FIGHT AGAINST FATE !

薄荷雨

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short story ※時系列バラバラです

ヤバいよ榊先生①

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 花園高校の養護教諭に竹之内という、四十がらみのとした、大きな熊のような男がいる。
 この竹之内、最近どうも気になって仕方がない人物がいる。それは一年生副担任、榊龍時という新米教師だ。
 なにがどう気になるかというと──

 その日、職員室で朝礼が終わり保健室へと向かう途中、榊から漂う匂いに気付いた竹之内は彼に呼びかけた。
「榊先生ちょっといいですか、こちらへ」
「はい、ああ、竹之内先生」
 榊は全くなんの穢れも知らぬような素直さで竹之内に向き直り、そのまま職員室を出て廊下の隅っこへ誘導された。

 ヤバいよなあ。
 気付いてないよなぁ、これ。
 マーキングされてんの。
 榊先生はβだもんな。
 このフェロモンはαのだ、ってことは榊先生が抱かれる方か。
 まあ分かるけど、俺もαだから。
 五月の連休終わってからだったな、木曜の朝と、たまに月曜の朝、マーキングされ始めたの。
 つまり水曜と日曜の夜一緒に過ごしてシャワーも浴びずそのままか、または朝につけられてる印ってことだ。
 今回のは顔周りと首すじってとこかな。

「あのう、すみません榊先生、こういうこと言うのもあれなんですが」
「はい、なんでしょう」
「実はフェロモンがですね、榊先生からこう……分かっちゃいまして」
「あれ!?私βなのでそんなはずはないんですが」
「いえ、おそらくお相手の」
「あっ、ああーそういう……分かるものですか?」
「これくらいの距離だとそれなりに。でもそんなに濃くはないので、じきに揮発すると思いますが」
「すみません、ご不快な思いをさせてしまって」
「いえいえ、不快というわけではないです。でもちょっと羨ましいですな、熱烈な彼女さん。俺も若い時はそれなりにそんな恋人も居ったんですがね、ははは」

 彼女さんと言ったけど、お相手が男であることは分かっちゃうんだよなあ。
 フェロモンってのはそんな情報まで含んでいるもんだ。
 歳の頃は二十代前半、健康な男性型α、番の経験は無し──
 ざっとこんなところか。

「やっぱりこういうことはαの生徒にも分かってしまうものですかね?」

 わかりますとも、αなら。あなたが若い男に抱かれるところを妄想してるαのエロクソガキがいますよ。確実に。ヤバいですよ榊先生。

「ええまあ、具体的に分かるものじゃないですけどね。恋人いるなあ、ぐらいな感じで」
「そうなんですね、教えていただいてありがとうございます。気を付けます」
「あの、もし気になるようでしたら保健室に清拭シートありますので来てください。拭き取ればだいぶ消えますよ」
「ありがとうございます!今日から担任の稲場先生が不幸事で有休取られてまして、今朝のホームルームやらなきゃいけないんですよ。一年生にはαが二名いるので、助かります」
「いえいえ。じゃあ今、鍵開けますんで」

 竹之内は廊下の先にある保健室のドアを開け、「これどうぞ」と榊に清拭シートを手渡す。榊は礼を言うとネクタイをはずし臆面もなくシャツを脱ぎ、平気で上半身をあらわにしてシートを使い始める。

 おいおい、恥じらいとか無いんか榊先生。
 脱ぎっぷりいいなぁ男前、惚れ惚れする。
 身体の方もイケメンとかズルいわー。
 ていうかマーキング、顔周りのみじゃなくて上半身全部かい。
 上だけとはいえ他の男の前でそんな簡単に裸になっていいもんなのか。
 それはαの恋人としてどうなん──
 ──恋人?ただのヤリ友って可能性もあるよな。
 αの男が好きなんかな。
 つか俺、まっったく警戒されてない。
 養護教諭は聖人かなんかと思ってる?
 全然んなこたぁないんですけど──
 ていうか背中!背中!キスマークいっぱい付いてる!気付いてないヤバい!
    
「竹之内先生どうですか、マーキング消えました?」
 と榊は両腕を広げ、ちょっと上にあげて見せた。
「や、見ただけじゃわからないので、ちょっと失礼します」
 竹之内は平静を装って榊のまわりを深呼吸しながら間近で一周し、たぶんもう大丈夫ですよ、と言った。榊の「ありがとうございます」というお礼に、
「こちらこそありがとうございます……?」
 となぜか礼で返した。
 フェロモンよりも色濃く残ったままの、背中のキスマークのことは言えなかった。

 




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