んっ、ふぅ…………ふ、んはあ……あっ♥」
鍋に広げたパスタのようにばらけたり、それが絹糸へとj変化する変幻自在なマロッグの舌に、ナツキは口の中を愛撫されていた。
器用とは思っていたが、はっきり言って想像の範疇を超えている。
とくに筆の穂先に変化したときが一番タチが悪かった。
一本の毛を使って、口蓋に小さな文字を書いてくるのだ。
それも何百本あるかも分からない繊毛触手全てを使ってである。
こちょ、こちょ、と擽られて、はふはふと吐息が乱される。
ムズムズムズムズ――、イライライライラ――が止まらなくなって、堪らず舌先で天井を擦った瞬間、舌を絡みつけられた。
「んあんっ♥」
完全に翻弄されていた。
常人ならば両指を使って10個の文字を書くなんて芸当まず出来ないだろう。
にもかかわらず、マロッグは触手の一本一本で口蓋にお経を書き写してくるような器用な愛撫をしてくる。
そんな繊細が過ぎるタッチで炙るようなキスをされて、ムズムズとフラストレーションを溜め込まれていた。激しい絡まりを求めてしまっていた。
「んはっ♥ あ、はぁ……」
痒みによって舌の動きをコントロールされている。
舌を卑猥に絡ませるように仕向けられている。
それを分かってもキスを止められないところにまで来てしまっていた。
「んっじゅ、んっんぢゅ、はぁっ、あ♥」
積極的に接吻している自覚があっても止められない。
ドブ臭いキスへの不快感は残ったまま。
しかし、もぞ痒さのほうが遥かに不快だった。
そのせいで汚水のような唾を飲むことに抵抗が消えていた。
そしてそれらの不快感よりも、快感のほうが遥かに強かった。
臭いと味と痒みの不快を溜めこんでいた口内が、おちんぽの形になった舌にズボズボッ、と往復されるだけで鬱憤が一気に解放される。
「んっぅあっ!?」
じっくりコトコト煮詰められていた不快感が、一瞬しか咲かない花火のようなキスにズボズボッと弾けてしまう。
「んあっ! あ、んは♥ んあっ!♥」
「またエロい声出したねぇええ……急に積極的になったと思ったらぁはぁあはぁ」
不快と快感を交互に与えられて感度が恐ろしいまでに上がっていた。
快感だけではなく、不快感も今までに無いほど強く受け止めてしまう。
そんな中で、唾液をドロドロの油のように粘ついたものへと変化させられた。
うぅ゛……な、にご、れっ……。
口の中で納豆を混ぜられているような不快の極みを覚えさせられる。
ぬぢゅ、ねちゃ、ぬちゅねぢゅ、ねちゃっぬちゃ、ねっちゃ――
不快の極地なのに、この不快が、この苦痛が、――マロッグとのキス全てが快感に変わると教え込まれた口の中は、この気色悪いキスを嫌いになり切れなかった。
唇から泡のような唾液をはみ出させながら、マロッグの舌の撹拌を受け入れる。
粘着く唾液が、どんなに柔らかな舌よりも口中の隅々を愛撫してきて、その心地良さにナツキはマロッグを受け入れてしまい、あろうことかねぢゅ、ねちゅ、ねぢゅ、ねちゅ、と一緒になってだらしのない音を奏でしまう。
ヌヂャッ、ヌヂュッ、ヌヂョッ、ヌヂャアッ、ヌヂュッ、ヌヂャアッ
「んあっ、あっ♥ ちゅっ、ちゅ、あはぁ、ん、んちゅ♥ んぁ♥ んちゅうッ♥」
観客の声が遠くに感じるくらいに、キスの音色が頭に響く。
口内の隙間から喘ぎ声を駄々漏れにさせているのに、自分の耳では聞き取れないほどの勢いでマロッグの舌と一緒になって唾液を撹拌していた。
ねりゅ、ねりゅ、ねりゅ、ねりゅ、ねぢゅ、ねぢゅ、ねぢゅ、ねぢゅ、ねぢゅ
呼吸さえ忘れるほどに、キスに夢中になっていた。
2本の舌が、ナツキの口内で旋回する。
泡立つ唾液がドロドロ零れていく中――ジュルボォンッ!!
「ンン゛ゥォ゛ア゛ッ!?」
前触れ無しに、散々絡まり合った舌が引っこ抜けて、獣のような悲鳴が漏れた。
同時に目の前が真っ白になった。
「あ、あ……ぁ、は…………ぁ…………ぁ…………ぅ…………ぁ」
頭の中から脳みそを引っこ抜かれたようなおぞましい激感に、意味の成さない言葉が切れ切れに漏れる。
思考を失ってしまったように、白塗りの景色に違和感さえ抱けなかった。
それが未知の絶頂によるものだとナツキが気付いたのは、身体に触手舌と触手肉棒が、肌の上を這うようにゆったり巻き付いていく中でのことだった。
話は、決勝トーナメント一回戦が始まる少し前まで遡る。
「――ピピーッ。1000回終了」
「は、はぐっ…………う、……あ……ひ、ひどぃ、酷いめに、あ、あっ、た……ほんとっにっ……はぁ……」
高速マシンバイブ男から絶頂を強制されていたナツキは、機械がプログラムを終えたことによって解放されたのであった。
結局のところ自我はなかったのか? あると、思い込むことさえプログラム?
自我があると私が思わされただけ?
はぁ……、頭が痛くなる。
小金井なら分かるのだろうか。というか無事なのだろうか。
精液に塗れた身体をそのままにして、ナツキは伏せったままの老体を揺らした。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないわひい、いぃ……」
「泣いてるの? はぁ……。ほんと酷い目に遭ったね。お互いに」
「こ、こむすめのくせに……1000回もやられたくせに、なんでなんともないんじやはぁ、なんで立てるんじやはあ、ば、――ばけものカァアアッ!」
平気そうだ。こんなに元気な声を出せるなら、立ち直るにもそんなに時間は掛からないだろう。
「1000回なんて逝かされてないよ。いくらくノ一でも1000回なんて逝かされたら死ぬよ」
「なぁにひぃ……ぃ……?」
「100回近くは逝かされたけど」
「なあにひ……。どういうこと、じやは、あ……あ……」
「絶頂のカウントを間違えてるって気付いてね。それで数え間違えたのと同じ反応したら、案の定一気にカウントが増えた」
小金井はきょとんとした目でナツキを見ていた。
突き込んでは逝き、引き抜かれては逝かされる。そんなナツキの喘ぎ狂っている様子を見て、まさかカウントを増やすための演技とは思ってもみなかったのだ。
ケロッとした顔で言われなかったら、とても信用できない話だ。
逝くと叫べばカウントが増えるような簡易なチェックではない。
脳波、身体、内分泌とあらゆる項目があってのチェック体制。
鯖を読めるような代物ではないのだ。
人間のチェックと違って逝った振りなど許されない。
「1から、あ……、で、でなおしじやあ、あ……、おぬしがにくべんき……になりたい、とあたまをさげる、よ、おな……ロボを……つくるわぁひぃ……」
*****
「遅れた理由になっていないわよぉおおおおおォオオオオーーーーーーーォッ!? あぁああれぇええええええええっ!?」
「なっ!? オネエエエッ!!!?」
ナツキがオネエに、ここ三日間起きた出来事の説明をしている最中。オネエが何者かによって観客席へと投げ飛ばされ、悲鳴と共に消えていったのだ。
咄嗟にナツキは周囲の気配を探る。
う゛っ……。
何で気付けなかったのかと思うほどのドブ臭さ。
臭いに気付くと、後から追い付いてくるように巨漢の男が現れた。
「やぁあ……、ぼくはマロッグ……邪魔な奴は、張り倒したよぉお……。でも安心してぇ……。きみは張り倒さない……。代わりに犯してあげるぅ……ぅへへへえぇ」
こいつが対戦相手……。倒せば一回戦突破。
「空気と同化していたの? ――カメレオンみたいだね」
余裕綽々に軽口を叩いているように見せてはいるが、内心穏やかではなかった。
不意打ちとはいえ、オネエが場外まで投げ飛ばされたのだ。
いくら空気と同化しても、気配は完全には絶てない。
オネエが見破れなかったとなると、それだけで実力者と察することが出来る。
大体この男はいつからリングにいたの?
思案出来るのはゴングが鳴るまでのわずかなあいだ。
出来るだけ、マロッグの能力の予測を立てておきたい。
そう思っていたが――ビュルルルッ!!!
鞭のように鋭利な舌が、ナツキの顔目掛けて飛んできた。
卑怯なッ――ッ、身体を捻りながら上体を仰け反らせて直撃を回避するも、体勢が崩れてしまう。
伏せってしまうも、ナツキは手の平をバンッ! と付いて、反動で飛び起きる。
「ぐっ! あぁああっ!?」
やはり間に合わなかった。
飛び起きたところを狙い撃つように首を締め上げられて、マロッグを見下ろせる位置にまで高々と吊されてしまう。
「かわいぃねぇえ……、ちっちゃくって、妹にしてあげたいくらいにかわいいねぇえ……」
はっきり言ってお断りだ。
間近で見て再認識させられたが、この男は本当に身体が大きい。
力士2人を横に並べても丸々隠せてしまうのではないか? そう思ってしまうほどにである。
兄妹と言うにはあまりに無理のある体格差だ。
あまりに大き過ぎて、廊下ですれ違ったら進路を変えないとならない。
友達からも、血の繋がりを疑われるだろう。
いや、そもそも透明になったり、びょいーんって舌が伸びる時点でお断りだ。
「また不意打ち? 図体でかい癖して小心者なんだんむっ!?」
首に巻き付いていた舌が、減らず口を黙らせるようにグプッと口の中を埋め尽くしてきた。卑怯は承知の上だったが、この男には堪え性というものが無いらしい。
グポッ、グボッ、とまるで餌を貪る肉食獣のように口の中を貪ってくる。
「ん、じゅ、ぶっ、ん、じゅ、んっじゅるっ!」
逝かせることだけを考えた淡泊な機械兵の相手をしたばかり。
野生本能丸出しのディープキスに強烈なギャップを感じさせられる。
「ちみおもしろいねぇえ拘束ほどけないくせに挑発する子初めてだあはぁはぁ」
この台詞には驚いた。内容にでは無い。
舌を捩じ込んできておきながら不自由を感じさせずに喋くってくるのだ。
蛇のように首を絞めつつ、ディープキスを繰り返して、その上喋る。
手足、否、指先以上に巧みな舌使いと言わざるを得ない。その器用さを兼ね揃えた舌が、激しいピストンを一転させた。
口の中でほぐれていって、無数の触手へとばらけていったのだ。
――き、きもち、わる……いっ……。う、うぇ……っ……。
まだレイプ紛いのピストンディープキスの方がマシだった。
極細触手たちが口の中で分解したせいで、あたかも自分が咀嚼してかみ砕いたような感覚に陥ってしまう。
気色の悪い異物感に、ナツキは眉を顰めた。
その表情を柔らかいものへとするように、触手が舌を形成する。
しかし、はっきり言って逆効果だった。
何度も何度も口の中で流動食を作らされている気分になる。
(――計算違いだっ、色々と……)
首を絞められて引き寄せられたナツキではあったが、そこまで強い拘束力を感じてはいなかった。丸腰では脱出出来ないものの、影遁の術を使ってクナイを手に取れば抜け出せるくらいの拘束。
ただ、出来ることならもっと近くに寄せられたタイミング、――肉棒での蹂躙が開始されたタイミングで抜け出したい。
必殺の間合いで影遁の術を行使したならば、一瞬で決着するだろう。
だからこそ切り札は温存しておきたい。
この考えからナツキは甘んじてディープキスを受け止めていたのだ。
しかし、一向に必殺の間合いまで引き寄せようとしてこなかった。
節操のない獣のようなピストンキスをしておいて、意外にも辛抱強く、身体を求めてはこなかった。
――とはいえ、私から率先して舌を絡めて愛撫すれば、こいつもたちまち欲情するだろう。
「んちゅぅ、ん、あはぁ、んっ、ちゅう……あ、れろっ……」
現状を打破しようと、ナツキは堕落へ片足を踏み入れた印象さえ与える仕草で舌を絡め合わせる。ナメクジの交尾のような、ねろっねろっと、舌全てを使っての濃密な絡み合いを演じていく。
不快感の強かった唾液をちゅるっ、と啜ってこくんっ、と飲み下す。
うっ……。鼻息を少し強めたせいで、汚水のような臭気を強く感じさせられる。
それでも不快を表情には表さずに、男の排泄器官のような舌を望んで口の中へと迎え入れていった。
このときナツキはミスを犯してしまった。脱出出来るときに脱出するべきだった。
この選択が判断ミスだったとナツキが気付くのは、まだまだ先のことだった。
*****
「んっ、ふぅ…………ふ、んはあ……あっ♥」
鍋に広げたパスタのようにばらけたり、それが絹糸へとj変化する変幻自在なマロッグの舌に、ナツキは口の中を愛撫されていた。
器用とは思っていたが、はっきり言って想像の範疇を超えている。
とくに筆の穂先に変化したときが一番タチが悪かった。
一本の毛を使って、口蓋に小さな文字を書いてくるのだ。
それも何百本あるかも分からない繊毛触手全てを使ってである。
こちょ、こちょ、と擽られて、はふはふと吐息が乱される。
ムズムズムズムズ――、イライライライラ――が止まらなくなって、堪らず舌先で天井を擦った瞬間、舌を絡みつけられた。
「んあんっ♥」
完全に翻弄されていた。
常人ならば両指を使って10個の文字を書くなんて芸当まず出来ないだろう。
にもかかわらず、マロッグは触手の一本一本で口蓋にお経を書き写してくるような器用な愛撫をしてくる。
そんな繊細が過ぎるタッチで炙るようなキスをされて、ムズムズとフラストレーションを溜め込まれていた。激しい絡まりを求めてしまっていた。
「んはっ♥ あ、はぁ……」
痒みによって舌の動きをコントロールされている。
舌を卑猥に絡ませるように仕向けられている。
それを分かってもキスを止められないところにまで来てしまっていた。
「んっじゅ、んっんぢゅ、はぁっ、あ♥」
積極的に接吻している自覚があっても止められない。
ドブ臭いキスへの不快感は残ったまま。
しかし、もぞ痒さのほうが遥かに不快だった。
そのせいで汚水のような唾を飲むことに抵抗が消えていた。
そしてそれらの不快感よりも、快感のほうが遥かに強かった。
臭いと味と痒みの不快を溜めこんでいた口内が、おちんぽの形になった舌にズボズボッ、と往復されるだけで鬱憤が一気に解放される。
「んっぅあっ!?」
じっくりコトコト煮詰められていた不快感が、一瞬しか咲かない花火のようなキスにズボズボッと弾けてしまう。
「んあっ! あ、んは♥ んあっ!♥」
「またエロい声出したねぇええ……急に積極的になったと思ったらぁはぁあはぁ」
不快と快感を交互に与えられて感度が恐ろしいまでに上がっていた。
快感だけではなく、不快感も今までに無いほど強く受け止めてしまう。
そんな中で、唾液をドロドロの油のように粘ついたものへと変化させられた。
うぅ゛……な、にご、れっ……。
口の中で納豆を混ぜられているような不快の極みを覚えさせられる。
ぬぢゅ、ねちゃ、ぬちゅねぢゅ、ねちゃっぬちゃ、ねっちゃ――
不快の極地なのに、この不快が、この苦痛が、――マロッグとのキス全てが快感に変わると教え込まれた口の中は、この気色悪いキスを嫌いになり切れなかった。
唇から泡のような唾液をはみ出させながら、マロッグの舌の撹拌を受け入れる。
粘着く唾液が、どんなに柔らかな舌よりも口中の隅々を愛撫してきて、その心地良さにナツキはマロッグを受け入れてしまい、あろうことかねぢゅ、ねちゅ、ねぢゅ、ねちゅ、と一緒になってだらしのない音を奏でしまう。
ヌヂャッ、ヌヂュッ、ヌヂョッ、ヌヂャアッ、ヌヂュッ、ヌヂャアッ
「んあっ、あっ♥ ちゅっ、ちゅ、あはぁ、ん、んちゅ♥ んぁ♥ んちゅうッ♥」
観客の声が遠くに感じるくらいに、キスの音色が頭に響く。
口内の隙間から喘ぎ声を駄々漏れにさせているのに、自分の耳では聞き取れないほどの勢いでマロッグの舌と一緒になって唾液を撹拌していた。
ねりゅ、ねりゅ、ねりゅ、ねりゅ、ねぢゅ、ねぢゅ、ねぢゅ、ねぢゅ、ねぢゅ
呼吸さえ忘れるほどに、キスに夢中になっていた。
2本の舌が、ナツキの口内で旋回する。
泡立つ唾液がドロドロ零れていく中――ジュルボォンッ!!
「ンン゛ゥォ゛ア゛ッ!?」
前触れ無しに、散々絡まり合った舌が引っこ抜けて、獣のような悲鳴が漏れた。
同時に目の前が真っ白になった。
「あ、あ……ぁ、は…………ぁ…………ぁ…………ぅ…………ぁ」
頭の中から脳みそを引っこ抜かれたようなおぞましい激感に、意味の成さない言葉が切れ切れに漏れる。
思考を失ってしまったように、白塗りの景色に違和感さえ抱けなかった。
それが未知の絶頂によるものだとナツキが気付いたのは、身体に触手舌と触手肉棒が、肌の上を這うようにゆったり巻き付いていく中でのことだった。
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