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1章

3話 スローライフの危機

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支部長室から出ると、ギルドの討伐掲示板を見つけた

これが討伐依頼書か、依頼書には数字と魔物の名前が書かれている。この依頼を受けよう
1体倒すと銀貨10枚貰えるらしい

そういえばこの世界にはランク制度がないのか?ランク指定がないな

「この依頼を受けたい」

依頼はオークの討伐依頼にすることにした

「オークの依頼ですね!かしこまりました、それではこのモニターに手を当ててください」

受け付けの隣に支部長の部屋の時と同じようなモニターが置いてあった

当てる意味があるのか?


手を当てると音は鳴らずに視界が光った

「戦闘力は3000…丸腰で!?凄いです!おっと、失礼しました。ギリギリ、大丈夫ですので、場所をお教えしますね」 

なるほど、そうやって決めるのか確かに依頼書の数字に2800と書かれていたな

戦闘力3000っことは武器なしでも大丈夫ってことだよな?

それに俺は子供の頃から空手を10年くらいやっていて、全国3連覇したこともあったな…だから腕にはかなりの自信がある。おそらく俺の1番輝いていた時期だ

「それじゃ行くか!」

森に着いた
この森は最初に転生してきた場所と同じ森だ

「確か、ここらへんに出没すると書いているが…どこだ?」

そう思っていると、少し足音が聞こえた

「うわぁ~、あれがリアルオーク…実際に見ると違うなぁ」

一体のオークが俺の前に現れた
身長はおよそ俺の3倍

そして俺は武器・装備無し、周りから見れば勝ち目はないように見えるだろう

しかし

「うおー!正拳突き!」

オークが悲鳴を上げる

「もう1発、もう1発!」

腹に連打する

オークは何もできずに悲鳴を上げて、倒れる

「押っ忍!」

もう約10年はやってなかったから、心配だったが、感覚は覚えているものだな

「す、すごい…!」

えっ?

どこからか小さな女の子の声が聴こえた

「オークを素手で倒すなんて凄すぎです!お母さーん!!」

そう言って、女の子も全速力で走り去ってしまった

「ふぅ、なんだあの子は?そんなに凄いことなのか?そして、なんであんな所に…まぁいいか」

よし、続けよう

「って!やばい!オークを素手で倒すことができると街で目立ってしまう!そうなると、俺の目立たないスローライフがぁぁ~」

焦って引き返そうと思うとオークが現れ、攻撃してきた

「うわぁっと!」

髪一発で避けれた

「おい!急いでるんだ!どいてくれ!」

聞いてくれるはずも無く、再び攻撃をしてきた

「全力正拳突き!!」

オークは一撃で倒れた

そして、俺は今までにないほどのスピードで走った

「俺のスローライフを邪魔されてたまるか!」

森を抜け出し、街についたが女の子の姿は1度も、見えなかった

意外と走るのが速い…

「くっ、どこだ?」

もしかして、ギルドに報告しに行ってる可能性があるな、ギルドに行こう!

「あっ!戻ってきたぞ!」

えっ?

ギルドに着くと、レインや支部長など、そしてさっきの女の子が居た

い、嫌な予感が…

「ショウタ!お前凄いな!素手でオークを倒せるなんて!」

レインは俺が山暮らしと分かったときより、目をキラキラさせていた

あぁ~!やっぱりだ!遅かったか~!

「えっ?あはは、たまたまだよ!たまたま…俺も驚いたなぁ~…」

俺がそう言うと女の子が大声で

「あの反応は、全然驚いてなかった!絶対分かってたよね!?」

どうしよう…このままじゃ、かなり目立ってしまう。目立つと誰かに弟子にしてください!とか言われるかも知れない…

「でも、そんなに凄いことじゃないよね?」

俺は苦しながら見つけた言葉でそう聞くと

「いや、かなり凄いことだぞ」

「支部長!?」

「素手でオークを倒す者など、世界に数える程しか居ないだろう」

支部長は冗談を言っているような顔では無く、真剣だった

そんな規模で凄いことなのか!?これは言い訳が不可能そうだな…

「でも、殴るだけで倒せたよ?みんなも倒せるんじゃないのかな?」

俺は焦って、口調がおかしくなっている

「それは、無理だ。まずオークの皮膚はかなり硬い、殴るだけで骨が折れる」

そうなのか……俺は殴っても拳が壊れないように毎日筋トレしていたからな…空手を辞めても趣味で毎日筋トレをしたせいかもな

「あの、では俺がオークを素手で倒したことを秘密にしてもらってもいいか?」

全員がどうして?という顔で見つめてくる

「何故だ?ショウタ、このことを公表するとあっという間に富や名声が手に入るぞ?」

周りからすれば、勿体ないと感じるだろう

「俺は、スローライフを目指しているんだ、だからあまり目立ちたくないんだ」

そう言うと、支部長が納得した顔で

「そう言うことなら、このことは内密にしとこう、他の者にも口封じしとくな」

「助かる、ありがとう!」

よし、これで安心だな…

そう思ったとき、女の子が

「でも、私お母さんに言ってきちゃった……もしかしたらもう喋っちゃってるかも…」

えっ!嘘ぉ!?

このままでは俺の目立たないスローライフが危うくなりそうです
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