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26 番いの愛※

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 僕の方が獣体が大きいから、オーロは僕の脇辺りに手を置き腰を揺らしていた。お尻の穴を揺らすような動きの後、熱い液体が中に出され、オーロが息を吐く。

「ほんとっ、責任は取るし、リオンをすごく大切にする。俺たちは番いだ。離れては生きられないっ!」

「う、うんっ」

 月が僕らを見ている。

 ああ、そういうことか。

 オーロは伴侶の申し出をしてくれたのだ。『月が綺麗』と。僕らを見ているのは月だけだ。

 そして番いは離れては生きられない……離れるなら死んだ方がましだと僕はオーロの下で本能的に思う。

 僕はあの時『死んでもいい』と呟いた。あの時は分からなかったが、僕はオーロの愛の言葉を受け取った。こんなにも、嬉しい。身体の中からオーロを求めている。だからこんなにも気持ちいい。初めてなのに。オーロの体液を感じながら、僕は草むらに付けた腹の獣の性器が濡れるのを感じていた。

『リオン、愛してる、愛してるっ!』

 何度目かのオーロが獣の精を僕の中に出してから、僕の背中で伏してしまう。そして動かない。

『オーロ、大丈夫?ーーひ、ぐぅっ』

 心配になって僕は立ち上がると、オーロの性器が抜けた。するとお尻の孔に痛みが走り、僕は悲鳴を噛み殺した。恐る恐るその原因をみると、オーロの性器は大きくはないが、その先端はぐるりとトゲがあるような形状になっていて、僕はその返しのようなトゲの痛みに驚いたのだ。

『月が綺麗だは、終わったみたいだね。大丈夫?オーロ』

 オーロは目を閉じて寝てしまったみたいだった。呼吸も正しく伏せたまま寝息を立てている。

 僕は月を見上げた。ずいぶん長い時間、そうしていたようで、月が傾き掛かっている。リオンの時間は終わりだ。サリオンに戻らなくてはならない。オーロはリオンという夜の魔獣の番い。番いにしばしの別れを告げる。

『オーロ、起きたら森へ帰るんだよ。小さい君が貴族に捕まったら従獣にされちゃうよ。こんなに綺麗で可愛いんだから。僕は戻るね』

 僕は後ろ髪を引かれながら、部屋の窓から入って獣化を解いた。月の光が薄くなると自力で解けるようになったのは、魔法学舎へ通ってからだ。

 そのままテレサが来る前に浴室へ入り、飾り猫足の浴槽に浸かる。湯はいつでも入ることができるように張りなおされていた。

「お尻、じんじんする」

 お腹はオーロの出した液でタポタポしている感じだ。お湯の中でお尻の孔を触れると、ピリッとした。その痛みすらオーロから貰ったという何か証みたいで嬉しい。でも、今の僕をテレサに見られたら、多分メーテルを呼ばれてしまう。あちこちにオーロの甘噛みの跡があるからだ。

「そういえば、番いってなんだろう」

 湯に浸かっていると、気付いたテレサが乗り込んで来る前に上がりタオルで水滴を吸い取る。それから用意されている寝巻きの被る形のドレスシャツを着た。ボタンはないから僕一人でも着られる。

「お休みなさい、テレサ」

 僕は廊下にいるであろうテレサに声を掛けて寝台に上がる。オーロが目が覚めて魔の森に無事に帰るといいなと思いながら、短い眠りに入った。




 次の日はターク先生は午前中王宮に行ってしまい、ジェスも体調が悪いと部屋から出てこない。僕は部屋でお茶と堅パンを少し取り、正餐まで読書をすることにした。

 クロルに頼んでおいた伝説のガルドバルド大陸というまるで御伽話のような書物を読もうとして、その下の閨事ねやごとの書物に気づき指繰ると、僕はアーロンと閨事ねやごとの営みが出来るのだろうかと不安になった。

 アーロンは大公だから大公の宿り木に祈りを捧げて、僕がアーロンの愛を身の奥に受けることになる。爵位用の閨事の伴侶の教本らしい書物では、それが政略であれ真摯に愛を受け注ぐことが書かれていた。

 そして宿り木に伴侶で祈りを捧げるのだ。僕も大公城にある宿り木にアーロンと祈りを捧げるのだろう。

「うわ……」

 絵姿で学ぶあけすけな体位や、伴侶が喜ぶ言葉の掛け方など、あまり上手ではない絵で描かれていて僕は少し気分が悪くなる。

 後半にはヒト以外の繁殖についてことが書かれていた。ヒト以外は宿り木がない。オスとメスが番い、オスがメスの体内に精液を輩出し、メスが孕む。孕んだのち宿り木と同じ周期で出産して増えるという記述に驚いた。

 下手くそな絵で繁殖の様子が描かれている。家畜から魔獣に至るまで同じであり、特にマナを持つ魔獣は生涯伴侶となる番い同士、互いの発情期に孕み、良く繁殖すると書いてあった。

「あれ……?」

 昨晩、僕はオーロに……お尻の奥に体液を出された……あれは、精液?でも、まさか。下腹部を触れるけれど、なんともない。半分魔獣であるこの身は大丈夫なのだろう。そもそも同性同士だ。ヒトだけがガルド神に平等を願い出て同性異性関係なく子を成せる。そして、子の実が成る宿り木に願わなければ、成ることはないのだ。

「でも、どうしてヒトのみが、宿り木に子供の実が成るのだろう」

 口に出した疑問に答えるだけの書物も人もいない。僕はオーロに会いたいと思いながら、経済学の書物に目を通した。
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