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8 染谷誉史という男

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 英梨さんの弟――染谷誉史についての調査報告。
 俺が教室内で観察する限り、友達は多いらしい。
 クラス内はもちろん、休み時間中は外からもしょっちゅう彼を呼び出す声がかかる。
 その相手は体格のいい男子生徒ばかりだったが、女子とも普通に話しているし、教師からは授業中にお小言を言われているものの、関係性は良好に見えた。
 次は部活についてだが、よくわからなかった。
 そもそも俺は終礼後にすぐ図書館に行くか帰ってしまうので、あいつがどこで何をしているのかよくわからない。
 ただ、つるんでいる奴らが比較的背が高く、スポーツをしていそうなクラスメイトが多いので、何らかの部活に入っている可能性は大きい。
 体育の授業は、ふざけてばかりであまり真面目に受けていないようにみえた。
 最後は成績だ。
 この学校はエリア一の進学校を謳っているので、普通に校内に成績が張り出されるからそれを見れば大体わかる。
 しかしよく考えてみれば、俺がそれをまじまじと見たことはなく、どのくらいの位置にいるか検討もつかなかった。次の期末考査のあと、気が向いたら確認しようと思う。
 ただ、真後ろからみる限り、授業態度はいいとは言えないだろう。時々頭が上下に揺れているので、授業中に寝ていることは確実だった。
 結論、一日観察しても、あいつのことはよくわからなかった。
 ――まあ、あいつが相手だからな。
 終礼後、参考書を鞄にしまいながら俺は思った。
 英梨さん相手ならまだしも、あいつが相手ではどうもやる気がでない。
 そうして帰ろうとしたとき、俺は気づいた。
 ――こういうのは適材適所、得意なやつに聞けばいい。
 その結果、幼稚園からの幼なじみであり、唯一話せる歳の近い女子――倉門くらかどほなみに声をかけることにしたのだった。

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