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ミウ?対エリオット
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エリオット視点。闘技場。
観客席には多数の人間達と、私の知り合い数名の魔族が座っている。
誰もいない方が、こちらとしては喜ばしいんだが致し方あるまい。
恐らく、観客席の人間も戦闘に利用することも考えられる。
盾にするほど、冷酷では無さそうだが。
流石に司会者はいない。正式な試合では無いからな。それでもこれだけの人数を集めたのは、彼女の高い手腕だな。
ちなみに審判もいない。そんな者は戦いの邪魔でしか無い。
さて始めるとするか。闘技場の土には多量の砂が敷いてあった。ちょっと量が多いな…何かあるな?
ミウに始めるぞと伝え、頷き試合が始まった。
私はすぐに彼女に魔法を放った。
高度な呪文は詠唱が必要だ。詠唱など与える隙は与えてくれないだろう。
だが、人間相手にそこまで強力な魔法を使う必要はない。ある程度でダメージを与えられる。
反射される方が厄介ならば、この程度の魔法で充分。
ミウは私の魔法を上手くジャンプして避ける。
そして彼女は地面手をついた。
砂のゴーレムが闘技場の砂から複数体…いや数百体いる。
なるほど、砂が多い理由はこれかと合点がいった。
私は砂のゴーレムに振り払うように腕で粉砕した。
すると爆発して、腕にダメージを与えられた。
なるほどゴーレムを攻撃すると、爆発する仕組みか。これでは迂闊に魔法は使えん。
ならば、スキル無効化! ゴーレム達が全て消え去った。
「何をしたんですぅ?」
彼女が目を見開き、後退りをして言った。
「フフ、スキルでゴーレム達をスキルを無効化して消したのさ。君はもうスキルは使えない。」
私は彼女を指差して勝ち誇って言う。
「それはずるいですぅ。ラノベの主人公ばりに汚いスキルですん。肉弾戦しか出来なくて味気ないですん。」
呆れる様に両手を開いて言う。
ラノベ? 異世界の書物か。
それにしても、この余裕はなんだ? 作戦実行中という訳か?
来るなら来い。それもこの戦いの楽しみの一つだ。
「そうだろうね。スキル無効化は常時使うわけじゃない、安心したまえ。」
フフ、このスキルを使えば誰であろうと勝ち目はないだろう。便利なスキルだが、このスキルにかまけるほど、愚かでもない。
彼女のいうことも、もっともだ。私はスキル無効化を解いた。
「フフフ、掛かったですぅ! 無効化解いたのが敗因ですん。スティール!」
彼女が笑みを浮かべて、玉を出した。それに何かが、吸われている様に見えた。
「何?」
私は驚愕して聞く。
「無効化のスキル盗みましたぁ! 一度使うと返さなきゃいけないですけど、使わないので、あなたは試合中無効化は使えません!」
スキルを盗む? 彼女の言うことを確かめる為、無効化スキルを使った。
何も変わらない。なるほど、本当の話らしいな。
「フッ、なるほど。人間のスキルもこれほど高度なスキルを使えるとは…それとも君だけかな?」
「修行したのですぅ~。人間のスキルを超えましたぁ!」
彼女の声に違和感を感じた。表情にもだ。盗むスキルを使うと、疲労感でも溜まるのだろうか?
なら盗みを何度もすることは出来ないな。これは貴重な情報だ。
試しに引っ掛けてみるか?
「なら君にスキルを盗まれていけば、私を倒せるということになるな。」
「フフフ、安心してください。一応簡単に盗める訳じゃないので。」
簡単に盗める訳ではない。これを額面通りに受け取るのは危険だ。
何故それを私に教える?
おそらく、別の有用なスキルを奪う為に油断させる為に言ったと考えるのが自然。
彼女の性格からして、敵に塩を送る情報を与えるわけがない。
ならば、迂闊にスキルを使うのは辞めるべきだろう。ここぞと言うときに使う。
しかし、それを狙って一度しか使えないスキルの可能性も考えられる。
なんと手強い相手だろう。どちらとも取れようが、この情報を私に伝える事で、彼女にとって有利に働く。
よし、ならばこちらも揺さぶりを掛けてみるか。まだ6分しか経ってないからな。
「一つ聞きたい。今私の他のスキルを盗めるか?」
「盗めないですぅ。言ったじゃないですか? 簡単には盗めないって。」
「ならば質問を変えよう。その盗みスキルは、見ないと盗めまい? ランダムではなく、選択出来る。と言うことは、私のスキルがどんなスキルか、知る必要がある。」
「ふふふ、正解ですぅ。でも良いんですか? お喋りしてて? 30分が過ぎていきますよ?」
やはりな。素直に認められると怪しい感じがするが、そう言われてもやらないところを見たら出来ないのだ。
そして制限時間に触れたが、これは強がりだ。攻めてきて欲しくないと言う、本音を隠してのこと。
私に思考する時間を与えなくない、ということも考えられる。
私はゴーレムの攻撃をギリギリに交わして、距離を取り攻撃魔法で粉砕していた。
○●○●
一方その頃、アキラの自宅にて。
「アレ? ミウ、エリオットと闘技場で戦いの約束してんじゃないの? 何で家にいるの?」
俺は、誰もいないはずの場所に彼女がいたので、手にしていた飲み物を驚きの余り溢しそうになった。
机に座って、何やら奇妙な動作をしている彼女に疑念を抱きながら聞いた。
「アキラこそ、私が戦うって言ったのになぜ家にいるんですかぁ? 普通心配で見に行くでしょう?」
ミウは質問には答えず、不満そうに顔を膨らませていた。
「勝つだろうと思ってるからさ。ってことはセレーネの兄貴お怒りじゃない? ミウがいなくて。」
それだけ俺は彼女を信頼している。もちろん外に出るのが億劫でもあるが。
「私に変装してる人が戦ってますぅ~。大丈夫ですん。」
「ええっ! その人殺されるだろ?」
ミウなら兎も角、他の人がまともに魔族と戦えるとは思わない。俺は心配して言った。
「大丈夫ですん。私が操って操縦してるので。」
彼女が言うには、色々な知り合いのスキルを総動員しているとのこと。
「フフフ、15分その変身してる人に戦って貰って、その15分間は私が戦うためですん。」
ミウとその戦ってる人を入れ替えるスキルもあるらしい。確かにスキルを組み合わせると、凄い効力が発揮される。
「姑息! ミウ最低な奴だなぁ。」
ちょっと言い過ぎたかなと即座に反省した。
多分彼女の言い分だと、命掛けの戦いに汚いも卑怯もないとか言われそうだ。
「相手はそれ以上ですん。スキル無効化使われた時はビビりました! 変身解けるかとぉ!」
「解けなかった?」
「念の為、スキル以外にも顔をメイクで変装させておきましたん。声真似もばっちりですん。」
ふえぇ…周到なことだなぁ。
「ちなみに戦ってるの誰?」
俺はその子が心配になり聞いた。
「友達の錬金術師のリンですん。」
錬金術師か。クラスメイトのリン…友達が多いんだよな、確か。
「15分経ったら、交代しますん。」
俺と喋りながら、忙しそうにリンを操ってるのは、大変そうだ。
しかし、不安なことを聞かずにはいられなかった。
「策士過ぎるだろう! 気がつかれたらどうすんだよ?」
「フフフ、共闘もバレなきゃ良いのですん。世の中騙し合いですぅ!」
ミウが微笑んで、親指を立てて言う。
怖いなぁ、彼女を敵に回したら、破滅しそう。
体が寒気を感じた。
「リンと共闘してるのか。」
「チッチッチ! たったの1人な訳ないじゃないですかぁ!」
舌を鳴らしながら彼女が、得意げに言う。
「操作してるのもリンの仲間の力ですん。無効化スキルを奪ったのは、盗みって言いましたけど、仲間のアイテムの力ですん。ししし。」
「試合見てないから分からんが、この嘘つきめ。」
「嘘つかないで死んだら、それはアホですん。
はっきり言って勝てない相手と真面目にやるのは、犬死にに等しいですん。」
それは確かにそうではあるけど、やられた方は堪らないな。何も知らないエリオットに同情するぜ。
けど、相手を無視するなら、もっと上手いやり方があるだろう。そう思って彼女に提案した。
「ならそんな回りくどいことしないで、全員でかかった方が早いでしょ?」
ミウが椅子から立ち上がって、すかさず反論する。
「アキラはだから甘いのですぅ! 逃げられたらおしまいですん。一応15分はタイマンしてあげるのですから、半分は嘘ではないのですぅ。」
なるほどな、本当のことと嘘を織り交ぜる訳か…俺だったらどっちと戦っても殺されそう。
「エリオットは何でミウと戦いたいんだろ?」
「それはセレーネに聞いてくださいですぅ。」
もう戦闘中だから今更だと思い、頬を掻きながら、腕を組んだ。
「それもそうだな。でも聞きづらいな、情報貰うっていうのは。」
「ならアキラが自分で、洞察してください。」
考えろと言われて、予測してみた。
「ミウのこと買ってる、これが理由だろ? 部下の仇撃ちって柄でもないし…単純にやはり戦いたい本能か、うーむ。」
独り言のように呟いて、続けて言う。
「でも、もしエリオットに万が一共闘がバレたらどうする? 相当キレるぞ?」
ミウが更に説明した。武器は職人の共闘と認めたので、リンを使うことですら、認めた共闘の範囲だと、解釈出来るのだと。
俺はそれを屁理屈だと笑って言った。
「そうですぅ~。言い訳ですぅ。」
無邪気な微笑みを俺に向けて言う。
その笑みが余りにも可愛いので、胸に痛みが走る。
黙ってれば本当美少女なのだと痛感させられた。
ミウと話してるのはやはり楽しいとも、実感した。気が散るだろうから、今は喋らない方が良いと思ってても、してしまう。
「それとバレたら、妹を使いますん。セレーネに助けを求めるか、人質にするか…状況見て決めますぅ。」
さらっと悪党がする人質作戦すら、視野に入れてるらしい。
「おいおい、それは俺が許さないぞ?」
さすがにそれはさせないと、釘を刺した。
「許さなければ私が死にますん。」
「む…それは汚い。」
「大丈夫ですぅ。更に怒り心頭に発したら、冷静さを失ってるので、複数でかかれば倒せますん。逆に冷静に彼が引けば、そっちの方が危険かもですが。」
つまり、エリオットが共闘に気がついて怒りで我を忘れていれば倒せるが、そうではなく冷静であれば、皆全滅させられるかもしれない。
ミウが言ってるのはこういうことだろう。
「なるほど、考えてるな。」
呆れるほど、頭の切れるミウに笑みが溢れた。
「アキラが頼りないからですん。俺が守るって言えば、そんなことしないですぅ。」
なんか俺のせい? 違うよね? まったくこいつは~。
「そろそろ戦闘に専念しますん。」
「分かったよ。共闘バレたら、俺が守る。だからセレーネ人質作戦はするなよ?」
「了解ですぅ。」
素直なところは可愛げがあるよな。
よし彼女は必ず守る! 俺は堅く決意した。
観客席には多数の人間達と、私の知り合い数名の魔族が座っている。
誰もいない方が、こちらとしては喜ばしいんだが致し方あるまい。
恐らく、観客席の人間も戦闘に利用することも考えられる。
盾にするほど、冷酷では無さそうだが。
流石に司会者はいない。正式な試合では無いからな。それでもこれだけの人数を集めたのは、彼女の高い手腕だな。
ちなみに審判もいない。そんな者は戦いの邪魔でしか無い。
さて始めるとするか。闘技場の土には多量の砂が敷いてあった。ちょっと量が多いな…何かあるな?
ミウに始めるぞと伝え、頷き試合が始まった。
私はすぐに彼女に魔法を放った。
高度な呪文は詠唱が必要だ。詠唱など与える隙は与えてくれないだろう。
だが、人間相手にそこまで強力な魔法を使う必要はない。ある程度でダメージを与えられる。
反射される方が厄介ならば、この程度の魔法で充分。
ミウは私の魔法を上手くジャンプして避ける。
そして彼女は地面手をついた。
砂のゴーレムが闘技場の砂から複数体…いや数百体いる。
なるほど、砂が多い理由はこれかと合点がいった。
私は砂のゴーレムに振り払うように腕で粉砕した。
すると爆発して、腕にダメージを与えられた。
なるほどゴーレムを攻撃すると、爆発する仕組みか。これでは迂闊に魔法は使えん。
ならば、スキル無効化! ゴーレム達が全て消え去った。
「何をしたんですぅ?」
彼女が目を見開き、後退りをして言った。
「フフ、スキルでゴーレム達をスキルを無効化して消したのさ。君はもうスキルは使えない。」
私は彼女を指差して勝ち誇って言う。
「それはずるいですぅ。ラノベの主人公ばりに汚いスキルですん。肉弾戦しか出来なくて味気ないですん。」
呆れる様に両手を開いて言う。
ラノベ? 異世界の書物か。
それにしても、この余裕はなんだ? 作戦実行中という訳か?
来るなら来い。それもこの戦いの楽しみの一つだ。
「そうだろうね。スキル無効化は常時使うわけじゃない、安心したまえ。」
フフ、このスキルを使えば誰であろうと勝ち目はないだろう。便利なスキルだが、このスキルにかまけるほど、愚かでもない。
彼女のいうことも、もっともだ。私はスキル無効化を解いた。
「フフフ、掛かったですぅ! 無効化解いたのが敗因ですん。スティール!」
彼女が笑みを浮かべて、玉を出した。それに何かが、吸われている様に見えた。
「何?」
私は驚愕して聞く。
「無効化のスキル盗みましたぁ! 一度使うと返さなきゃいけないですけど、使わないので、あなたは試合中無効化は使えません!」
スキルを盗む? 彼女の言うことを確かめる為、無効化スキルを使った。
何も変わらない。なるほど、本当の話らしいな。
「フッ、なるほど。人間のスキルもこれほど高度なスキルを使えるとは…それとも君だけかな?」
「修行したのですぅ~。人間のスキルを超えましたぁ!」
彼女の声に違和感を感じた。表情にもだ。盗むスキルを使うと、疲労感でも溜まるのだろうか?
なら盗みを何度もすることは出来ないな。これは貴重な情報だ。
試しに引っ掛けてみるか?
「なら君にスキルを盗まれていけば、私を倒せるということになるな。」
「フフフ、安心してください。一応簡単に盗める訳じゃないので。」
簡単に盗める訳ではない。これを額面通りに受け取るのは危険だ。
何故それを私に教える?
おそらく、別の有用なスキルを奪う為に油断させる為に言ったと考えるのが自然。
彼女の性格からして、敵に塩を送る情報を与えるわけがない。
ならば、迂闊にスキルを使うのは辞めるべきだろう。ここぞと言うときに使う。
しかし、それを狙って一度しか使えないスキルの可能性も考えられる。
なんと手強い相手だろう。どちらとも取れようが、この情報を私に伝える事で、彼女にとって有利に働く。
よし、ならばこちらも揺さぶりを掛けてみるか。まだ6分しか経ってないからな。
「一つ聞きたい。今私の他のスキルを盗めるか?」
「盗めないですぅ。言ったじゃないですか? 簡単には盗めないって。」
「ならば質問を変えよう。その盗みスキルは、見ないと盗めまい? ランダムではなく、選択出来る。と言うことは、私のスキルがどんなスキルか、知る必要がある。」
「ふふふ、正解ですぅ。でも良いんですか? お喋りしてて? 30分が過ぎていきますよ?」
やはりな。素直に認められると怪しい感じがするが、そう言われてもやらないところを見たら出来ないのだ。
そして制限時間に触れたが、これは強がりだ。攻めてきて欲しくないと言う、本音を隠してのこと。
私に思考する時間を与えなくない、ということも考えられる。
私はゴーレムの攻撃をギリギリに交わして、距離を取り攻撃魔法で粉砕していた。
○●○●
一方その頃、アキラの自宅にて。
「アレ? ミウ、エリオットと闘技場で戦いの約束してんじゃないの? 何で家にいるの?」
俺は、誰もいないはずの場所に彼女がいたので、手にしていた飲み物を驚きの余り溢しそうになった。
机に座って、何やら奇妙な動作をしている彼女に疑念を抱きながら聞いた。
「アキラこそ、私が戦うって言ったのになぜ家にいるんですかぁ? 普通心配で見に行くでしょう?」
ミウは質問には答えず、不満そうに顔を膨らませていた。
「勝つだろうと思ってるからさ。ってことはセレーネの兄貴お怒りじゃない? ミウがいなくて。」
それだけ俺は彼女を信頼している。もちろん外に出るのが億劫でもあるが。
「私に変装してる人が戦ってますぅ~。大丈夫ですん。」
「ええっ! その人殺されるだろ?」
ミウなら兎も角、他の人がまともに魔族と戦えるとは思わない。俺は心配して言った。
「大丈夫ですん。私が操って操縦してるので。」
彼女が言うには、色々な知り合いのスキルを総動員しているとのこと。
「フフフ、15分その変身してる人に戦って貰って、その15分間は私が戦うためですん。」
ミウとその戦ってる人を入れ替えるスキルもあるらしい。確かにスキルを組み合わせると、凄い効力が発揮される。
「姑息! ミウ最低な奴だなぁ。」
ちょっと言い過ぎたかなと即座に反省した。
多分彼女の言い分だと、命掛けの戦いに汚いも卑怯もないとか言われそうだ。
「相手はそれ以上ですん。スキル無効化使われた時はビビりました! 変身解けるかとぉ!」
「解けなかった?」
「念の為、スキル以外にも顔をメイクで変装させておきましたん。声真似もばっちりですん。」
ふえぇ…周到なことだなぁ。
「ちなみに戦ってるの誰?」
俺はその子が心配になり聞いた。
「友達の錬金術師のリンですん。」
錬金術師か。クラスメイトのリン…友達が多いんだよな、確か。
「15分経ったら、交代しますん。」
俺と喋りながら、忙しそうにリンを操ってるのは、大変そうだ。
しかし、不安なことを聞かずにはいられなかった。
「策士過ぎるだろう! 気がつかれたらどうすんだよ?」
「フフフ、共闘もバレなきゃ良いのですん。世の中騙し合いですぅ!」
ミウが微笑んで、親指を立てて言う。
怖いなぁ、彼女を敵に回したら、破滅しそう。
体が寒気を感じた。
「リンと共闘してるのか。」
「チッチッチ! たったの1人な訳ないじゃないですかぁ!」
舌を鳴らしながら彼女が、得意げに言う。
「操作してるのもリンの仲間の力ですん。無効化スキルを奪ったのは、盗みって言いましたけど、仲間のアイテムの力ですん。ししし。」
「試合見てないから分からんが、この嘘つきめ。」
「嘘つかないで死んだら、それはアホですん。
はっきり言って勝てない相手と真面目にやるのは、犬死にに等しいですん。」
それは確かにそうではあるけど、やられた方は堪らないな。何も知らないエリオットに同情するぜ。
けど、相手を無視するなら、もっと上手いやり方があるだろう。そう思って彼女に提案した。
「ならそんな回りくどいことしないで、全員でかかった方が早いでしょ?」
ミウが椅子から立ち上がって、すかさず反論する。
「アキラはだから甘いのですぅ! 逃げられたらおしまいですん。一応15分はタイマンしてあげるのですから、半分は嘘ではないのですぅ。」
なるほどな、本当のことと嘘を織り交ぜる訳か…俺だったらどっちと戦っても殺されそう。
「エリオットは何でミウと戦いたいんだろ?」
「それはセレーネに聞いてくださいですぅ。」
もう戦闘中だから今更だと思い、頬を掻きながら、腕を組んだ。
「それもそうだな。でも聞きづらいな、情報貰うっていうのは。」
「ならアキラが自分で、洞察してください。」
考えろと言われて、予測してみた。
「ミウのこと買ってる、これが理由だろ? 部下の仇撃ちって柄でもないし…単純にやはり戦いたい本能か、うーむ。」
独り言のように呟いて、続けて言う。
「でも、もしエリオットに万が一共闘がバレたらどうする? 相当キレるぞ?」
ミウが更に説明した。武器は職人の共闘と認めたので、リンを使うことですら、認めた共闘の範囲だと、解釈出来るのだと。
俺はそれを屁理屈だと笑って言った。
「そうですぅ~。言い訳ですぅ。」
無邪気な微笑みを俺に向けて言う。
その笑みが余りにも可愛いので、胸に痛みが走る。
黙ってれば本当美少女なのだと痛感させられた。
ミウと話してるのはやはり楽しいとも、実感した。気が散るだろうから、今は喋らない方が良いと思ってても、してしまう。
「それとバレたら、妹を使いますん。セレーネに助けを求めるか、人質にするか…状況見て決めますぅ。」
さらっと悪党がする人質作戦すら、視野に入れてるらしい。
「おいおい、それは俺が許さないぞ?」
さすがにそれはさせないと、釘を刺した。
「許さなければ私が死にますん。」
「む…それは汚い。」
「大丈夫ですぅ。更に怒り心頭に発したら、冷静さを失ってるので、複数でかかれば倒せますん。逆に冷静に彼が引けば、そっちの方が危険かもですが。」
つまり、エリオットが共闘に気がついて怒りで我を忘れていれば倒せるが、そうではなく冷静であれば、皆全滅させられるかもしれない。
ミウが言ってるのはこういうことだろう。
「なるほど、考えてるな。」
呆れるほど、頭の切れるミウに笑みが溢れた。
「アキラが頼りないからですん。俺が守るって言えば、そんなことしないですぅ。」
なんか俺のせい? 違うよね? まったくこいつは~。
「そろそろ戦闘に専念しますん。」
「分かったよ。共闘バレたら、俺が守る。だからセレーネ人質作戦はするなよ?」
「了解ですぅ。」
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