【R-18】『対魔のくノ一・ナツキ』~人間、忍者、魔物から犯され、セックス依存になるまで堕ちる少女~

文々奈

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第3章 淫武御前トーナメントの章

1話 前夜祭

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1話 前夜祭

「ねぇナツキ……。この大会って、思った以上に規模、――でかくない?」

 日本の重鎮が集う闇パーティ、『淫武御前トーナメント』。血を嗅ぎ、性を貪り、英気を養う大会。その前夜祭会場にナツキとエリナはいた。

 右を向いても左を向いても西洋コンプレックス丸出しの男達が、タキシードに身を包んでワインを握り締めている。
 隣に立たせた女の容姿を競わせている様は名犬ブリーダーさながらである。
 そんな気品をむりやり身に付けた貴族達の中で、Tシャツ短パン姿のエリナは明らかに浮いていた。

「エリナ。どういう大会か聞いてたよね? そんなラフな格好で来るなんて思っていなかったよ。それに思った以上にって……、こぢんまりとした大会なわけ無いでしょ」

 前夜祭が行われている大広間は、大物芸能人の結婚披露宴くらいの規模はあるだろう。とはいえ、驚くようなことでは無い。
 何せこのトーナメントは、政財界の大物が一堂に会するパーティなのだ。
 パーティといえば聞こえは良いが、平たく言えば殺し合いだ。
 血と性をつまみにした、淫魔による公開殺人と言ったほうが適切かも知れない。

 何せ、政財界の重鎮達の半数は淫魔。
 残り半数は人間、とは言っても淫魔にとって都合の良い人間ばかりだろう。そんなことを考えていると嫌でもイライラしてくる。

「なにナツキイライラしてるのー? もしかしてバッチリ決めたつもりのチャイナ服が、完全に浮いててイライラしてるんでしょー?」

 自分でも気付かずにいた、スーツとドレスに囲まれるだけで止まらなかったイライラの正体を言い当てられた気がする。
 
「……それもあるかも知れないけど、エリナ。ここにいる奴ら、紳士の仮面付けてるけど淫魔ばっかりだよ? つまり変態ってこと」

 ゾワッ、ナツキ達が座る円卓に視線が集中した。睨み付けてくるのは、紳士仮面ばかりではない。フロアの壁により掛かった政財界とは無縁そうな地獄耳で武骨な男達も睨みつけてくる。どうやらトーナメントの参加者のようだった。

「そうなの!? 淫魔を生んでたおじさんを倒したから全部終わりじゃなかったの!?」

 視線を感じないのか、エリナはソプラノボイスを通らせ、捻った首を向けてきた。
 この場の男達を挑発しただけのつもりが、ここまでエリナに驚かれるとは思っていなかった。

「……ほんと何も聞いてなかったんだ」

 小言のようにぼやくナツキではあったが、当初はナツキも茂を倒して淫魔との戦いは終わり、――そう簡単に考えていた。
 しかし、そんな単純な話では無かったのだ。


 *****


 古賀忍軍を乗っ取っていたエリナの叔父にあたる古賀茂。
 その古賀茂が淫魔の力を得たことによって、そこから金田樽男、そして政財界へと淫魔化が侵食した。
 それがオネエ、そしてオネエが駒にしている金田樽男、そしてナツキ共通の認識だった。

 ――しかし忍び衆が大打撃を受けたこの事件は、氷山の一角にも過ぎなかったのだ。

「前々から疑問に思っていたんだけど、古賀茂って元々はエリナのおじさんなんだよね? 古賀茂はどうやって淫魔の力を得たの?」

 淫武御前トーナメントに呼ばれる数日前の、ある朝のことだった。
 ナツキは朝食のトーストに蜂蜜を塗りながら、素朴な疑問をオネエにぶつけたのである。

 ピーンポーン――。
 疑問を邪魔するようにインターホンが鳴って、べちゃ、べちゃ、と濡れた足音が近付いてくる。

「淫武御前トーナメント。知っているかね?」
  
 現れるなり聞いてきたのは金田樽男だった。
 知るわけがない。
 大体朝っぱらからなんなんだ。
 そう返すよりも先に聞いてしまった。

「大丈夫?」

 人に気遣い出来るような器用なタイプでは無い。それに好き放題に犯してきた最悪な政治家でもある。二度も首を跳ね飛ばした暗殺対象の男でもあった。

 そんな男であっても聞かずにいられないほど、雨の中を傘も差さずに現れ、濡れたままの髪の毛をべたっと額に張り付けた樽男の表情は恐怖に支配されていた。

「江戸時代から続く大会らしいんだが、淫魔と忍者と人間が大名の前で戦う試合。知らんかね?」

 手渡したバスタオルで髪の毛を拭きながら、再度聞いてきたのだ。

「そんな大会知らないわよ。――江戸時代? 冗談でしょ……ありえないわ」

 淫魔を殺すことに命を掛けているオネエからすれば、そんな大それた殺し合いを見過ごしてきたのは耳を疑う話だったようで、目が訝しげに尖っていた。

「金田先生。仕事もしないで朝から悪ふざけしているなら容赦しないわよ?」

「……続きがある。政治家の半分が淫魔。――わたしがそう言っていたのは覚えているかな?」

「え、えぇ……。それが何か?」

「古賀茂の力で淫魔化したと思っていた閣僚達なんだが、彼らは元々淫魔だったようだ。古賀茂に淫魔にされたわけじゃなくて、とっくの前から淫魔だったよ」

「はい?」

「顔を変え、姿を変え、名前を変え、ずっとこの国を動かしてきたようだねぇ。驚いたよ」

「それをアタシが見過ごしてきたって言いたいのかしら? 悪ふざけにも程があるわよ?」

「ふざけて何てなんていないよ。それに話はまだ終わっていない。古賀を淫魔にした男から伝言があるんだ」
 
『加瀬ナツキ、服部翔子、甲河エリナ。この3人を大会に招待して。そうだなぁ……。出来なかったら君を殺そうかな。それが良いね』
 
「腕が……鳴らんかね?」

 助けてくれと頭を下げたくない感が出ているが、聞いてきた目は丸々と開きっぱなしで縁がピクピク痙攣していて、ビビっているのが丸分かりだった。
 一秒でも早く返事が知りたい。
 それまで瞬き惜しんで待つ、そう言わんばかりの血走った目だった。
 ここまで来ると、お願いしてしまった方が早い気もする。
 それよりもだ……。

「オネエ。1人知らない名前が混じっているんだけど誰か分かる? 服部翔子って誰?」

「ナツキちゃん! 分かってて聞いてない!?」

「え?」

「あたししかいないでしょ!! あたしが翔子! ……なにか言いたげな顔ねぇ。それも失礼そうなことを言いたげね」

(服部半蔵が本名ではなく、伊賀の頭領の名前として次がれているとは知っていたけど……。男性ホルモンマックスの時も翔子で、大仏の時も翔子……。うーん)

「言っておくけどナツキちゃん、おふざけには付き合えないわよ。これでもあたしはショックを受けているの。――ポツポツとしか見つけられない淫魔が、実際のところは大量に隠れていて、…………隠れてもいないわね。堂々と大会まで開いていたんですもの」

 こんな事を言っているが、オネエは信用ならない。大会の存在を知っていたとしても、戦うべきでは無いと判断したなら見て見ぬ振りを平気で貫き通すタイプだ。
 目的の為なら手段を選ばず、情も平気で殺せる。息を吐くのと変わらない様子で嘘を吐いてくる。
 これまで散々繰り返された仕打ちの数々を思い出して、ナツキの唇から、はぁ……、と重たいため息が漏れていた。

「助けてください……」

 突然樽男が、カンカン鳴る研究所のフロアタイルに頭をくっつけたのだ。
 なかなかに困る行動をされた。
 土下座……。生まれてこの方されたことが無い。初めてかも知れない。

 一連の騒動を起こした主がそこまで怖かったのか、と正直興味さえ沸いてしまう。
 樽男はかなりの好色淫魔だ。それでいて、分裂しては元に戻ったりの不死身に近い体質を持っている。何に恐れを抱いたのかとても気になる。
 しかし、一分もしないで態度を改めるとなると、大会の出場を煽るように聞いてきた意味が分からない。
 それでもだ――。

「オネエいいよね? 樽男困ってるみたいだし」

 その大会に悪の根源であるおじいちゃんが潜んでいる可能性が極めて高い。児童虐待、殺人教唆、殺人未遂のまっくろなおじいちゃんがね!

「偉いっ! ナツキちゃん! ほんっとあなたって子は!!!」
 これで淫魔を一網打尽に出来るわよ! とオネエは声には出さなかったが、唇が縦や横へと一直線に伸びる変化を高速で見せ付けてきたら、流石に何を言おうとしたのか丸分かりだった。

 それでも初めて心から一致団結した、そう思った日でもあった。
 エリナも簡単に乗ってくれると思っていたが、エリナをその気にさせるのが一番苦労した。

「めんどくさーい。他あたってー」

 不良少女に戻っていたのである。
 榎本君と離れてもダメな子だった。
 ダメな子だったからダメな彼氏が付いたのだとはっきり分からせられた。
 樽男が土下座しても態度を変えなかったのだから筋金入りだ。

「はぁ。……頭を下げて損したね」

 頭を下げたばかりの人間が目の前にいる状況で言う樽男も樽男だが……。
 あの時助ける素振りを見せなかったら、同じ台詞を吐かれたのだろうか? ナツキが冷静に思う中、更にオネエは冷静だった。

 パカンッ! 

 エリナの足元に高そうではあるが中身の入っていないおせち重箱を投げ置いたのだ。

「は、服部っ、な、な、なんであんたがこんなっ宝具をっ……忍びの宝具をっ……!?」

「ご存じのようね。うふふふふっ。そう、逆さま玉手箱。限定的な範囲だけど時を巻き戻せる忍びの宝具よ。――これを茂の死体に使えば恐らく榎本君を分離できるわねぇ。そう榎本君を生き返らせることが出来るかも知れないわ。手伝ってくれるならあげるわよ? 確か今ー、茂の遺体は法務大臣が管轄しているんだったかしら?」

「手伝う!!」

 法務大臣は淫魔である。
 淫魔連中も淫魔連中で、茂の死体が日の光を浴びないように手際よく回収したのだろう。つまり榎本君を復活させる為には、大会参加が必須となる。
 オネエ……。何て狡猾な。宝具をあげると言ってエリナの歓心を買いつつ、大会を途中で投げ出さないようにしっかり保険まで掛けてあるなんて。
 やはり信用ならない。おじいちゃんのことも擁護する節が多々ある。オネエの前でおじいちゃんの悪口を避ける癖が付いてしまったくらいにだ。

「じゃ、行くわよ!! ナツキちゃん、エリナちゃん!!」

 不信感が膨らむ中、不信の元であるオネエの号令で、三人は淫武御前トーナメントに参加することになったのであった。
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