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1 Side 慧
9 第三者からみたあいつ
しおりを挟む「ほなみ!ちょっといいか」
隣りの教室を覗き、帰宅直前の彼女に廊下から声をかける。
するとほなみは恐ろしい形相を浮かべながらも、ポニーテールを揺らしてずかずかとやってきた。
「慧!学校ではあまり話しかけないでって言ったよね?」
「わかってる。ただ……聞きたいことがあって」
ぼそぼそと、互いが聞こえるくらいの大きさで話そうとしたところで、俺はほなみのクラスメイトからの刺さるような視線を感じた。
そうしていたたまれない気持ちになりかけたところで、ほなみは、
「もう……目立つから帰りながら話そ」
そう言って、友人に声をかけるために一度教室の中に戻ると、鞄をとって走ってきた。
その間、クラスメイトから奇異の視線を向けられる彼女に対して申し訳なく思いながらも、廊下に出たあと、俺はすぐにあいつの名前を出してみた。
すると、
「え、慧、染谷くんと知り合いなの?」
どこか嬉しそうな声色が返ってきた。
「知り合いっていうか……バイト仲間?」
「え、なら紹介してよ!染谷くんってかっこいいよね。イケメンすぎなくて誰もが好きになる、ちょうどいい感じでさ」
そのことばに俺はあいつの姿を思い浮かべてみる。
確かに背は高く、がっしりしすぎてもおらず、そういう意味ではちょうどいい。
では顔はどうだろう――そう考えたとき。
不意にあの太陽のような笑顔が浮かび上がった。
爽やかな短髪と、掴みどころのない猫のような目元――それは英梨さんではなく確かにあいつで、俺は一瞬戸惑った。
すると、
「慧……なんで赤くなったの?」
とほなみが怪訝な顔をして言った。
俺はなぜ自分がそうなっているのかもよくわかっておらず、とりあえず話を戻す。
「いや、お姉さんを知っていて……とにかく素敵なんだ。それより、あいつってかっこいいって言われてるのか?」
「そうだよ!やっぱりさ、あんたみたいなの相手には出来ないけど、染谷くんは……ちょっと夢見ちゃうよね。友達の知り合いが付き合ってたらしくて、すごく優しくていい人なんだって」
いい人。
そのことばを聞き、俺はこれまでのあいつの態度を思い浮かべてみる。
しかし、すぐに少しも当てはまるところがないと思ってしまった。
確かに覚えははやいし仕事もてきぱきとこなすので、そう意味では頼りになる。しかし俺に対する態度は生意気だし、どこか人をからかって遊んでいる雰囲気がある。
――あれが……優しさなのか?
俺がそう疑問に思っていると、ほなみはひとり嬉しそうに言う。
「バスケ部だから運動神経もよくて背も高いし……あれは本当にモテるって」
その話を聞き、俺の中で腑に落ちる。やはりあいつがつるんでいる連中はバスケ部で、それならば運動神経もいいわけで、女子たちから引く手数多なのだろう。
だからこそ、疑問が浮かび上がった。なぜ、そんなやつが俺に絡んでくるのだろうか。
バイトは英梨さんが強制的に引き継いだとして、それはまだしも学校では放っておいてくれればいいのに。
俺がそう思っていると、ほなみは不意に口を開く。
「……でも、ほかの人に興味のなかった慧が、そんなこというなんて思ってなかったなあ」
「…………は?興味?あるわけないだろ」
するとほなみはあっけらかんと言う
「え、ならなんで聞いたの?」
そう言われてみれば、確かにそうだ。
「……俺は、あいつに興味があるのか?」
「え、なんであたしに聞くの?慧って勉強できるのに馬鹿なの?」
なぜだろう、そう考えると、思い浮かんだのは英梨さんの笑顔だった。
――そう、英梨さんの弟だから興味があるんだ。
そのとき、なぜか安心している自分がいることに気づき、俺はすこしだけ違和感を感じた。
しかし、このときはそれ以上追求することはなかった。
俺にとって、あいつはただのバイトの同僚でしかなかったから。
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