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統治者モンド様
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んっ、なんだあれは。
もしかしてあれが城なのか。城というよりもあれじゃキャットタワーみたいじゃないか。それにしても馬鹿デカいキャットタワーだ。
「美月、吾輩は先に行って父上に話をしておく。賢を案内してやれ。いいな」
「はい、タマおじさま」
玉三郎は頷きすごい跳躍力で飛び上がって一気に城の真ん中あたりまで行ってしまった。
賢は玉三郎があっという間に最上階まで上る姿をじっと眺めていた。
「じゃ行きましょ」
美月に促されて城へと入る。
螺旋階段が永遠と続いている。これを上っていくのか。エレベーターとかないのだろうか。美月はすでに階段を上って行っている。
「ちょっと待ってくれ」
「なによ。どうかしたの」
「一番上まで行くのか」
「当たり前でしょ。モンド様は最上階にいるんだから」
「あのさ、念のため訊くがエレベーターとかないのか」
「そんなのあるわけないでしょ。さっさと行くわよ」
「そうですか」
この階段はどれくらいあるのだろう。東京タワーを階段で上るくらいだろうか。それ以上あるだろうか。
永遠と続く階段を見上げて溜め息を漏らす。仕方がない。上るとするか。賢は一歩一歩階段を上りはじめた。
***
やっと最上階だ。
額からの汗が止まらない。シャツもびしょびしょだ。膝に手をつきつつ最後の一段を上る。まったくなんでこんな思いをしなきゃいけない。一時間くらいはかかったんじゃないのか。自分が運動不足なだけって話もあるがそれにしてもキツイ。
ダメだ。足が限界だ。肩で息をして座り込む。
「ほら立って、立って。モンド様が待っているんだから」
「わかったよ」
賢は深呼吸をしてどうにか息を整える。
この先に玉三郎の父がいるのかと前を見てえっとなる。
おお、なんだこのデカさは。これが扉か。
思わず目の前の扉を見上げてしまう。
「なあ、なんでこんなに大きいんだ」
「なんででしょうね」
美月は頬を緩ませて扉を押し開けた。教えるつもりはないらしい。額の汗を拭い美月のあとを追う。すぐ部屋なのかと思ったら違った。渡り廊下みたいな感じでいくつか窓がある。チラリと窓の外を覗き背筋がゾワゾワッとした。こんなにも高いところに来てしまったのか。地上よりも空のほうが近いのではないか。ほら雲があんなにも近くに。いったいどれくらいの高さがあるのだろう。東京タワーではなくもしかしたらスカイツリーくらいあるのかもしれない。この世界にはそんな建造物を建てるくらいの技術が存在しているのか。城下町を見た感じではそうは思えない。あそこは古き良き時代の風景に映った。
「ほら、早く」
美月がもうひとつの扉の前に立ち手招きしていた。
いよいよここの城主と会うのか。玉三郎の父でありこの世界の統治者。モンド様と言っただろうか。
ギギギギィと扉が軋み開かれていく。
「はいどうぞ」
部屋に入ると目の前に玉三郎が立っていた。
「来たか。ずいぶん時間がかかったな」
「当たり前だろう。こんな長い階段を上ったのははじめてだ。エレベーターとかつけていてほしかったよ」
玉三郎はフッと笑っただけで何も言わなかった。
そういえばモンド様とやらはどこにいるのだろう。
んっ、毛深い壁がある。違う。壁じゃない。もしかして。恐る恐る上に目を向けていくと大きな顔があった。
「デカい」
「こら、失礼でしょ」
「あっ、すみません」
「まあ、よい。素直な反応だから気にせぬ。わしはここの王のモンドだ。話しは玉三郎から聞いている。ここでお主の夢の魂を磨くがよい」
夢の魂。なんだそれは。
それよりもなんでこんなにもデカいのだろう。猫がここまで大きくなるなんて。玉三郎も大きいと思ったがこれはありえない大きさだ。あっ、だから扉があんなに大きかったのか。納得。
「賢、見過ぎだぞ」
「えっ、あっ、重ね重ね申し訳ありません」
「いいのだ。あまり畏まらなくてもよい。そうそう、忘れぬうちに渡しておこう。ほれ、受け取れ」
モンドが放り投げてきたものをキャッチすると、淡い光りに身体全体が包み込まれた。
なんだ、何が起きた。
手の中にあるものは丸くて透明な玉だ。水晶玉だろうか。それともガラス玉か。
「これは」
「それがおまえの夢の魂だ。大切にするのだぞ」
夢の魂。それはなんだ。賢はまじまじとみつめた。すると心地よい風が吹き始めて自分のまわりに纏わりつく。どうやら風は夢の魂から吹いているようだ。
あっ、夢の魂が温かくなってきた。そう思った次の瞬間、手の中の夢の魂は跡形もなく消え去った。違う。胸の奥が温かい。夢の魂は自分の中にある。
なんだこの感覚は。
癒される。同時に心が燃えるように熱くなっていく。遠い昔に感じた熱意だろうか。そんな気がする。
もしかしてあれが城なのか。城というよりもあれじゃキャットタワーみたいじゃないか。それにしても馬鹿デカいキャットタワーだ。
「美月、吾輩は先に行って父上に話をしておく。賢を案内してやれ。いいな」
「はい、タマおじさま」
玉三郎は頷きすごい跳躍力で飛び上がって一気に城の真ん中あたりまで行ってしまった。
賢は玉三郎があっという間に最上階まで上る姿をじっと眺めていた。
「じゃ行きましょ」
美月に促されて城へと入る。
螺旋階段が永遠と続いている。これを上っていくのか。エレベーターとかないのだろうか。美月はすでに階段を上って行っている。
「ちょっと待ってくれ」
「なによ。どうかしたの」
「一番上まで行くのか」
「当たり前でしょ。モンド様は最上階にいるんだから」
「あのさ、念のため訊くがエレベーターとかないのか」
「そんなのあるわけないでしょ。さっさと行くわよ」
「そうですか」
この階段はどれくらいあるのだろう。東京タワーを階段で上るくらいだろうか。それ以上あるだろうか。
永遠と続く階段を見上げて溜め息を漏らす。仕方がない。上るとするか。賢は一歩一歩階段を上りはじめた。
***
やっと最上階だ。
額からの汗が止まらない。シャツもびしょびしょだ。膝に手をつきつつ最後の一段を上る。まったくなんでこんな思いをしなきゃいけない。一時間くらいはかかったんじゃないのか。自分が運動不足なだけって話もあるがそれにしてもキツイ。
ダメだ。足が限界だ。肩で息をして座り込む。
「ほら立って、立って。モンド様が待っているんだから」
「わかったよ」
賢は深呼吸をしてどうにか息を整える。
この先に玉三郎の父がいるのかと前を見てえっとなる。
おお、なんだこのデカさは。これが扉か。
思わず目の前の扉を見上げてしまう。
「なあ、なんでこんなに大きいんだ」
「なんででしょうね」
美月は頬を緩ませて扉を押し開けた。教えるつもりはないらしい。額の汗を拭い美月のあとを追う。すぐ部屋なのかと思ったら違った。渡り廊下みたいな感じでいくつか窓がある。チラリと窓の外を覗き背筋がゾワゾワッとした。こんなにも高いところに来てしまったのか。地上よりも空のほうが近いのではないか。ほら雲があんなにも近くに。いったいどれくらいの高さがあるのだろう。東京タワーではなくもしかしたらスカイツリーくらいあるのかもしれない。この世界にはそんな建造物を建てるくらいの技術が存在しているのか。城下町を見た感じではそうは思えない。あそこは古き良き時代の風景に映った。
「ほら、早く」
美月がもうひとつの扉の前に立ち手招きしていた。
いよいよここの城主と会うのか。玉三郎の父でありこの世界の統治者。モンド様と言っただろうか。
ギギギギィと扉が軋み開かれていく。
「はいどうぞ」
部屋に入ると目の前に玉三郎が立っていた。
「来たか。ずいぶん時間がかかったな」
「当たり前だろう。こんな長い階段を上ったのははじめてだ。エレベーターとかつけていてほしかったよ」
玉三郎はフッと笑っただけで何も言わなかった。
そういえばモンド様とやらはどこにいるのだろう。
んっ、毛深い壁がある。違う。壁じゃない。もしかして。恐る恐る上に目を向けていくと大きな顔があった。
「デカい」
「こら、失礼でしょ」
「あっ、すみません」
「まあ、よい。素直な反応だから気にせぬ。わしはここの王のモンドだ。話しは玉三郎から聞いている。ここでお主の夢の魂を磨くがよい」
夢の魂。なんだそれは。
それよりもなんでこんなにもデカいのだろう。猫がここまで大きくなるなんて。玉三郎も大きいと思ったがこれはありえない大きさだ。あっ、だから扉があんなに大きかったのか。納得。
「賢、見過ぎだぞ」
「えっ、あっ、重ね重ね申し訳ありません」
「いいのだ。あまり畏まらなくてもよい。そうそう、忘れぬうちに渡しておこう。ほれ、受け取れ」
モンドが放り投げてきたものをキャッチすると、淡い光りに身体全体が包み込まれた。
なんだ、何が起きた。
手の中にあるものは丸くて透明な玉だ。水晶玉だろうか。それともガラス玉か。
「これは」
「それがおまえの夢の魂だ。大切にするのだぞ」
夢の魂。それはなんだ。賢はまじまじとみつめた。すると心地よい風が吹き始めて自分のまわりに纏わりつく。どうやら風は夢の魂から吹いているようだ。
あっ、夢の魂が温かくなってきた。そう思った次の瞬間、手の中の夢の魂は跡形もなく消え去った。違う。胸の奥が温かい。夢の魂は自分の中にある。
なんだこの感覚は。
癒される。同時に心が燃えるように熱くなっていく。遠い昔に感じた熱意だろうか。そんな気がする。
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