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超魔の目覚め
異星人の苦悩
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魔獣も超獣も、この宇宙に無数に存在し、そして幾多もの文明と生命を滅ぼしてきた。
……この世界の文明や種の滅亡の大半は、この化け物達によるもの。
今だに、その正体は分からず。
そして今この時にも、奴等は数多の高度な種族を滅ぼし、際限なく成長と強化を繰り返している。
そんな怪物の脅威によって、滅びた星の中に彼女の故郷も含まれている。
長きに渡り、とある超獣と戦い続けていた彼女達は敗北を重ね、凄惨な消耗戦を繰り広げ、そして狂気の最終手段へと至ったのだ。
いくら滅亡の危機に瀕しているとは言え、いくら多くの人命を救うためとは言え、いくら万策つきたからと言って、はたしてその所業は許されることなのだろうか?
脅威の抹殺か、種の滅亡か。
……あるのは、二者択一。
だからこそ、どんなに犠牲がでようとも非道な作戦を実行するしかなかった。
でなければ、どのみち滅亡は避けられないのだから。
それで実行されたのが、銀色の巨体を誇る超獣をレーザー核融合爆弾を仕掛けた軍事基地に誘引して施設もろとも消滅させる陽動兼焦土作戦であった。
その陽動のために臨時編成された部隊。
彼等の役目はその超獣を爆破地点まで誘導すること、そして起爆スイッチを押すこと。
皆が志願兵ではあったが、内容は死を前提とした作戦……確実に生還不可能な任務であった。
数千輌の戦闘車両と数百機の高速飛行戦闘機が攻撃を加え、注意を惹き付け、そして自爆地点まで超獣を誘導する。
作戦は順調に進んでいた、だがしかし無論のこと誘導の工程だけで多くの兵士の命が奪われた。
どうやら超獣には量子デバイスのような器官が存在するらしく、それゆえに優れた射撃統制能力よる精密な砲撃により車両も戦闘機も誘導の最中に次々と破壊され、そしてそれに合わせ数多の兵が命を断たれたのだ。
して爆破地点までたどり着けたのは、わすが十数輌の戦闘車両のみであった。
あとは起爆するのみ……しかし爆破はおきなかった。
爆破地点である軍事基地が超獣の砲撃を受けたことで、スイッチを手にしていた部隊長が死んでしまったのだろうか……。
だからこそ、こんなこともあろうかと別の手段を用意しとくもの。
それは作戦本部から遠隔操作での起爆であった。
「その作戦で遠隔操作の起爆スイッチを押したのが、私です……」
ハクラの傍らに佇む白髪白肌の異星人女性リミールは、ブリッジのメインモニターに映るヴァナルガンの姿を見ながら声を震わせた。
「……今でも、あの作戦時に死んだ兵達の声が……不意に聞こえてきます……眠る時も、あの日の夢をみます」
兵士達の最後の叫びとは大昔から変わらない。
妻、母親、恋人……あるいは子供の名前。
そして時々に「万歳!」や「あとは任せたぞ!」と言う声。
陽動作戦の実行中に車両や戦闘機が破壊される度に、その叫びが作戦本部に木霊してきた。
あの作戦の志願兵のほとんどは、家族や仲間を守りたい者、家族を奪われ怒り狂っていた者、によって構成されていた。
しかし、それでも「死にたくない! 死にたくない!」「バカヤロウ! ……貴様さえ、この惑星に来なければ……」と、泣きながら最後を迎えた者達もいたのだ。
「……そんな彼等の多くの犠牲によりヴァナルガンを爆破ポイントに誘い出すことができました。そして私は起爆装置を作動させたのです」
そしてリミールは震える自分の右手に目を向けた。
仲間達を焼き払らった手を。
多くの志願兵達の死を無駄にしないためにも、そう自分に言い聞かせて……この手で大量破壊兵器を作動させたのだ。
あの軍事基地には多くの兵士や陽動作戦を生き延びた者達がいた。……でも基地を無人にしてしまっては罠だと感づかれるため囮がどうしても必要で仕方のないことだったのだ。
滅亡の淵にあるとは言え、同胞を超獣ごと核兵器で焼き払う。
……はたして許されることだろうか?
「今だに、あの起爆装置のスイッチを押した感覚が離れません」
そしてリミールは記憶の奥深くにまで根付いている光景を思い出す。軍事基地が灼熱に飲み込まれ、全てが吹き飛ぶ瞬間を。
あの時、作戦本部のモニターに忌まわしいキノコ雲が映っていた。
激しい罪悪感で歯を食い縛り、仲間達が消え去ることを想像しながら、ただモニターを見ることしかできなかった。
「しかし作戦は……失敗しました。私達は幾度もの戦闘で超獣の恐ろしさを知ったつもりでした、しかしそれでも認識が甘すぎたのです」
そう言ってリミールは白黒が反転した目から涙を溢れさせた。
そしてまた当時のことを思い出す。……もっとも恐怖を刻みつけられ、罪悪感に蝕まれる要因となった映像を。
「……あの時のモニターで見た映像は忘れられません。……装甲が融解して歪んだ姿をしたヴァナルガンが、何事もなかったかのように更地から飛び去る光景を……私はただ仲間達を核で焼き払った、だけだったのです」
多くの犠牲を払った一大作戦は失敗に終わったのだ。
……なんのために志願兵は死んでいったのか?
……なんのために自分は決心して起爆スイッチを押したのか?
これでは、ただの無駄死にもいいところ。
単純に大量破壊兵器で敵ではなく仲間達を焼き払っただけ、と言う結果である。
何もかもを犠牲にして、精神を磨り減らしてまで戦った結果がこれなのだ……。
「……そして気づいた時には、作戦本部内の至るところから散発的に銃声が鳴り始めていました。作戦に関係した上層部から兵士までもが、拳銃を口にくわえて引き金をひいていたのです」
当然と言えば、当然かもしれない。
多くの兵器と同胞が失われ、あげくには核攻撃でも超獣は倒せないことが分かったのだ、そうなった以上もうまともな戦力もなく対抗手段もない。
いよいよ完全敗北と破滅と言う現実が突きつけられたのだ。
ならば自分の頭を撃ち抜いて、全てを終わらせようと考える者もでてくるだろう。
作戦の罪悪感や滅亡の絶望感に苦しめられるまえに……。
「……しかし、お前だけは死ななかったのだな」
そう言ってハクラは、傍らに佇みながら自分達の敗北の歴史を語るリミールの頭にポンと手をおき優しくその綺麗な白髪をなでた。
「……私も……彼等の後を追おと……拳銃を頭に突きつけたのですが……引き金を引けませんでした」
もはやリミールは感情など隠さずに嗚咽を交えて言葉を走らせる。
「……わ、私は卑怯者です。……みんなを核で焼き払った! そんな許されないことをしておきながら自害もせずに、一人生き延びたのです」
あの作戦の関係者は全員死んだにも関わらず、起爆を担当した自分は唯一生き延びた。
作戦だったとは言え、自分は核兵器で仲間を焼きつくしたのだ。……はたして許されるのか?
そして最後まで生き残り、移民船で宇宙を放浪し、ハクラの率いる連合に拾われたのだ。
「いやっ、少なくとも卑怯者ではあるまい」
そう言ってハクラは撫でる手を彼女の頭から退けた。
「お前は死んで現実から逃げるようなことも、そして自分がやったことに目を背けていないのだからな。それに絶望にも沈まず、今にいたるまで生きてきたのではないか? まだ自分にはやるべきことがあると思い」
「……私は……仲間達の仇をうちたい、無念をはらしたい」
リミールが涙を拭い、そう言った時だった。
管制官の声がブリッジに響き渡った。
「ヴァナルガン、まもなく都市に到着します!」
しかし現実はやはり厳しい。
この都市の壊滅も殺戮も止められそうにはなかった。
……この世界の文明や種の滅亡の大半は、この化け物達によるもの。
今だに、その正体は分からず。
そして今この時にも、奴等は数多の高度な種族を滅ぼし、際限なく成長と強化を繰り返している。
そんな怪物の脅威によって、滅びた星の中に彼女の故郷も含まれている。
長きに渡り、とある超獣と戦い続けていた彼女達は敗北を重ね、凄惨な消耗戦を繰り広げ、そして狂気の最終手段へと至ったのだ。
いくら滅亡の危機に瀕しているとは言え、いくら多くの人命を救うためとは言え、いくら万策つきたからと言って、はたしてその所業は許されることなのだろうか?
脅威の抹殺か、種の滅亡か。
……あるのは、二者択一。
だからこそ、どんなに犠牲がでようとも非道な作戦を実行するしかなかった。
でなければ、どのみち滅亡は避けられないのだから。
それで実行されたのが、銀色の巨体を誇る超獣をレーザー核融合爆弾を仕掛けた軍事基地に誘引して施設もろとも消滅させる陽動兼焦土作戦であった。
その陽動のために臨時編成された部隊。
彼等の役目はその超獣を爆破地点まで誘導すること、そして起爆スイッチを押すこと。
皆が志願兵ではあったが、内容は死を前提とした作戦……確実に生還不可能な任務であった。
数千輌の戦闘車両と数百機の高速飛行戦闘機が攻撃を加え、注意を惹き付け、そして自爆地点まで超獣を誘導する。
作戦は順調に進んでいた、だがしかし無論のこと誘導の工程だけで多くの兵士の命が奪われた。
どうやら超獣には量子デバイスのような器官が存在するらしく、それゆえに優れた射撃統制能力よる精密な砲撃により車両も戦闘機も誘導の最中に次々と破壊され、そしてそれに合わせ数多の兵が命を断たれたのだ。
して爆破地点までたどり着けたのは、わすが十数輌の戦闘車両のみであった。
あとは起爆するのみ……しかし爆破はおきなかった。
爆破地点である軍事基地が超獣の砲撃を受けたことで、スイッチを手にしていた部隊長が死んでしまったのだろうか……。
だからこそ、こんなこともあろうかと別の手段を用意しとくもの。
それは作戦本部から遠隔操作での起爆であった。
「その作戦で遠隔操作の起爆スイッチを押したのが、私です……」
ハクラの傍らに佇む白髪白肌の異星人女性リミールは、ブリッジのメインモニターに映るヴァナルガンの姿を見ながら声を震わせた。
「……今でも、あの作戦時に死んだ兵達の声が……不意に聞こえてきます……眠る時も、あの日の夢をみます」
兵士達の最後の叫びとは大昔から変わらない。
妻、母親、恋人……あるいは子供の名前。
そして時々に「万歳!」や「あとは任せたぞ!」と言う声。
陽動作戦の実行中に車両や戦闘機が破壊される度に、その叫びが作戦本部に木霊してきた。
あの作戦の志願兵のほとんどは、家族や仲間を守りたい者、家族を奪われ怒り狂っていた者、によって構成されていた。
しかし、それでも「死にたくない! 死にたくない!」「バカヤロウ! ……貴様さえ、この惑星に来なければ……」と、泣きながら最後を迎えた者達もいたのだ。
「……そんな彼等の多くの犠牲によりヴァナルガンを爆破ポイントに誘い出すことができました。そして私は起爆装置を作動させたのです」
そしてリミールは震える自分の右手に目を向けた。
仲間達を焼き払らった手を。
多くの志願兵達の死を無駄にしないためにも、そう自分に言い聞かせて……この手で大量破壊兵器を作動させたのだ。
あの軍事基地には多くの兵士や陽動作戦を生き延びた者達がいた。……でも基地を無人にしてしまっては罠だと感づかれるため囮がどうしても必要で仕方のないことだったのだ。
滅亡の淵にあるとは言え、同胞を超獣ごと核兵器で焼き払う。
……はたして許されることだろうか?
「今だに、あの起爆装置のスイッチを押した感覚が離れません」
そしてリミールは記憶の奥深くにまで根付いている光景を思い出す。軍事基地が灼熱に飲み込まれ、全てが吹き飛ぶ瞬間を。
あの時、作戦本部のモニターに忌まわしいキノコ雲が映っていた。
激しい罪悪感で歯を食い縛り、仲間達が消え去ることを想像しながら、ただモニターを見ることしかできなかった。
「しかし作戦は……失敗しました。私達は幾度もの戦闘で超獣の恐ろしさを知ったつもりでした、しかしそれでも認識が甘すぎたのです」
そう言ってリミールは白黒が反転した目から涙を溢れさせた。
そしてまた当時のことを思い出す。……もっとも恐怖を刻みつけられ、罪悪感に蝕まれる要因となった映像を。
「……あの時のモニターで見た映像は忘れられません。……装甲が融解して歪んだ姿をしたヴァナルガンが、何事もなかったかのように更地から飛び去る光景を……私はただ仲間達を核で焼き払った、だけだったのです」
多くの犠牲を払った一大作戦は失敗に終わったのだ。
……なんのために志願兵は死んでいったのか?
……なんのために自分は決心して起爆スイッチを押したのか?
これでは、ただの無駄死にもいいところ。
単純に大量破壊兵器で敵ではなく仲間達を焼き払っただけ、と言う結果である。
何もかもを犠牲にして、精神を磨り減らしてまで戦った結果がこれなのだ……。
「……そして気づいた時には、作戦本部内の至るところから散発的に銃声が鳴り始めていました。作戦に関係した上層部から兵士までもが、拳銃を口にくわえて引き金をひいていたのです」
当然と言えば、当然かもしれない。
多くの兵器と同胞が失われ、あげくには核攻撃でも超獣は倒せないことが分かったのだ、そうなった以上もうまともな戦力もなく対抗手段もない。
いよいよ完全敗北と破滅と言う現実が突きつけられたのだ。
ならば自分の頭を撃ち抜いて、全てを終わらせようと考える者もでてくるだろう。
作戦の罪悪感や滅亡の絶望感に苦しめられるまえに……。
「……しかし、お前だけは死ななかったのだな」
そう言ってハクラは、傍らに佇みながら自分達の敗北の歴史を語るリミールの頭にポンと手をおき優しくその綺麗な白髪をなでた。
「……私も……彼等の後を追おと……拳銃を頭に突きつけたのですが……引き金を引けませんでした」
もはやリミールは感情など隠さずに嗚咽を交えて言葉を走らせる。
「……わ、私は卑怯者です。……みんなを核で焼き払った! そんな許されないことをしておきながら自害もせずに、一人生き延びたのです」
あの作戦の関係者は全員死んだにも関わらず、起爆を担当した自分は唯一生き延びた。
作戦だったとは言え、自分は核兵器で仲間を焼きつくしたのだ。……はたして許されるのか?
そして最後まで生き残り、移民船で宇宙を放浪し、ハクラの率いる連合に拾われたのだ。
「いやっ、少なくとも卑怯者ではあるまい」
そう言ってハクラは撫でる手を彼女の頭から退けた。
「お前は死んで現実から逃げるようなことも、そして自分がやったことに目を背けていないのだからな。それに絶望にも沈まず、今にいたるまで生きてきたのではないか? まだ自分にはやるべきことがあると思い」
「……私は……仲間達の仇をうちたい、無念をはらしたい」
リミールが涙を拭い、そう言った時だった。
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