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4人のそれぞれの葛藤
しおりを挟むゴーレムが更に出てくる。
先程とは数が少なくなったとはいえ、まだ出てくるのかと苛立ちが募った。
足に絡みつくものがあった。これは? 彼女のスキルか。金属のようだ。しかしこれで動きを封じたと思ったら大間違いだ。
私は腰を屈め、金属を魔法で溶かしていった。
ん? 彼女が地面に手をついていた。
読めた! 彼女はゴーレムを自動操縦しているのではなく、手に地面をつけないと、操れないのだ。
つまり彼女の手が地面に離れれば、ゴーレムも動かなくなるということ。
私は即座に地面に六芒星を張り巡らせ、電撃魔法を地面に放った。
彼女の手が地面から離れた隙を付き、私は肉弾戦を仕掛けた。
彼女の動きが電撃により、硬直していた。もちろんゴーレムもだ。
そのまま蹴りを腹に喰らわした。
手応えあり!
最早動くのも辛いだろう。
まだ12分しか経っていない。
ふっ、呆気ないものだな。
なんだ? 一瞬立ち上がったように見えたが? 気のせいか、あれだけのダメージで立ち上がるのは、人間には不可能だ。
私は彼女にとどめを刺すべく近寄った。
ぐっは? 何が起きた?
顎にダメージがあり、目の前が回転していく。
「ふふふ、油断しましたね?」
芝居だったのか! 私としたことが、情け無い…勝利を目前にして油断をしてしまった。
形跡逆転された…やられる!
私は自分の腹に手を置き魔法を放った。
私の身体は吹っ飛び、上手く彼女から距離を取ることに成功した。
何故だ? 一瞬にして回復したとでも? 埃すらなくなっている。アイテムで回復したのか? しかし…このダメージはヤバい。
「スティール!」
彼女が叫ぶと、会場で持っていた女性から武器が消えた。
なるほど! 武器の共闘を言っていたのはこの為か…確かに仲間から武器をスキルでスティールしたのだろう。
構わない。その程度の事は、問題にはならないよ。
軽い脳震盪が起きている。このままでは戦闘継続は困難。人間なりそうだろうな。
私は自分の指を頭に刺して、魔法で脳の温度を下げた。危険な手法だが、やらない訳にはいかなかった。
更に魔法で脳のダメージを和らげる。
ふっ、皮肉なものだ。異世界から来た者から、脳の情報を教わっていなければ、私の負けであったろう。
私は立ち上がり、彼女と再び対峙した。
○●○●
一方その頃アキラの自宅にて。
「痛~! あの人まじ蹴りきっつ!」
脇腹を抑えながら彼女が言う。
「あれ? ミウどうした?」
俺は苦しんでる彼女に声をかけた。
「私ミウじゃない、リン。ミウと入れ替わったの。でも12分ぐらいしかもたなかった。」
苦悶の表情で声を枯らして彼女が言う。
「そうか、お疲れ様。病院行くか?」
しかし、リンは痛みを押し殺しすように体を起こして言う。
「そんなことより、ミウの彼氏癖になんでここにいるの? 闘技場でミウを見守りなさいよ。」
俺は当惑して返答した。
「いや彼氏じゃないって。それに今はそんな体でそんな事言ってる場合じゃないだろ?」
リンが愚痴るように、俺に真剣な眼差しを向けた。
「何も分かってない…彼氏じゃない? 付き合いなさいよもう。何やってるのよ!」
お節介な子だな。
でもそれだけミウが大切な存在なのだろう。もしかしたらエリクサーを上げたのは、リンか、その友達かなと事情を探った。
戸惑いつつ、思わず言葉が漏れた、
「いや…そんなこと言われても。」
痛みが襲って来ているのだろうだろう。彼女の目が充血している。
「ミウはね、あなたの為に戦ってるのよ?」
レイナは闘技場だ。ミウがリンの負傷の事にまで考えが浮かばないって事は、普通なら考えられない。
俺の為と聞いてそのせいかと思いつつ、首を振って否定する様言った。
「はぁ? いや自分の命が危ないからだろ?」
部屋が静かだ。彼女がいないと…鳥のさえずり、窓から指してくる陽が暖かい。
窓と言えば彼女に蜘蛛の巣に引っ掛けられたことをつい、この前のことの様に感じる。
「違うわ。ミウが死んだら、今度はアキラの番って言って、助けたいからって私たちに頭を下げたのよ?」
リンが目を擦り、俺の手を掴んで真剣に語った。
さすがに、彼女の上手い口調に乗せられてるのではと疑念が生じた。
「いやいや、騙されてるよ。」
「最低! バカ!」
怒りと失望の混じった声でいい、リンが俺の頬を叩こうとしたが途中で辞め、小さくため息を吐いた。
リンに貶されるなんて。
頬を殴られなくても、その想いは伝わったよ。
彼女の真剣な感情から、真実だろうと、目に涙を溜めて、彼女にお礼を言ってすぐにミウのいる武道会に向かった。
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