秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ

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新しい護衛

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ルドルフ様はわたしの憧れであり、恩人だ。

現在いまのわたしがあるのはルドルフ様のおかげと言っても過言ではなく、その恩に少しでも報いるよう日々精進を重ねてきた。

ルドルフ様が特殊な任務に就き、騎士団に顔を出す機会が減ったのは三年前のこと。

まがりなりにもその頃にはルドルフ様の右腕と言っていただけるまでになっており、第一騎士団の副団長だったわたしは代わりに団長の職を引き継いだ。

片田舎から出てきた貴族の端くれが団長など、なかなか認めて貰えない。

ルドルフ様がいたからこそ、副団長として認められていたのだ。

三年間、必死に過ごした。

総司令官が急逝され、ルドルフ様が後継に命じられたと聞いた時、またその下で務められるのではないかとわたしの期待は膨らんだ。

しかし、呼び出されたのはわたしではなかった。

数人の騎士が、ルドルフ様から密かに呼び出される姿を何度か目にした。

皆腕のたつ寡黙な騎士たちで、わたしよりも歳上だ。

やはりわたしでは役不足なのだろうか。

ルドルフ様の右腕などと言われていたのは、もう過去のことだ。

ところが、興奮した様子で戻ってきた彼らは数日の間姿を消し、また姿を現したときには普段の変わらぬ姿に戻っていた。

呼び出されていたことを遠巻きに探ってみたが、皆なんのことかととぼけてみせる。

いや、とぼけているというより、記憶にないといった感じだ。

これ以上の詮索はならない。

これはきっと深入りしてはいけない何かがあると、わたしの勘が告げていた。

ルドルフ様から呼び出しがあったのは、それからすぐのことだ。

共に連れていかれたのは、王の元。

現王特有の薄紫色に光る目が、全身を舐めるように見回す。

あの目を前にすると、全てを見透かされているような不思議で恐ろしい気持ちになる。

「ユリウスと申したか?これから問うことに答えろ。嘘偽りは許さぬ。」

何か、してしまったのか。

王の気に障るような、何かを。

身体中から冷や汗が溢れ出た。

「そのように脅されてはユリウスも答えにくいでしょう。もう少し、答えやすいようお話し下さい。」

ルドルフ様からの助け舟で、少しだけ王の圧が緩んだような気がした。

この王に進言できるのは、正妃様とルドルフ様、このお二人しかいないと聞いたことがある。

「ついな。ノアを任せるのだ。吟味せねばならん。」

ノア……?

どこかで、お聞きしたような。

「そなた、婚約者や恋人は?」

「…いえ、おりません。」

なんだ、一体何を訊かれるんだ?

「懸想する者は?性的な対象は男か女か?これまでの人数は?」

「誰も、おりません。…女性でしょうか。経験はまだ…ございません。」

「ほう!お前今だに経験がないのか!それはそれで心配だがな。」

ずっと騎士になるために必死で、騎士になってからもそんな余裕などなかった。

「茶化すような言い方はおよし下さい。ユリウスは騎士として、ずっと真面目に過ごしてきた者です。そんな暇はなかっただろうと思います。」

「ふうん。そうか。まあ、いいだろう。とりあえず会わせてみろ。駄目なときは…よいな。」

「ユリウスは最後の砦です。ユリウスで駄目なら、もう他にはおりません。」

「それでも駄目なときは、駄目だ。そうなったら、わたしの元で過ごさせる。」

「それはなりません。」

王とルドルフ様が何を話されているのか、その時のわたしは何一つ理解することができなかった。

「ユリウス、ついて来い。」

王の間を出てルドルフ様に連れて行かれたのは後宮。

ルドルフ様が後宮に入るのを門番が咎めることはない。

許されているということだ。

わたしなどが簡単に入れるような場所ではない。入り口で躊躇するわたしに、早く来いとルドルフ様が目で合図する。

円筒形に聳え立つ後宮を見上げ、これから一体何が起こるのか、全く想像がつかないまま恐る恐る足を踏み入れる。

後宮内にはむせかえるような、華やかな香りが漂っている。

騎士団内では決して嗅ぐことのない女性特有の香りだ。

自分は今なんと恐れ多い場所にいるのかと改めて実感し、前を行くルドルフ様を恨めしく思う。

わたしはこのような場所には、相応しくない。

「あら、ルドルフ。え、まさか次はユリウスなのう?」

「まさかのユリウス!」

「ユリウスが来てくれたら、わたしも嬉しいかも。」

すれ違う妃達は、皆面識ある方ばかりだ。

「ほう、ユリウスか。」

この国から嫁がれた唯一の正妃様がゆったりと微笑んでいる。

この後宮を取り纏めるという正妃様に深く礼を告げようとしたとき、どこからか微かな叫び声が聞こえた。

「ノア様!」

血相を変えたルドルフ様が走り出す。

正妃様も、他の側妃様もさっと顔色が変わり、ルドルフ様が向かう先を心配そうに見つめている。

騎士としての習性だろうか、正妃様にさっと一礼だけすると、わたしも無意識のうちに急いでその後を追っていた。

回廊を走った奥の奥、見たこともない頑丈そうな両開きの扉がある。

叫び声は、ここから?

痛い、助けて…

微かに助けを呼ぶ声まで聞こえている。

扉は外からも鍵…

ルドルフ様が急いで開錠し、開いた扉の向こうに、

そこに、あなた様がいらしたのです。


















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