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恋愛感情病原体の発見
感情の種
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「眠れない。」
午前3時。スマホの待受が伝えてくる。昨日出された宿題も部活の課題も終わらせた。ただ寝るだけなのに、それが出来ない。
4畳ほどの部屋の中はスマホのあかり以外何も無い。絶好の寝るには相応しい暗がりなのに、寝れない。
「どうしよ、明日から合宿なのに、、。いやもう今日からじゃん、、、。どうしよ、、、。」
実に本当に確実に寝たい。目を閉じても寝れず、10分に1回は目を開ける。枕元に置いてある台本のセリフは全て覚えた。もうやることは寝るだけなはず、なのに寝れない。
「明日のバスの席先輩の隣だよ、、、寝たら、もう恥ずかしいし、、、。」
ベッドのすぐ横の壁には同じ男性アイドルのポスターや団扇が飾ってある。全て貰ったものだ。宣伝に使って欲しいと渡されたが、その後使い道は聞かれていない。
「河西先輩と隣で、しかも一番後ろで、どうしよ、、。」
自分の顔が熱くなるのが分かる。暗がりに慣れた目でポスターを見るが、その顔はやはり見覚えのある顔だ。見ているだけなのに更に熱くなる。
『_______________ブーブー。』
スマホの画面が光った。私はすかさずスマホを見つめる。トークアプリの通知。名前は、
「河西先輩!?」
もう時間は3時半を回っている。のに、河西先輩からの通知。内容は、『起きてるー?』。ええ、はい絶賛目がパッチリです。素早くトークアプリを起動した。
「起きてますよ!寝れないんです。先輩寝なくて大丈夫なんですか?」
『今の今まで仕事で出来なかった宿題終わらせてたんだ。聞きたいんだけど、明日どっかで待ち合わせてバスまで行く?』
「え!?いいんですか?」
『だって、みーちゃん毎回のごとく迷子でギリギリに着いてるじゃん?w』
「それは、、( ̄▽ ̄;)」
『家もみーちゃんと同じ最寄りだし、今回バス新宿まで行かなきゃいけないじゃん。一緒に行こー。』
「是非!お願いしたいです!!」
『了解!んじゃ、待ち合わせは、、みーちゃんの家の前で!』
「申し訳ないです!!私行きますよ!?」
『いいのいいのー。みーちゃんのお母さんに頼まれたお土産渡したいし。』
「本当にありがとうございます!」
『いえいえ、こちらこそ。ちゃんと寝るんだぞ!おやすみー。』
「おやすみなさい!」
先輩との会話。五分くらいの時間なのに1分も経ってない気がする。というより、私の母と河西先輩は本当に仲がいい。仕事で都会によく行く先輩に母はお小遣いを渡し、お菓子や化粧品やらを買ってきてもらっている。
反対に私は、埼玉の地元から1歩も出ない。休みの日は台本や小説を読み、ゲームをし、ただ寝ているだけ。私がそうしている間も、河西先輩は仕事をしている。尊敬に値する人だと勝手に考えている。
今のトークで一気に目が覚めてしまった。寝れない。
もうこんなことを考えているだけで4時だ。新宿に10時集合。逆算で8時には電車に乗っていなければならない。そうなると駅まで歩いて30分。7時半には家を出ている。高校だからとはいえ身だしなみをする時間を入れると1時間は欲しい。ダラダラする時間も考えると、6時には起きなければならない。今は4時。あと2時間。
「これ今寝たら終わる。」
ベッドの横のスタンドをつける。枕元にある台本を見る。題名は、『夏の夜の夢』。
ゆっくり台本を開き、全ての文字を撫でるように目で追いかける。明日から大会に向けて、この台本とずっと睨めっこになるのを覚悟しながら。
--------------------
「やっと終わった。ほんとに、溜まるときついし、合宿でやる時間なんてないし。コツコツ終わらせなかった俺がいけないんだけどさ。」
午前2時。ワンルームの部屋は煌々と電気がついている。午後10時までアルバイトをし、帰宅後、お風呂や夕飯済ませて、ずっと宿題にのめり込んでいた。数学、現代文、化学、世界史、大人になって使うのかなと思うものばかりだが、俺にとっては、仕事に使える内容ばかり。覚えておいて損は無い。
「明日から1週間合宿かあ。」
スケジュール帳にはびっしりと予定が入っている。港区のテレビ局、事務所、オーディション、ミーティング、色々な文字が綴られている。その中で1週間だけ白い枠。長く矢印が引かれて真ん中に『合宿』の文字があった。
「仕事から少し離れられるのは、いいなあ。学生って感じ。」
毎日のようにカメラを向けられ笑顔を作っている日々に学校の友達たちと遊ぶ時間はほぼない。学校で授業を受ければ、夕方から仕事。なんなら、仕事だから学校に事情をいい休ませてもらっている。宿題で内申点をカバーしてもらい、何とか卒業出来そうな感じである。
そんな俺も、仕事を入れない時間がある。それは、部活の時。演劇部の演習や公演などは全てスケジュールを無理やり開けてここまでやってきた。マネージャーなどには、「演技の勉強にもなるから。」と断って。絶対に部活は休みたくなかった。
「今年の大会で引退だなあ。もう高三か、はやいな。」
合宿の次の月に、全国の演劇部が競う大会が待っている。毎年優勝か準優勝を取ってきているこの部、負けるわけにはいかなかった。仕事の合間を縫い、セリフを叩き込む。高三のメンバーは各々重要な役どころだ。覚える量も多い。
「何とか全部覚えたが、、、納得いくほど読み込めてないなあ。」
去年の今頃は普通に学校ばかりだった。今年に入り、所属のアイドルグループが人気になり、仕事が増えた。今では単独ライブをするほどの規模、友達といる時間がめっきり減った。
「そろそろ寝ないと起きれないな。今何時。」
そろそろ、3時半になる。寝なければ、明日の合宿一日目が辛くなる。幸いなことに一日目は移動でほぼ終わるからいいのだが。
「新宿から長野か、夜に少しやって終わりっぽいな。」
疲れた体を伸ばし、天井を見上げながら呟く。一人暮らしのいい所は独り言を言っても誰も気づかないところだ。
「そういえば、あいつ、新宿時間内に着くかな。今まで家から近いところがバス乗り場だったけど、今回遠いから、、、迷子なったら大変だな、、、。」
新宿駅を馬鹿にしてはいけない。広いし、出口は多い。人の数も多すぎる。
「あいつ起きてるかな、。」
いつも湊生がバスのギリギリ出発前に着く。家は余裕もってでているのに、迷子になる。俺は、迷子になったというメッセージで迎えに行く。なら、初めから一緒に行った方が好都合だ。それに、同じ年代の、同じ学校の人と話せる機会はそんなにない。
「一緒に行くって言うのもありか。」
スマホを開く。送ってみて既読がつかなかったら、明日直接電話すればいいや。
「起きてるー?」
直ぐに返信が来た。まだ寝れていないようだった。大体こういう大きなイベントがある時は起きてる湊生。いつもより早い会話の進みで、直ぐに終わった。
「さて、寝なきゃ。」
もう時刻は4時を回っている。スマホに話しかけアラームをつける。
机の後ろにあるベッドへ向かう。敷布団と掛布団の間に滑り込むように入った。
枕の横に置いてあるのは、小さいクマのぬいぐるみ。
昔、湊生に貰ったぬいぐるみ。
「あいつ、これ覚えてんのかな。」
そんなこと考えながら、瞼を閉じた。
午前3時。スマホの待受が伝えてくる。昨日出された宿題も部活の課題も終わらせた。ただ寝るだけなのに、それが出来ない。
4畳ほどの部屋の中はスマホのあかり以外何も無い。絶好の寝るには相応しい暗がりなのに、寝れない。
「どうしよ、明日から合宿なのに、、。いやもう今日からじゃん、、、。どうしよ、、、。」
実に本当に確実に寝たい。目を閉じても寝れず、10分に1回は目を開ける。枕元に置いてある台本のセリフは全て覚えた。もうやることは寝るだけなはず、なのに寝れない。
「明日のバスの席先輩の隣だよ、、、寝たら、もう恥ずかしいし、、、。」
ベッドのすぐ横の壁には同じ男性アイドルのポスターや団扇が飾ってある。全て貰ったものだ。宣伝に使って欲しいと渡されたが、その後使い道は聞かれていない。
「河西先輩と隣で、しかも一番後ろで、どうしよ、、。」
自分の顔が熱くなるのが分かる。暗がりに慣れた目でポスターを見るが、その顔はやはり見覚えのある顔だ。見ているだけなのに更に熱くなる。
『_______________ブーブー。』
スマホの画面が光った。私はすかさずスマホを見つめる。トークアプリの通知。名前は、
「河西先輩!?」
もう時間は3時半を回っている。のに、河西先輩からの通知。内容は、『起きてるー?』。ええ、はい絶賛目がパッチリです。素早くトークアプリを起動した。
「起きてますよ!寝れないんです。先輩寝なくて大丈夫なんですか?」
『今の今まで仕事で出来なかった宿題終わらせてたんだ。聞きたいんだけど、明日どっかで待ち合わせてバスまで行く?』
「え!?いいんですか?」
『だって、みーちゃん毎回のごとく迷子でギリギリに着いてるじゃん?w』
「それは、、( ̄▽ ̄;)」
『家もみーちゃんと同じ最寄りだし、今回バス新宿まで行かなきゃいけないじゃん。一緒に行こー。』
「是非!お願いしたいです!!」
『了解!んじゃ、待ち合わせは、、みーちゃんの家の前で!』
「申し訳ないです!!私行きますよ!?」
『いいのいいのー。みーちゃんのお母さんに頼まれたお土産渡したいし。』
「本当にありがとうございます!」
『いえいえ、こちらこそ。ちゃんと寝るんだぞ!おやすみー。』
「おやすみなさい!」
先輩との会話。五分くらいの時間なのに1分も経ってない気がする。というより、私の母と河西先輩は本当に仲がいい。仕事で都会によく行く先輩に母はお小遣いを渡し、お菓子や化粧品やらを買ってきてもらっている。
反対に私は、埼玉の地元から1歩も出ない。休みの日は台本や小説を読み、ゲームをし、ただ寝ているだけ。私がそうしている間も、河西先輩は仕事をしている。尊敬に値する人だと勝手に考えている。
今のトークで一気に目が覚めてしまった。寝れない。
もうこんなことを考えているだけで4時だ。新宿に10時集合。逆算で8時には電車に乗っていなければならない。そうなると駅まで歩いて30分。7時半には家を出ている。高校だからとはいえ身だしなみをする時間を入れると1時間は欲しい。ダラダラする時間も考えると、6時には起きなければならない。今は4時。あと2時間。
「これ今寝たら終わる。」
ベッドの横のスタンドをつける。枕元にある台本を見る。題名は、『夏の夜の夢』。
ゆっくり台本を開き、全ての文字を撫でるように目で追いかける。明日から大会に向けて、この台本とずっと睨めっこになるのを覚悟しながら。
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「やっと終わった。ほんとに、溜まるときついし、合宿でやる時間なんてないし。コツコツ終わらせなかった俺がいけないんだけどさ。」
午前2時。ワンルームの部屋は煌々と電気がついている。午後10時までアルバイトをし、帰宅後、お風呂や夕飯済ませて、ずっと宿題にのめり込んでいた。数学、現代文、化学、世界史、大人になって使うのかなと思うものばかりだが、俺にとっては、仕事に使える内容ばかり。覚えておいて損は無い。
「明日から1週間合宿かあ。」
スケジュール帳にはびっしりと予定が入っている。港区のテレビ局、事務所、オーディション、ミーティング、色々な文字が綴られている。その中で1週間だけ白い枠。長く矢印が引かれて真ん中に『合宿』の文字があった。
「仕事から少し離れられるのは、いいなあ。学生って感じ。」
毎日のようにカメラを向けられ笑顔を作っている日々に学校の友達たちと遊ぶ時間はほぼない。学校で授業を受ければ、夕方から仕事。なんなら、仕事だから学校に事情をいい休ませてもらっている。宿題で内申点をカバーしてもらい、何とか卒業出来そうな感じである。
そんな俺も、仕事を入れない時間がある。それは、部活の時。演劇部の演習や公演などは全てスケジュールを無理やり開けてここまでやってきた。マネージャーなどには、「演技の勉強にもなるから。」と断って。絶対に部活は休みたくなかった。
「今年の大会で引退だなあ。もう高三か、はやいな。」
合宿の次の月に、全国の演劇部が競う大会が待っている。毎年優勝か準優勝を取ってきているこの部、負けるわけにはいかなかった。仕事の合間を縫い、セリフを叩き込む。高三のメンバーは各々重要な役どころだ。覚える量も多い。
「何とか全部覚えたが、、、納得いくほど読み込めてないなあ。」
去年の今頃は普通に学校ばかりだった。今年に入り、所属のアイドルグループが人気になり、仕事が増えた。今では単独ライブをするほどの規模、友達といる時間がめっきり減った。
「そろそろ寝ないと起きれないな。今何時。」
そろそろ、3時半になる。寝なければ、明日の合宿一日目が辛くなる。幸いなことに一日目は移動でほぼ終わるからいいのだが。
「新宿から長野か、夜に少しやって終わりっぽいな。」
疲れた体を伸ばし、天井を見上げながら呟く。一人暮らしのいい所は独り言を言っても誰も気づかないところだ。
「そういえば、あいつ、新宿時間内に着くかな。今まで家から近いところがバス乗り場だったけど、今回遠いから、、、迷子なったら大変だな、、、。」
新宿駅を馬鹿にしてはいけない。広いし、出口は多い。人の数も多すぎる。
「あいつ起きてるかな、。」
いつも湊生がバスのギリギリ出発前に着く。家は余裕もってでているのに、迷子になる。俺は、迷子になったというメッセージで迎えに行く。なら、初めから一緒に行った方が好都合だ。それに、同じ年代の、同じ学校の人と話せる機会はそんなにない。
「一緒に行くって言うのもありか。」
スマホを開く。送ってみて既読がつかなかったら、明日直接電話すればいいや。
「起きてるー?」
直ぐに返信が来た。まだ寝れていないようだった。大体こういう大きなイベントがある時は起きてる湊生。いつもより早い会話の進みで、直ぐに終わった。
「さて、寝なきゃ。」
もう時刻は4時を回っている。スマホに話しかけアラームをつける。
机の後ろにあるベッドへ向かう。敷布団と掛布団の間に滑り込むように入った。
枕の横に置いてあるのは、小さいクマのぬいぐるみ。
昔、湊生に貰ったぬいぐるみ。
「あいつ、これ覚えてんのかな。」
そんなこと考えながら、瞼を閉じた。
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