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第37話
「お前見てるとイライラするんだよ」
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これはまだキキョウが幼い頃のお話。
ガチャリ
キキョウ「・・・ただいま」
この頃まだ小学生だったキキョウは顔に傷を作ったまま家に帰ることが多かった。
家の扉を開けるとそこには帰りを待っていた祖母がいた。
否、キキョウの祖母ではなく親戚なのだが。
「おかえりなさい、シンアちゃん・・・。シンアちゃん・・・?!どうしたのその怪我は・・・!」
キキョウ「・・・階段から落ちた」
「・・・本当なの?その話・・・。だって毎日毎日怪我して帰ってくるじゃない」
キキョウはなにも言わず、祖母の横を走り抜けると二階へと上がり部屋に閉じこもってしまった。
「ちょ、シンアちゃん!?ご飯は!?」
そんな祖母の声などキキョウに届くことはなかった。
ーーーー
私は物心ついた時には祖母と二人暮らしをしていた。
両親は、居ない。
親戚の祖母が家に遊びにくる日曜日・・・。
そんなある日に家が火事になって・・・。
父も、母も、叫び声をあげて、焼け死んでいくのを見た。
私はそんな父と母に手を伸ばして助けに行こうとしたが、救助に来た消防士により確保されて焼かれてしまった家から連れ出されることになった。
それからは祖母の家に引き取られることになって。いまだにあの日の記憶が鮮明に残っている。
だがそんな祖母も・・・。
俺の・・・私の面倒を見てくれた祖母は・・・今ではもう、この世に居ないのだが・・・。
ーーーー
その日の夜
祖母はキキョウの部屋の前に来ると、
「シンアちゃん。明日はおばあちゃんが車で学校に送ってあげるわ。
おばあちゃんは、シンアちゃんのことが心配なのよ・・・。今でもあの日の出来事を・・・心に傷を負っているはずだもの・・・。
ご飯、ドアの前に置いておくから、少しでもいいから食べてね。」
そう言うと祖母はご飯をドアの前の床に置くと、1階へと降りていく。
キキョウは足音が遠ざかるのを耳にしながらも、しばらくするとベッドから起き上がり部屋の扉をゆっくり開ければ扉の前にはラップされたご飯が置いてあった。
キキョウはそれを無言で見つめたあと、ラップを剥がして口にした。
時刻が夜中の12時を刺し示したところで、
キキョウはリビングに来ると、ソファーで寝ている祖母の姿があった。
キキョウはそんな祖母を見ると祖母に毛布をかけてあげれば、祖母はうっすら目を開けた。
「ん・・・あら・・・?シンア、ちゃん!?あらやだ私ったら、こんな時間にこんなとこで寝てるなんて・・・!」
ふと机に目をやると、そこにはキレイに完食されたお皿が置かれていた。
シンアちゃん・・・ちゃんと食べてくれたのね・・・。
あの事件があった日から、シンアちゃんは笑うことが少なくなった・・・。シンアちゃんが今よりもう少し小さい頃は遊びに行った時には私に懐いてくれて、楽しそうに笑っていたのに・・・。
「シンアちゃん。毛布かけてくれたのね。ありがとう」
それに対しキキョウは何も言わずに祖母から顔を背ける。
「私はまだ洗い物が残ってるから、シンアちゃんはもう寝たほうがいいわ。明日も学校あるのでしょう?」
そう笑って言う祖母はソファから立ち上がり机の皿を持ち台所へと行こうとする祖母の背中にキキョウは抱きついた。
「シンアちゃん・・・?どうかしたの?」
祖母はシンアに振り返り、目線が合うように膝をつく。
「寂しくなっちゃったのかな?大丈夫よ。私がいるし、シンアちゃんの側にずっといるから。どこにも行かないわよ」
キキョウは顔を俯かせ、祖母はキキョウの言葉に耳をすませていればやがて小さい声が漏れだした。
キキョウ「・・・ね・・・」
「え、?」
キキョウ「・・・一緒に寝て」
一瞬驚く祖母ではあったが、優しく微笑むと「ええもちろん。一緒に寝ましょうか」
と、その日の夜は祖母とキキョウは一緒の部屋のベッドにて眠りへとつくのだった。
次の日の朝。
祖母の車で学校まで送ってもらうことにしたキキョウ。だけどキキョウは学校前までは送らなくいいらしく、学校まで少し歩くが、「ここまででいい」と言って車を降りるキキョウ。
「それじゃ今日の夕方またここに迎えに来るわね。」
キキョウは頷くと歩き出す。
それを見送り祖母も車をUターンさせて道を引き返して行った。
校門の前には転校生のデーナがいた。
なにかを拾い集めてるようで、そんなデーナと目が合うキキョウ。
キキョウは軽くお辞儀すると校門をそそくさと潜った。
カトレアはそんなキキョウの背中を無言で見つめていた。
第一印象は変わった感じの転校生だった。
デーナ、か・・・。
挨拶する時も、神様の生まれ変わりだとかって言っていた。
神様を信じているから・・・俺なんかが関わっていいお人ではない。そう確信したんだ。
ーその日の放課後。
「なぁシンア。ちょっと付き合えよ」
まただ。また、この時間が始まった。地獄の時間。
2人の男の子達から連れてこられたのは裏庭。
「なぁ。俺彼女に振られたんだけどさー。何故だと思う??お前が好きなんだとさ!」
そう言ってキキョウの腹を蹴る生徒。キキョウは腹を押さえてその場にうずくまる。
「さすがに顔はやめてあげようぜ。毎日怪我してんじゃ親も心配するだろうし」
「こいつを心配してる奴なんかいんのか?」
キキョウ「・・・!」
「まぁでもそっか。顔はやめてあげる。こんな弱い男のどこがいいんだがなぁ?学校じゃあんま喋んないし、いつも無表情だし」
「お前見てるとイライラするんだよ」
腹いせに殴られてる毎日。
誰になんと言われようと、反論しようとは決しておもわなかった。けど、その日はどこか違ったようだ。
「お前見ててイライラする理由分かったわ。その髪だよ。自分で後ろ結んでんの?それとも親から??どうでもいいけど、いっそのこと髪をオシャレに切ってあげるよ」
そう言って隠し持っていたハサミを取り出すクラスの男の子。
キキョウは祖母から髪を結んでくれたことを思い出し、
「やめろ」と小さく口にする。
「あ?なんか言ったか??」
と、その時だった。
「いやぁぁあ!!」
学校中に響き渡る悲鳴。
その声に聞き覚えがあった男の子はキキョウから離れ裏庭から正門の方に顔を覗かせた。
「あ、あれ・・・アミカ・・・?」
そのアミカと呼ばれた女の子はどうやら彼女に振られたと言っていた女の子なのだろう。そのアミカはカトレアを怯えた顔で見つめてその場を動けずにいた。
「あ・・・あ・・・っ」
み、皆・・・。
クラスの子が・・・と、鳥に・・・。
デーナちゃんは、なに・・・したの・・・?
それに、さっき一瞬だけデーナちゃんの瞳が赤く光ったような・・・?
気の、せい・・・?
私もいるのに、私だけ鳥にならなかったのって・・・。
皆・・デーナちゃんと視線を交えていたから・・・?
カトレア「まだ、足りない。もっと・・・」
もっと、友だちを・・・。
カトレアの足元には無数の鳥が地に落ちていて、
そんな異様な光景に言葉をなくすしかなかった。
カトレアは地に落ちている鳥を一羽ずつ拾い集めているようだった。
ただ、なんとなくそこにいたら危ない気がした男の子は「アミカ!」と呼ぶとアミカは顔だけを裏庭の方に向ける。
「あ・・・ワタル・・・」
アミカはずっと足が地面から離れなかったがワタルと呼んだ男の子を見つけた途端に足が自然と地を離れ、
アミカはワタルの方へと一目散に駆け出した。
「アミカ!早くこっちに!」
ワタルはアミカに手を伸ばしアミカも必死に走りながらワタルに目一杯手を伸ばしていた。
カトレア「・・・ダメ。逃げるなんて。」
「・・・!」
カトレアの呟く声が聞こえたのか、アミカはカトレアの方に振り返ってしまった。
カトレア「皆。わらわの友達にするんだから」
カトレアはアミカの方に顔を向けていて、
カトレアの瞳が赤く光る。その赤い瞳を見てしまったアミカ
も、鳥の姿に変わりその場に落ちた。
アミカが鳥になるところを見たワタルはハサミを出す。
「お、おい、あの転校生やばいんじゃないか・・・?
こっちに向かってきてるし・・・。は、早く早く逃げようぜ!」
「逃げる・・・わけないだろ」
「わ、ワタル・・・。お前まさか・・・」
カトレア「あ。まだそこにも居たのね。」
カトレアはワタル達の存在に気が付き裏庭の方に足を進めていると、
ふと下からグチャと何かを潰した音が鳴る。
カトレアは視線を下に向ければ、
そこは確か鳥にされたアミカが居た場所で踏んづけてしまった事でその場は血が飛び散っていた。
カトレア「あぁ・・・わらわの友達にしようと思ったのに、踏んじゃった。まぁでも、一人二人減ったところでまた新しく友達作ればいいのだし。
・・・この力を使うと目が痛いわ」
カトレアは目を押さえていると、裏庭からハサミを持ったワタルが飛び出してくる。
「この・・・化け物がああああぁ!!!」
カトレアは目が痛すぎて目を瞑っていれば、
すぐそこにワタルが迫ってきていてカトレアに飛びかかるとハサミをカトレアの目に突き刺した。
カトレア「!ああぁぁ!!」
「よくも・・・アミカを・・・!!!」
カトレアは地面に倒れたことで腕の中に集めていた鳥たちは地面に落とされる。
そんなカトレアの上に跨り今度は逆の目にハサミを突き立てようとしたところで、キキョウが裏庭から飛び出してワタルを突き飛ばした。
「いって・・・!」
そんなワタルには見向きもせず、キキョウは倒れているカトレアに駆け寄る。
キキョウ「・・・大、丈夫、ですか?」
キキョウがそう声をかけるとカトレアは目を押さえながらキキョウを見上げる。キキョウはそんなカトレアに手を差し伸ばしていた。
地面に転がっていた
ワタルもやがてゆっくりと体を起こした。
「おまえ・・・どういうつもり・・・そいつの味方するのかよ!!」
キキョウはそう叫ぶワタルに目もくれずカトレアが起きあがるのを手伝っていると、
「おれを・・・おれを無視すんなぁぁぁあああ!」
ワタルはハサミを持ちキキョウに駆けていく。
キキョウは反応できずにいればカトレアがキキョウの手を借りて立ち上がるとキキョウをその場から押し退ける。
そしてハサミにて突き立てられてた目を押さえたまま、
もう片方の目で赤く光らす。ワタルはその瞳を見てしまい一瞬にして鳥の姿になってしまう。
「ひ・・・わ、ワタル・・・」
裏庭からその光景を見ていた男の子はこっそりと逃げ出すことにした。
それをカトレアは横目で見ていたが、特に追うことはせずハサミにて突き立てられた方の瞳から手を離してその手を見つめる。
カトレア「あぁわらわはもう、人間ではないのね」
突き立てられた瞳から大量の血が流れていたはずが、すぐに傷が癒えていた。
キキョウ「貴方・・・何故わらわを庇った?」
キキョウ「・・・俺には・・・、神様が必要・・・だったから」
キキョウ「神様の生まれ変わりだって言ったの、信じてくれるの?」
キキョウ「・・・信じてましたよ。初めから。」
キキョウ「そう・・・。貴方、名はなんという?」
キキョウ「シンア=レイズ・・・。同じクラスだったかと・・・」
キキョウ「あら?そうだった?
影が薄くて気付かなかったかも。
でも、気に入ったわ。シンア=レイズ。貴方、わらわの元に来ない??」
キキョウ「?」
カトレア「わらわの神の元で、忠実な僕(しもべ)にならない??貴方がうんと頷くだけで、永遠に生きられる命と、力を捧げてあげる」
そこで最初に思い浮かんだのは祖母の顔だった。
・・・・おばちゃん。
ごめん。俺は・・・。
キキョウ「・・・断る義理はありません」
・・おばちゃんにはお世話になった・・・
でも・・・俺は・・・俺には行くべき場所ができました。
これからは神のもとで・・・。
カトレア「そう。それじゃ・・・」
グサ・・・
カトレアが近くに落ちてたハサミを拾うとキキョウの胸に強く突き刺した。
え・・・?
キキョウは状況についていけないまま後ろに倒れていきそのまま意識を失うことに。
カトレア「・・・ごめんなさい。言ってなかったと思うけど、神の元へ来るには一度死んでもらわないとダメなのよ」
大丈夫。すぐに会えるわ。
カトレアはその場に倒れているキキョウを見下ろしていた。
ガチャリ
キキョウ「・・・ただいま」
この頃まだ小学生だったキキョウは顔に傷を作ったまま家に帰ることが多かった。
家の扉を開けるとそこには帰りを待っていた祖母がいた。
否、キキョウの祖母ではなく親戚なのだが。
「おかえりなさい、シンアちゃん・・・。シンアちゃん・・・?!どうしたのその怪我は・・・!」
キキョウ「・・・階段から落ちた」
「・・・本当なの?その話・・・。だって毎日毎日怪我して帰ってくるじゃない」
キキョウはなにも言わず、祖母の横を走り抜けると二階へと上がり部屋に閉じこもってしまった。
「ちょ、シンアちゃん!?ご飯は!?」
そんな祖母の声などキキョウに届くことはなかった。
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私は物心ついた時には祖母と二人暮らしをしていた。
両親は、居ない。
親戚の祖母が家に遊びにくる日曜日・・・。
そんなある日に家が火事になって・・・。
父も、母も、叫び声をあげて、焼け死んでいくのを見た。
私はそんな父と母に手を伸ばして助けに行こうとしたが、救助に来た消防士により確保されて焼かれてしまった家から連れ出されることになった。
それからは祖母の家に引き取られることになって。いまだにあの日の記憶が鮮明に残っている。
だがそんな祖母も・・・。
俺の・・・私の面倒を見てくれた祖母は・・・今ではもう、この世に居ないのだが・・・。
ーーーー
その日の夜
祖母はキキョウの部屋の前に来ると、
「シンアちゃん。明日はおばあちゃんが車で学校に送ってあげるわ。
おばあちゃんは、シンアちゃんのことが心配なのよ・・・。今でもあの日の出来事を・・・心に傷を負っているはずだもの・・・。
ご飯、ドアの前に置いておくから、少しでもいいから食べてね。」
そう言うと祖母はご飯をドアの前の床に置くと、1階へと降りていく。
キキョウは足音が遠ざかるのを耳にしながらも、しばらくするとベッドから起き上がり部屋の扉をゆっくり開ければ扉の前にはラップされたご飯が置いてあった。
キキョウはそれを無言で見つめたあと、ラップを剥がして口にした。
時刻が夜中の12時を刺し示したところで、
キキョウはリビングに来ると、ソファーで寝ている祖母の姿があった。
キキョウはそんな祖母を見ると祖母に毛布をかけてあげれば、祖母はうっすら目を開けた。
「ん・・・あら・・・?シンア、ちゃん!?あらやだ私ったら、こんな時間にこんなとこで寝てるなんて・・・!」
ふと机に目をやると、そこにはキレイに完食されたお皿が置かれていた。
シンアちゃん・・・ちゃんと食べてくれたのね・・・。
あの事件があった日から、シンアちゃんは笑うことが少なくなった・・・。シンアちゃんが今よりもう少し小さい頃は遊びに行った時には私に懐いてくれて、楽しそうに笑っていたのに・・・。
「シンアちゃん。毛布かけてくれたのね。ありがとう」
それに対しキキョウは何も言わずに祖母から顔を背ける。
「私はまだ洗い物が残ってるから、シンアちゃんはもう寝たほうがいいわ。明日も学校あるのでしょう?」
そう笑って言う祖母はソファから立ち上がり机の皿を持ち台所へと行こうとする祖母の背中にキキョウは抱きついた。
「シンアちゃん・・・?どうかしたの?」
祖母はシンアに振り返り、目線が合うように膝をつく。
「寂しくなっちゃったのかな?大丈夫よ。私がいるし、シンアちゃんの側にずっといるから。どこにも行かないわよ」
キキョウは顔を俯かせ、祖母はキキョウの言葉に耳をすませていればやがて小さい声が漏れだした。
キキョウ「・・・ね・・・」
「え、?」
キキョウ「・・・一緒に寝て」
一瞬驚く祖母ではあったが、優しく微笑むと「ええもちろん。一緒に寝ましょうか」
と、その日の夜は祖母とキキョウは一緒の部屋のベッドにて眠りへとつくのだった。
次の日の朝。
祖母の車で学校まで送ってもらうことにしたキキョウ。だけどキキョウは学校前までは送らなくいいらしく、学校まで少し歩くが、「ここまででいい」と言って車を降りるキキョウ。
「それじゃ今日の夕方またここに迎えに来るわね。」
キキョウは頷くと歩き出す。
それを見送り祖母も車をUターンさせて道を引き返して行った。
校門の前には転校生のデーナがいた。
なにかを拾い集めてるようで、そんなデーナと目が合うキキョウ。
キキョウは軽くお辞儀すると校門をそそくさと潜った。
カトレアはそんなキキョウの背中を無言で見つめていた。
第一印象は変わった感じの転校生だった。
デーナ、か・・・。
挨拶する時も、神様の生まれ変わりだとかって言っていた。
神様を信じているから・・・俺なんかが関わっていいお人ではない。そう確信したんだ。
ーその日の放課後。
「なぁシンア。ちょっと付き合えよ」
まただ。また、この時間が始まった。地獄の時間。
2人の男の子達から連れてこられたのは裏庭。
「なぁ。俺彼女に振られたんだけどさー。何故だと思う??お前が好きなんだとさ!」
そう言ってキキョウの腹を蹴る生徒。キキョウは腹を押さえてその場にうずくまる。
「さすがに顔はやめてあげようぜ。毎日怪我してんじゃ親も心配するだろうし」
「こいつを心配してる奴なんかいんのか?」
キキョウ「・・・!」
「まぁでもそっか。顔はやめてあげる。こんな弱い男のどこがいいんだがなぁ?学校じゃあんま喋んないし、いつも無表情だし」
「お前見てるとイライラするんだよ」
腹いせに殴られてる毎日。
誰になんと言われようと、反論しようとは決しておもわなかった。けど、その日はどこか違ったようだ。
「お前見ててイライラする理由分かったわ。その髪だよ。自分で後ろ結んでんの?それとも親から??どうでもいいけど、いっそのこと髪をオシャレに切ってあげるよ」
そう言って隠し持っていたハサミを取り出すクラスの男の子。
キキョウは祖母から髪を結んでくれたことを思い出し、
「やめろ」と小さく口にする。
「あ?なんか言ったか??」
と、その時だった。
「いやぁぁあ!!」
学校中に響き渡る悲鳴。
その声に聞き覚えがあった男の子はキキョウから離れ裏庭から正門の方に顔を覗かせた。
「あ、あれ・・・アミカ・・・?」
そのアミカと呼ばれた女の子はどうやら彼女に振られたと言っていた女の子なのだろう。そのアミカはカトレアを怯えた顔で見つめてその場を動けずにいた。
「あ・・・あ・・・っ」
み、皆・・・。
クラスの子が・・・と、鳥に・・・。
デーナちゃんは、なに・・・したの・・・?
それに、さっき一瞬だけデーナちゃんの瞳が赤く光ったような・・・?
気の、せい・・・?
私もいるのに、私だけ鳥にならなかったのって・・・。
皆・・デーナちゃんと視線を交えていたから・・・?
カトレア「まだ、足りない。もっと・・・」
もっと、友だちを・・・。
カトレアの足元には無数の鳥が地に落ちていて、
そんな異様な光景に言葉をなくすしかなかった。
カトレアは地に落ちている鳥を一羽ずつ拾い集めているようだった。
ただ、なんとなくそこにいたら危ない気がした男の子は「アミカ!」と呼ぶとアミカは顔だけを裏庭の方に向ける。
「あ・・・ワタル・・・」
アミカはずっと足が地面から離れなかったがワタルと呼んだ男の子を見つけた途端に足が自然と地を離れ、
アミカはワタルの方へと一目散に駆け出した。
「アミカ!早くこっちに!」
ワタルはアミカに手を伸ばしアミカも必死に走りながらワタルに目一杯手を伸ばしていた。
カトレア「・・・ダメ。逃げるなんて。」
「・・・!」
カトレアの呟く声が聞こえたのか、アミカはカトレアの方に振り返ってしまった。
カトレア「皆。わらわの友達にするんだから」
カトレアはアミカの方に顔を向けていて、
カトレアの瞳が赤く光る。その赤い瞳を見てしまったアミカ
も、鳥の姿に変わりその場に落ちた。
アミカが鳥になるところを見たワタルはハサミを出す。
「お、おい、あの転校生やばいんじゃないか・・・?
こっちに向かってきてるし・・・。は、早く早く逃げようぜ!」
「逃げる・・・わけないだろ」
「わ、ワタル・・・。お前まさか・・・」
カトレア「あ。まだそこにも居たのね。」
カトレアはワタル達の存在に気が付き裏庭の方に足を進めていると、
ふと下からグチャと何かを潰した音が鳴る。
カトレアは視線を下に向ければ、
そこは確か鳥にされたアミカが居た場所で踏んづけてしまった事でその場は血が飛び散っていた。
カトレア「あぁ・・・わらわの友達にしようと思ったのに、踏んじゃった。まぁでも、一人二人減ったところでまた新しく友達作ればいいのだし。
・・・この力を使うと目が痛いわ」
カトレアは目を押さえていると、裏庭からハサミを持ったワタルが飛び出してくる。
「この・・・化け物がああああぁ!!!」
カトレアは目が痛すぎて目を瞑っていれば、
すぐそこにワタルが迫ってきていてカトレアに飛びかかるとハサミをカトレアの目に突き刺した。
カトレア「!ああぁぁ!!」
「よくも・・・アミカを・・・!!!」
カトレアは地面に倒れたことで腕の中に集めていた鳥たちは地面に落とされる。
そんなカトレアの上に跨り今度は逆の目にハサミを突き立てようとしたところで、キキョウが裏庭から飛び出してワタルを突き飛ばした。
「いって・・・!」
そんなワタルには見向きもせず、キキョウは倒れているカトレアに駆け寄る。
キキョウ「・・・大、丈夫、ですか?」
キキョウがそう声をかけるとカトレアは目を押さえながらキキョウを見上げる。キキョウはそんなカトレアに手を差し伸ばしていた。
地面に転がっていた
ワタルもやがてゆっくりと体を起こした。
「おまえ・・・どういうつもり・・・そいつの味方するのかよ!!」
キキョウはそう叫ぶワタルに目もくれずカトレアが起きあがるのを手伝っていると、
「おれを・・・おれを無視すんなぁぁぁあああ!」
ワタルはハサミを持ちキキョウに駆けていく。
キキョウは反応できずにいればカトレアがキキョウの手を借りて立ち上がるとキキョウをその場から押し退ける。
そしてハサミにて突き立てられてた目を押さえたまま、
もう片方の目で赤く光らす。ワタルはその瞳を見てしまい一瞬にして鳥の姿になってしまう。
「ひ・・・わ、ワタル・・・」
裏庭からその光景を見ていた男の子はこっそりと逃げ出すことにした。
それをカトレアは横目で見ていたが、特に追うことはせずハサミにて突き立てられた方の瞳から手を離してその手を見つめる。
カトレア「あぁわらわはもう、人間ではないのね」
突き立てられた瞳から大量の血が流れていたはずが、すぐに傷が癒えていた。
キキョウ「貴方・・・何故わらわを庇った?」
キキョウ「・・・俺には・・・、神様が必要・・・だったから」
キキョウ「神様の生まれ変わりだって言ったの、信じてくれるの?」
キキョウ「・・・信じてましたよ。初めから。」
キキョウ「そう・・・。貴方、名はなんという?」
キキョウ「シンア=レイズ・・・。同じクラスだったかと・・・」
キキョウ「あら?そうだった?
影が薄くて気付かなかったかも。
でも、気に入ったわ。シンア=レイズ。貴方、わらわの元に来ない??」
キキョウ「?」
カトレア「わらわの神の元で、忠実な僕(しもべ)にならない??貴方がうんと頷くだけで、永遠に生きられる命と、力を捧げてあげる」
そこで最初に思い浮かんだのは祖母の顔だった。
・・・・おばちゃん。
ごめん。俺は・・・。
キキョウ「・・・断る義理はありません」
・・おばちゃんにはお世話になった・・・
でも・・・俺は・・・俺には行くべき場所ができました。
これからは神のもとで・・・。
カトレア「そう。それじゃ・・・」
グサ・・・
カトレアが近くに落ちてたハサミを拾うとキキョウの胸に強く突き刺した。
え・・・?
キキョウは状況についていけないまま後ろに倒れていきそのまま意識を失うことに。
カトレア「・・・ごめんなさい。言ってなかったと思うけど、神の元へ来るには一度死んでもらわないとダメなのよ」
大丈夫。すぐに会えるわ。
カトレアはその場に倒れているキキョウを見下ろしていた。
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二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
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