私のわがままな異世界転移

とみQ

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第2章 これはもしかしてデートなのでは?

3ー18

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  魔石の換金が終わった。
  なんだかどっと気疲れしたように感じるが、結果として金貨14枚と銀貨10枚の収入を得ることができた。
  これはかなりの額だと思える。
  というのも、今回ピスタの街の宿に一晩泊まったのだが、その時に使用したお金が銅貨50枚程度だったからだ。
  この世界のお金で使用しているのが金貨と銀貨、銅貨の三種類。
  それぞれの相対的な価値は銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚となっている。
  ということは今回の魔石の換金で我々は宿に数十泊しても優にお釣りがくる程のお金を手に入れたことになるからだ。
  更に先ほど得た魔石の価値についての話もしておこう。
  一重に魔石いってもいくつかの種類がある。
  全部で六種類。赤、青、黄、緑、白、黒の魔石だ。
  魔石は色によってその価値が大きく変わるらしい。
  ちなみに赤が一番価値が低く、黒が一番価値が大きいのだとか。
  赤い魔石が一般的に銀貨5枚、青が銀貨50枚、黄が金貨2枚、緑が金貨50枚、白と黒が金貨300枚以上の価値があるらしい。
  とにかく一気に懐に余裕が出た。
  これで大方手に入れたいものは手に入るだろう。
  しっかりと武器や防具、道具など揃えられるものは揃えようと思う。
  そしてもう一つ。
  これはただの余談であるが、この話を聞いて気付いた事がある。
  魔石の価値が色によって変化するという事は、当然高価な魔石は手に入りづらいからなのだろう。
  恐らく高価な黒の魔石を落とすような魔物は、相当なレアモンスターかとてつもなく強い、若しくはその両方かと考えられる。
  そこで改めて私達が持っていた魔石の色を思い返してみた。
  数は200以上あったものの、その殆どが赤であった。
  中に3個だけ青い魔石があった程度。
  という事は私達は今まで、雑魚の魔物ばかりを相手取っていたという事になる。
  私達は遭遇する魔物のその殆どを苦戦する事無く倒してきていた。
  それによりすっかり魔物は大した事は無いと、私達の脅威となる存在は魔族だけだと思ってしまっていた。
  だがどうやらこれは考えを改めねばならぬようだ。

「ねえ、次はどこ行くの?」

  そんな思考の海に沈んでいた私を、椎名が引き戻した。
 
「――ん……ああ。そうだな……」 

「あの、隼人くん。ちょっといいかな?」

  曖昧に返事をする私に、今度は美奈が口を開いた。

「ん?  どうした美奈」

「私、ちょっと行きたいお店、見つけちゃって……。出来たらゆっくり見たいから。別行動がいいんだけど、ダメ……かな?」

  ――これは珍しい。
  美奈はこういった全体行動の際、積極的に自分から何かしたいと主張してくる事はあまりない。
  私としても聞き入れてあげたいとは思った。だが今それを許可するのは憚られた。

「美奈……先の戦いの事もある。いくら街の中とはいえ、昨日この街は襲われたばかり。流石に一人で行動するというのはどうだろうか」

「そう……だよね」

  あっさりと否定され意気消沈する美奈。
  余り落ち込まれてしまうと苦しくなってしまうのだが。
  とにかくそこに付き合ってやって出来るだけ長く滞在してやろうとは思う。
  そんな折のことだ。

「別にそんな固く考えなくてもいいんじゃない?」

「――椎名、だがそれは……」

  私としてはかなり意外であった。
  昨日の戦いに於いて、別行動を取ってしまった事に最も憤っていたのは椎名である。
  だが美奈の申し出を肯定しようとするとは。

「――ああ、早とちりしないでよ!?  私も付いていくって言ってるの。二人ずつで行動すれば、街の中にいるくらい構わないんじゃない?  それに今回は私も隼人くんとアリーシャの動向は風の感知で把握しとくからさ。あと隼人くんは武器とか防具見るんでしょ?  私は服が欲しいもの。一件一件回ってたんじゃ時間も掛かるし効率悪いと思うの」

  私の思考を察してか、いつもより早口で捲し立てる椎名。
  それに何だかんだ今は自分達の身も一番安全な時だとも思う。
  昨日の今日で、しかも人質を取った状態でヒストリアに来いとつきつけておいて、今この瞬間に何かしてくることはあまり考えづらい。
  もちろんそれを逆手に取るということも十分に考えられることだが、それも踏まえて二人行動ということなのだろう。

「それに、美奈のことも心配でしょ?」

「う――うむ」
 
  最後は小声で囁いてくる彼女。流石に機転が利くというか。
  更に言うと友達想いな彼女にほんの少し嫉妬のような気持ちも湧きあがる。

「うむ、わかった。では一時間後に宿屋の前に集合としよう。馬車も預かってもらってるしな。くれぐれも時間は守ってくれ。こちらは二人が遅れたら何かあったとみなす事にする」

「オッケー。じゃ、早速行きましょ、美奈」

「あ、うん!」

  そう言って小走りで行ってしまう二人。
  美奈は背中を押されながら顔だけをこちらに振り向かせた。

「隼人くん行ってくるね!  ありがとう!」

「ああ、また後でな」

  笑顔の美奈を見送りながら私自身も自然の顔が綻ぶ。
  椎名の気づかいに今は素直に感謝することにしよう。
  街の中央の方へと消えていく二人の後ろ姿を見つめながらそう思った。
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小説家になろうにて4年以上連載中の作品です。https://ncode.syosetu.com/n2034ey/続きが気になる方はこちらでも読めますのでどうぞ。ブクマや感想などしていただけるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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