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いい加減に思える占い
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「えっと、仁山賢です。それで生年月日は一九九四年五月二十五日です」
「ふむふむ、私は白田美月。美月って呼んでね。よろしく」
「あっ、はい」
「それじゃ左手を」
美月は手相をじっくり見たあとじっと目をみつめてきた。なんだろうこの目力は。かわいいけど圧倒される。何か見透かされているようで怖い。一瞬、飼い猫のパンを思い出してしまった。パンにじっとみつめられたときの感覚に似ているのだろうか。不思議な人だ。
「あなた近いうちに引っ越しをされますね」
引っ越し。何を言っている。そんな予定はない。親と一緒で暮らしは楽だ。家賃もかからないしわざわざ引っ越す理由がない。いきなりハズレか。凄い占い師かと思ったけどどうやら期待外れだったようだ。
「引っ越しする予定はないですよ」
「いいえ、必ず引っ越します。そのときは今住んでいるところから西の方角が吉です。思わぬ好物件に出会えるでしょう。そして、あなたの運命に変化をもたらします。やるべきことがみつかるでしょう」
まったく適当なこと言っちゃって。賢は苦笑いを浮かべた。
「もういいです。占いは終わりにしてください」
「いいえ、終わりません。私の言葉を信じていないようですがすでに運命の歯車は動き出しています。あなたにとって重要なのは招き猫です。カラフルな招き猫が見えます。とんでもない体験をすることは間違いなさそうです」
「だから、もういいって」
「よくない。ここがあなたにとってのターニングポイントだって言ってんの。間違った選択をしたら最悪の運命を辿るんだから。ちゃんと私の言葉を聞け。ああもう」
脅しか。なんだか人が変わっちまった。これが本性なのかもしれない。何か幸運のアイテムとか売りつけるつもりじゃないのか。
雲行きが怪しくなってきた。早く電車が来ないだろうか。
あっ、来た。
賢は逃げるようにして電車に乗り込んだ。だが美月も一緒に乗って来た。そりゃそうか。電車を乗るために駅に来たのだろうから。どうしたらいい。隣の駅までだからそれまで我慢するか。あっ、ひとつだけ空いている席がある。あそこなら美月も立ちながら占いをすることはないだろう。いや、してくるだろうか。してくるかもしれない。そんな予感がしてきた。そう思っているうちに空いていた席に誰か座ってしまった。
仕方がないドアの横に陣取って外の景色を眺め美月とは目を合さないようにした。それでも話を続けてきた。
「あの、その口が悪くなってすみません。すべてあなたのためなのです。わかってください。いいですか。逃げてはいけませんよ。あなたには才能があります。独特の絵描きとなるはずです。それには招き猫のいる家に引っ越すしかないのです」
なんだそれ。招き猫のいる家。引っ越しして招き猫を買えってことか。いくら優しく言おうがもう騙されない。絵描きの才能があるだなんていい気持ちにさせて招き猫を高額で売る気だな。画家になれるわけがない。絵も見たことないくせによく言うよ。評価されたことはないっていうのにさ。それにしても絵を描いているってよくわかったな。たまたま当たっただけだろう。
本当にそうなのだろうか。実は全部当たっているってことはないのか。待て、待て。冷静になれ。
「白猫との縁もあるでしょう。大切にされるといいです。運が向上します」
まだ話を続ける気か。まったく我が家の飼い猫は尻尾の短い黒白猫だ。白猫じゃない。また間違えやがって。やっぱり詐欺師だろう。
「あのさ、いい加減にしてほしいんだけど」
「そうはいきません。とても大切なことなのです。伝えなくてはいけません。今のアルバイト生活から脱却するときなのです。あっ、ところで明日の昼間、あなたは家にいますか。それともアルバイトですか」
どっちだっていいだろう。誘っているのか。かわいいけどこんな変な奴と付き合いたくはない。
「どっちですか。家にいないほうがいいんですが」
「ああ、もう。明日はアルバイトだから昼間はいないよ」
「それならよかった。けど飼い猫がいますね。黒白猫ですね。あら短い尻尾がキュートですね。その子、明日は誰かに預けたほうがいいですよ。あの家に災難が起きますから」
なにが災難だ。馬鹿にしているのか。けど黒白猫って当てた。いやいや偶然だ。さっき白猫と言ったばかりじゃないか。自分の言葉を忘れたのか。やっぱりインチキ占い師だ。詐欺師だ。
電車が次の駅に到着して賢は扉が開くなり走り出す。バス停まで急げ。
チラッと後ろを確認すると美月は追いかけて来ていない。諦めたか。
ホッと息を吐き丁度到着したショッピングモール行きのバスに乗り込んだ。
何気なく窓の外へ目をやると美月が手を振っていた。
かわいいのに詐欺師まがいの占い師なんかして。
んっ、あれ。本当に詐欺師なのだろうか。これといって何も売りつけようとはしていない。勝手にそう思っただけだ。勘違いなのか。いやいや、安心させておいてまたどこかで話しかけてくるかもしれない。その手には乗るか。
「ふむふむ、私は白田美月。美月って呼んでね。よろしく」
「あっ、はい」
「それじゃ左手を」
美月は手相をじっくり見たあとじっと目をみつめてきた。なんだろうこの目力は。かわいいけど圧倒される。何か見透かされているようで怖い。一瞬、飼い猫のパンを思い出してしまった。パンにじっとみつめられたときの感覚に似ているのだろうか。不思議な人だ。
「あなた近いうちに引っ越しをされますね」
引っ越し。何を言っている。そんな予定はない。親と一緒で暮らしは楽だ。家賃もかからないしわざわざ引っ越す理由がない。いきなりハズレか。凄い占い師かと思ったけどどうやら期待外れだったようだ。
「引っ越しする予定はないですよ」
「いいえ、必ず引っ越します。そのときは今住んでいるところから西の方角が吉です。思わぬ好物件に出会えるでしょう。そして、あなたの運命に変化をもたらします。やるべきことがみつかるでしょう」
まったく適当なこと言っちゃって。賢は苦笑いを浮かべた。
「もういいです。占いは終わりにしてください」
「いいえ、終わりません。私の言葉を信じていないようですがすでに運命の歯車は動き出しています。あなたにとって重要なのは招き猫です。カラフルな招き猫が見えます。とんでもない体験をすることは間違いなさそうです」
「だから、もういいって」
「よくない。ここがあなたにとってのターニングポイントだって言ってんの。間違った選択をしたら最悪の運命を辿るんだから。ちゃんと私の言葉を聞け。ああもう」
脅しか。なんだか人が変わっちまった。これが本性なのかもしれない。何か幸運のアイテムとか売りつけるつもりじゃないのか。
雲行きが怪しくなってきた。早く電車が来ないだろうか。
あっ、来た。
賢は逃げるようにして電車に乗り込んだ。だが美月も一緒に乗って来た。そりゃそうか。電車を乗るために駅に来たのだろうから。どうしたらいい。隣の駅までだからそれまで我慢するか。あっ、ひとつだけ空いている席がある。あそこなら美月も立ちながら占いをすることはないだろう。いや、してくるだろうか。してくるかもしれない。そんな予感がしてきた。そう思っているうちに空いていた席に誰か座ってしまった。
仕方がないドアの横に陣取って外の景色を眺め美月とは目を合さないようにした。それでも話を続けてきた。
「あの、その口が悪くなってすみません。すべてあなたのためなのです。わかってください。いいですか。逃げてはいけませんよ。あなたには才能があります。独特の絵描きとなるはずです。それには招き猫のいる家に引っ越すしかないのです」
なんだそれ。招き猫のいる家。引っ越しして招き猫を買えってことか。いくら優しく言おうがもう騙されない。絵描きの才能があるだなんていい気持ちにさせて招き猫を高額で売る気だな。画家になれるわけがない。絵も見たことないくせによく言うよ。評価されたことはないっていうのにさ。それにしても絵を描いているってよくわかったな。たまたま当たっただけだろう。
本当にそうなのだろうか。実は全部当たっているってことはないのか。待て、待て。冷静になれ。
「白猫との縁もあるでしょう。大切にされるといいです。運が向上します」
まだ話を続ける気か。まったく我が家の飼い猫は尻尾の短い黒白猫だ。白猫じゃない。また間違えやがって。やっぱり詐欺師だろう。
「あのさ、いい加減にしてほしいんだけど」
「そうはいきません。とても大切なことなのです。伝えなくてはいけません。今のアルバイト生活から脱却するときなのです。あっ、ところで明日の昼間、あなたは家にいますか。それともアルバイトですか」
どっちだっていいだろう。誘っているのか。かわいいけどこんな変な奴と付き合いたくはない。
「どっちですか。家にいないほうがいいんですが」
「ああ、もう。明日はアルバイトだから昼間はいないよ」
「それならよかった。けど飼い猫がいますね。黒白猫ですね。あら短い尻尾がキュートですね。その子、明日は誰かに預けたほうがいいですよ。あの家に災難が起きますから」
なにが災難だ。馬鹿にしているのか。けど黒白猫って当てた。いやいや偶然だ。さっき白猫と言ったばかりじゃないか。自分の言葉を忘れたのか。やっぱりインチキ占い師だ。詐欺師だ。
電車が次の駅に到着して賢は扉が開くなり走り出す。バス停まで急げ。
チラッと後ろを確認すると美月は追いかけて来ていない。諦めたか。
ホッと息を吐き丁度到着したショッピングモール行きのバスに乗り込んだ。
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