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 お湯の準備ができたので、若いメイドに案内されて浴室に向かう。

 浴室には、大きな浴槽があった。しかも、アツアツの湯気が立っている。

 おそらく、わざわざアナリスのために沸かしてくれたのだろう。

(そこまでしなくてもよかったのに……)

 アナリスは申し訳ない気持ちになったが、せっかく用意してくれたのだからと思い直し、ありがたく使うことにした。

 メイドがアナリスのドレスを丁寧に脱がせてくれて、湯あみの手伝いまでしてくれる。

 体を洗われたときは恥ずかしかったが、それ以上に疲れていたのでありがたかった。

「メイリーン様、お湯加減はいかがですか?」

 メイドは、様子を見に来てくれた。

 アナリスは、湯船に浸かりながら答える。

「はい……気持ちいいです……」

「それはよかったです」

 メイドは微笑むと、

「では、ごゆっくりおくつろぎくださいね」

と言って去っていった。

 やがてお湯に浸かっていると、アナリスはだんだん眠くなってきた。

(いけないわ……寝ちゃったら溺れちゃう)

 そう思って慌てて湯船から上がると、清潔な部屋ぎに着替えて自室に戻った。

 そのまま近くのソファに、うつ伏せになって伸びてしまった。


✴✴✴


 次に目を覚ましたとき、アナリスは薄暗い部屋の中にいた。

 すっかり、日は暮れていて、外は真っ暗だった。

 壁のランプの灯だけがゆらゆらと揺れている。

「よく眠れたかい?」

 それは聞き覚えのある声だった。

 ラファエルの声だ。

 アナリスは驚いて体を起こすと、彼はベッドの端にかがんで見守っている。

「あれ?  ここ……?」

「寝室のベッドだ。疲れたんだろう。ぐっすり眠っていたよ」

(そうだったんだ……)

 アナリスは、胸の中がドキンと鳴った──。

(どうして殿下が一緒に?! 王宮に戻られたのでは?!)

 アナリスが戸惑っていると、ラファエルはベッドの上に乗っかってきた。

 ぎしりという音が響く。

(えっ?  え?  何?  どういうこと……?!)

 アナリスが混乱していると、彼はいきなり抱きついてきた。

 そして耳元でささやく。

「妙に気になってしまってね。早馬で来てしまったよ。……本当はソファにいた君をあのまま抱きたかったんだけど。眠っているのを抱くのは自制して、ベッドに寝かしたんだ」

「……っ!」
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