[完結]ヤンデレ・メリバは好きですか?

紅月

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危険な屋上イベント

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「グフ、グフ。やっと屋上イベントね」

夏休みを挟み、前回のイベントから随分時間が空き、季節は秋になっていた。

セレナにとって夏休みは退屈なものでしか無かった。
ゲームではサラッと終わったのに、友人と呼べるクラスメイトなど居ない彼女を自宅や別荘に誘う者は皆無で、実家の狭い部屋でただ無意味な時間を過ごしていた。



ニヤニヤとカサンドラからの手紙をポケットに入れて、セレナは屋上へ向かった。

屋上は遮るものの無い開かれた空間で、風が心地よくて生徒達の憩いの場でもあったが、今日は誰も居ない。
いや、手摺りの側に誰かが立っていた。

「早く来すぎたのかな?」

カサンドラが居ない事に首を傾げたが、手摺りにも垂れていた、淡いブラウンの髪をした生徒がセレナの方を向いた。

「アンタは」

セレナにとっては逆ハーを邪魔する、邪魔でしか無い存在。
アリアがキッと目に力を込め、スタスタと歩み寄って来た。

「セレナ・コール男爵令嬢ね」
「そうよ。何?アタシはカサンドラと話があるんだから、とっとと出ていきなさいよ」
「カレドラス侯爵令嬢は、いらっしゃいません」

小柄なくせして背筋がピンと伸び、可憐な容姿を引き立たせる青紫の瞳に腹が立った。
しかもその姿が前世で大嫌いだった双子の妹に良く似ている。

自分に溺れる筈だったキャラ達は皆、彼女を大切にしている。

「アンタが余計な事するから、デニス達がアタシの魅力に……」
「魅了魔法なんてまやかしです。1人だけでも罪深いのに、複数人に掛けるなんて何様です」
「何様ですって。アタシはこのゲームの世界のヒロインで、特別なの。イケメン達に愛される設定なの。アンタみたいなモブ、お呼びじゃないってんだよ」

ピンクの目が充血してどす黒く見える。

「言っている意味が分かりません。貴女、人間の言葉、話してますか?」

アリアが呆れた様な目で、セレナを見下す様にツィっと顎を上げる。

本来のアリアなら、これ程他人を侮蔑する様な事は口にしないが、やっていい事と悪い事が解らない愚か者に対して、優しい感情など欠片も無い。

「ご自分が、さも優れた存在の様な口振りですが、本当に優れた方は自分が特別だ、などと言いません」

デニスロード達の様に優秀な存在を間近で見ているから、アリアの言葉には力がある。

トラウマを克服し、国や民の為に誠実に生きようとしている彼らをアクセサリーのように扱う、愚か者に対してアリアは怒りを覚えている。

「うるせぇんだよ。アタシは特別で、可愛いからデニス達が取り合いすんの。それが決まりなの」

もはや人の言葉を話しているとは思えない。

「馬鹿なんですね。だからデニスロード様達に疎ましがられるんですよ」

アリアの言葉にも容赦が無くなった。

「そんな訳ない。アンタがアタシの邪魔しなきゃ……。そっか、アンタがバグね。だから……」

セレナの血走った目がギラギラ異様に光り、何かを握り潰そうとしている様な手に魔力を集め始めた。

距離を取ろうとジリジリと手摺りの所まで下がるアリアを更に追い詰め、詰め寄った。

「死ね。アンタが死ねば、ゲームのバグも解消されて、正しい世界になんだから」

鈍い光を放つ魔法球をアリアに向け、投げつけた。
セレナの頭の中では、自分の渾身の魔法球の爆発でアリアが吹き飛ぶ様子がありありと見えていた。
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