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第六話「怪しき茶壷と筆」
断末魔の叫び声
しおりを挟む「アキコ。ダメだ。やめろーーー」
彰俊はアキコへ駆け寄り腕を取り、ゾッとした。
沙紀の首に手をかけヘラヘラと笑うアキコの顔がそこにあった。
「アキコ、おい、アキコ。どうした」
なんだ、この禍々しい気は。
ここにいるのはアキコだがアキコではない。アキでもない。何者かに操られているのか。そうだ、そうに違いない。どうにかしなきゃ。
「舟雲、どうなっているの」
「瑞穂……。あの、いや、俺様もわからぬ。突然、アキコが豹変したというしかない」
彰俊は沙紀の首からなんとかアキコの手を解き背中をバンと叩いた。なぜそうしたのかわからないが勝手に身体が動いていた。
んっ、なんだあれは。
アキコの口から何かが飛び出して来た。
蟲か。
彰俊は小さく黒いウネウネしている物体を踏み潰した。
「あれ、彰俊。あたい、あたい、なにをしていたの」
「アキコ、もう大丈夫だ。心配するな」
アキコは「うん」と頷くと安心したのかそのまま目を閉じてしまった。アキコは大丈夫そうだと彰俊は沙紀へと目を向ける。
「沙紀ちゃん、沙紀ちゃん」
声をかけるが反応がない。まさか……。
彰俊はかぶりを振り嫌な考えを吹き飛ばした。大丈夫、きっと大丈夫。心を落ち着けて沙紀へと近づくと背後から何者かの気配を感じた。誰かいる。いい気ではない。
「ふん、もう少しのところであったものを」
「誰だ」
沙紀とアキコを庇うようにして声の主を探す。
「まったくどれだけ邪魔すれば気が済むのだ。時守家など消えてなくなったほうがこの世のためだというのに」
声はすれども姿が見えぬ。いったどこにいる。
「あそこ、あいつがアキコの心を乗っ取った。ぼ、ぼくも消そうとした」
「アキか」
アキは強く頷き、ある一点を指差した。
壁だ。何もない。だがアキが言うのだからそこにいるはず。
「トキヒズミ、いや瑞穂。沙紀のこと頼む」
「なんだよ。おいらだって役に立てるぞ。ボケナスが」
トキヒズミの言葉は無視して壁を凝視する。今はトキヒズミと遊んでいる場合じゃない。
「おまえはもしかして……」
栄三郎が壁に向かって睨みつけている。
やっぱりそこにいるのか。なぜ見えない。栄三郎には見えているのに、なぜ見えない。
「ふん、栄三郎か。おまえの顔など見たくない。死んでもなお邪魔するつもりか」
「邪魔だと。わしは邪魔などしておらぬ。だがわしのせいではあるのだろう。すまなかった」
栄三郎は突然土下座をして謝った。
どういうことだ。
瑞穂も栄三郎に並び土下座をした。
「悪いのはわたくしのほうです。わたくしの浅はかな考えがあなたを苦しめることになってしまったのですから」
「ふん、今更遅い。時守家が消え失せねば怒りおさまらぬ」
なんの話をしているのかさっぱりわからない。いったい誰と話をしているのだろう。
「そこをなんとか怒りをおさめてください。時守家は関係ありません。わたくしの行ったこと」
「うるさい。黙れ」
ドンとの音が突然鳴り響いたかと思ったら目の前に髭面の男が姿を現した。
見えた。なんだあいつ身体が燃えているみたいだ。あれはあいつの持つオーラなのか。きっとそうだ。怒りのオーラだ。
「おい、彰俊。さがれ、さがれ。あいつは死神だ。おいら知っているぞ。なんでもとんでもないことやらかして役職ある死神から下級死神に降格された奴だ」
「そこ、今、なんと言った」
睨まれたトキヒズミが身体を縮こませて自分の後ろに隠れてしまった。すると、こっちを睨みつけて「降格されたのはおまえらのせいではないか。あの世へ連れて行くべき者を何度も何度も邪魔立てしたせいで我は死神としてなっておらぬと降格させられたのだぞ」と怒鳴られた。
髭面の死神がこっちへ近づいて来る。
彰俊は死神に圧倒されて一歩も動けなかった。
栄三郎と瑞穂が間に入って再び土下座する。だが二人を蹴散らしてこっちへ向かって来る。
「おまえは死ね。それで我は怒りがおさまる」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて髭面の死神が手を振り上げた。
「ダメーーーーー。あたいの大事な人を死なせないんだから」
突然目の前にアキコが割り込み眩い光が弾け飛んだ。彰俊は眩しさに思わず目を閉じる。まさにその瞬間、断末魔の叫び声がこだました。
アキコ……。
おい、今の叫び声はなんだ。
「アキコ、おい、アキコ。大丈夫なのか」
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