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ジュニエスの戦い
33 薔薇の回廊 2
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近衛兵が突入した縦深陣の内部では、フリークルンドが予想していなかった事態が展開していた。
「バカな……内側にも壁があるだと?!」
防御陣外側の壁を突き破り、内側の槍兵を蹴散らして進む算段だったフリークルンドを待ち構えていたのは、さらなる壁の連続だった。
一枚破っても、その奥にはさらにまた壁が控えている。そして足を止めて斧槍を振るうたび、左右からは長槍の棘が近衛兵たちを襲う。
フリークルンドは強引に進撃しつつも、内心では閉口しきっていた。
「おのれ、うっとおしい!」
「隊長、ここは一旦抜けましょう!」
ハセリウスが進言する。フリークルンドが振り返ると、すでに二人の近衛兵が負傷しているようだった。
このときフリークルンドには、攻勢か守勢か、迷いが生じていた。
彼ほんらいの気質であれば、ここは無理にでも突破を試みるところだ。そうした場合、少なくともフリークルンド自身だけはベアトリスの元へ到達できていただろう。そして敵指揮官ベアトリスを討ち取ることこそが、この突撃の目的だったのだ。
だが彼はその道を選ばなかった。
「やむを得ん。右に抜けるぞ!」
フリークルンドは舌打ちの後に叫ぶ。
右側を包囲するノルドグレーン兵を瞬時に蹴散らし、みずから血路を開いて壁の外へ脱出した。
フリークルンドに突撃をためらわせたものは、ノアの言葉だった。
この戦いを生き延びても、おそらくリードホルムにはまだ卿らが必要だ――開戦前に交わした言葉が、彼に全滅覚悟の突撃を思いとどまらせたのだ。
「右方旋回!」
フリークルンド隊が右側面へ抜けたことを見て取り、すぐさまベアトリスが指示を出す。防御陣の旋回とともにベアトリスの戦闘馬車も移動し、近衛兵と荊叢回廊の位置関係は戦闘開始前と同じ状態に戻った。
ランガス湖を背にしたフリークルンドは、素早く陣形を再編するノルドグレーン軍を、鬼神の形相で睨んでいる。
「おのれ……」
「隊長、どうやら本隊が苦戦しているようです」
レイグラーフの戦闘馬車に掲げられた旗の色を見て、ハセリウスが耳打ちする。独立遊軍として敵陣に深く切り込む近衛兵の戦術を考慮して、ノアが提案した伝達手段だ。
フリークルンドは再び舌打ちした。
「……本隊の援護に戻るぞ!」
腹立たしげに怒号したフリークルンドは、踵を返しノルドグレーン軍に背を向けた。
一人の武人として目的を果たせなかった忸怩たる思いに苛立ちつつ、少数とは言え近衛兵という集団を預かる身の責任を、今は優先したのだった。
「バカな……内側にも壁があるだと?!」
防御陣外側の壁を突き破り、内側の槍兵を蹴散らして進む算段だったフリークルンドを待ち構えていたのは、さらなる壁の連続だった。
一枚破っても、その奥にはさらにまた壁が控えている。そして足を止めて斧槍を振るうたび、左右からは長槍の棘が近衛兵たちを襲う。
フリークルンドは強引に進撃しつつも、内心では閉口しきっていた。
「おのれ、うっとおしい!」
「隊長、ここは一旦抜けましょう!」
ハセリウスが進言する。フリークルンドが振り返ると、すでに二人の近衛兵が負傷しているようだった。
このときフリークルンドには、攻勢か守勢か、迷いが生じていた。
彼ほんらいの気質であれば、ここは無理にでも突破を試みるところだ。そうした場合、少なくともフリークルンド自身だけはベアトリスの元へ到達できていただろう。そして敵指揮官ベアトリスを討ち取ることこそが、この突撃の目的だったのだ。
だが彼はその道を選ばなかった。
「やむを得ん。右に抜けるぞ!」
フリークルンドは舌打ちの後に叫ぶ。
右側を包囲するノルドグレーン兵を瞬時に蹴散らし、みずから血路を開いて壁の外へ脱出した。
フリークルンドに突撃をためらわせたものは、ノアの言葉だった。
この戦いを生き延びても、おそらくリードホルムにはまだ卿らが必要だ――開戦前に交わした言葉が、彼に全滅覚悟の突撃を思いとどまらせたのだ。
「右方旋回!」
フリークルンド隊が右側面へ抜けたことを見て取り、すぐさまベアトリスが指示を出す。防御陣の旋回とともにベアトリスの戦闘馬車も移動し、近衛兵と荊叢回廊の位置関係は戦闘開始前と同じ状態に戻った。
ランガス湖を背にしたフリークルンドは、素早く陣形を再編するノルドグレーン軍を、鬼神の形相で睨んでいる。
「おのれ……」
「隊長、どうやら本隊が苦戦しているようです」
レイグラーフの戦闘馬車に掲げられた旗の色を見て、ハセリウスが耳打ちする。独立遊軍として敵陣に深く切り込む近衛兵の戦術を考慮して、ノアが提案した伝達手段だ。
フリークルンドは再び舌打ちした。
「……本隊の援護に戻るぞ!」
腹立たしげに怒号したフリークルンドは、踵を返しノルドグレーン軍に背を向けた。
一人の武人として目的を果たせなかった忸怩たる思いに苛立ちつつ、少数とは言え近衛兵という集団を預かる身の責任を、今は優先したのだった。
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