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番外編
グリィデル童話【真っ赤な王の間】
しおりを挟む昔々、あるところに強くてお金持ちだけど乱暴者で評判の悪い[オーク]の王様がいました。
ある日の朝、王様は緑色の豚鼻をふごふごと鳴らしながら兵士に命じます。
〈我を馬鹿にして陰口を叩く愚民がおるらしい〉
〈この我を嘲る考えを持つ者は誰であろうと許さん。全員見つけて叩きのめしてこい〉
〈一番よく働いた者にはたんまり褒美をくれてやろう〉
王様は臭い唾を飛ばしながら命令します。兵士達は我先にと飛び出して不心得者を探しに出てゆきました。
ただ一人、いつも他の同僚から苛められている新入り兵士は、なにやら考え込んでいる様子で随分もたもたとしていました。
〈なにをしておる!さっさと行かんか!〉
「ああ、申し訳ございません。すぐに出てまいります」
でっぷり太った王様から怒鳴られた新入りは鎧をがちゃがちゃと鳴らしながら他の兵士の後についてゆきました。
そしてしばらく経って、日が落ち始めた頃に兵士達は王様のもとへ帰ってきました。
〈…まずは新入り。誰ぞ不心得者は見つけたか〉
「いえ。そのような者はどこにもおりませんでした」
〈なんだと!一人も見つけられなかったのか!〉
にやにやと意地の悪い笑みを浮かべて、他の兵士達は新入りに目をやります。
《情けない奴だな。俺達はちゃんと見つけてきたぜ》
〈…ほう、では左のお前から申せ〉
《はい!“ふん、緑の豚がふんぞり返っているなんて世も末だな”と抜かす[ゴブリン]がいたので頭を引っ叩いて牢屋に入れてやりました!》
〈ほほう、よいぞ。右のお前は?〉
《ははぁ!“見ろよ!此処の花はあの豚が吐いた臭い息で枯れたんだ!”などと質の悪い冗談を放つ[トレント]がいたので枝をへし折ってやりました!》
〈ほう、ほう〉
報告を聞いた王様は満足げに玉座へ深く座りなおします。
〈間抜けで役立たずの新入りめ。他の兵士を見習わぬか!我を虚仮にする者を全く見つけられんとは!〉
「ああ、王様」
新入りは横の兵士を指さして、こう続けました。
「今二人見つけました。この者達は王様のことを“息が臭い緑の豚”だと考えております」
~グリィデル童話【真っ赤な王の間】より~
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