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第2章 これはもしかしてデートなのでは?
3ー19
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私とアリーシャは美奈と椎名と別れ、ここからは二人で行動することになった。
次に足を運んだ場所は、防具屋だ。
「いらっしゃいっ!」
今度の店主は魔石屋の主人とは違い、威勢が良かった。
戦いの経験などあるのだろうか。
体はがっしりと引き締まり、見え出た腕には幾つかの斬り傷の名残りがある。
スキンヘッドのそのおやじはシャツの上には革製の防具を身に纏い、いかにも戦士という風体で豪快な笑顔を見せた。
「――ん? 兄ちゃん、昨日街で魔族と戦ってたやつじゃねえかっ!?」
「――ああ……。そうですが」
逡巡しつつも肯定すると、そのおじさんは明らかに瞳を輝かせた。
「やっぱりか! 昨日は魔族共から街を救ってくれてありがとなっ!」
どうやら私達の戦いを目撃していた一人らしい。彼も街に繰り出し魔族と戦ったりしていたのだろうか。
店主はニカッと白い歯を見せて笑った。
思いもよらず感謝された事により、少し照れ臭くなってしまう。
私は何を言うべきか、若干返答に困りつつ、結果黙してこくりと頷き微笑んだ。
「街のピンチを救ってくれたんだ。気に入ったのがあったら多少は負けてやるから好きなの選んでくれよ! そっちのお嬢ちゃんもな!」
「うむ。ありがとう。見させてもらおう」
そう言って後ろで早速店の品々を眺めていたアリーシャにも声を掛けたのだ。
得てして商売とは本来こういうものなのかもしれないと思う。
来店した者の人となりを見つつその者に合った商品を選出していく。
そのためにはやはりコミュニケーションは欠かせないのだ。
まあ私はどちらかと言えばそういった会話は苦手な方であるが。
私は一人で黙々と欲しい物を選ぶ方が落ち着くのだ。
「――店主、ここは良い店だな。防具もしっかりと手入れが行き届いている」
しばらく店の品々を見ていたアリーシャが店の品質に対する称賛を述べる。
それに店主は素直に嬉しそうな表情を見せた。
「おっ! 嬢ちゃん中々見る目があるじゃねえか! いい鎧も装備してるしな! ……て待てよ。良く見ると王国騎士団の鎧じゃねえかっ!?」
流石防具屋の店主といった所か。
鎧を見てアリーシャの身分に気がついたようだ。
「ああ、そうだ」
「道理でっ! ……しかし王国騎士団の団員がこんな所まで出てくるってことはやっぱりヒストリアでの事件調査ってえことなのか?」
この店主が事情通なのか、それとも元々事件の噂がこの街にまで普通に及んでいるのか。
そこまでは分からないが、少なくともこの店主の耳にもヒストリアでの話が届いているらしい。
「――まあそんな所だ。私達が駆けつけた時、丁度魔族と鉢合わせてな」
アリーシャは当たり障りなく会話を進めていく。
途中私に軽く目配せをしてきた。察するに、余り大っぴらにはしたくないという事なのだろう。
しかし思うに、アリーシャはこの国の姫様だというのに、思ったよりも顔が割れていないようだ。
ヒストリア王国では流石にこうもいかないだろうが、姫ともなれば正直もっと有名人かと思っていた。
この世界にはテレビやインターネットというような情報のツールが存在していない。
そうなれば人の認知などは所詮このくらいに止まってしまうのかもしれない。
「そうかそうか。まああんたらがいてくれて助かったぜ! ありがとよ! とにかくゆっくり見ていってくれや!」
こうして幾つかの言葉を交わした後、私達は店内をじっくりと見て回る事にしたのだ。
次に足を運んだ場所は、防具屋だ。
「いらっしゃいっ!」
今度の店主は魔石屋の主人とは違い、威勢が良かった。
戦いの経験などあるのだろうか。
体はがっしりと引き締まり、見え出た腕には幾つかの斬り傷の名残りがある。
スキンヘッドのそのおやじはシャツの上には革製の防具を身に纏い、いかにも戦士という風体で豪快な笑顔を見せた。
「――ん? 兄ちゃん、昨日街で魔族と戦ってたやつじゃねえかっ!?」
「――ああ……。そうですが」
逡巡しつつも肯定すると、そのおじさんは明らかに瞳を輝かせた。
「やっぱりか! 昨日は魔族共から街を救ってくれてありがとなっ!」
どうやら私達の戦いを目撃していた一人らしい。彼も街に繰り出し魔族と戦ったりしていたのだろうか。
店主はニカッと白い歯を見せて笑った。
思いもよらず感謝された事により、少し照れ臭くなってしまう。
私は何を言うべきか、若干返答に困りつつ、結果黙してこくりと頷き微笑んだ。
「街のピンチを救ってくれたんだ。気に入ったのがあったら多少は負けてやるから好きなの選んでくれよ! そっちのお嬢ちゃんもな!」
「うむ。ありがとう。見させてもらおう」
そう言って後ろで早速店の品々を眺めていたアリーシャにも声を掛けたのだ。
得てして商売とは本来こういうものなのかもしれないと思う。
来店した者の人となりを見つつその者に合った商品を選出していく。
そのためにはやはりコミュニケーションは欠かせないのだ。
まあ私はどちらかと言えばそういった会話は苦手な方であるが。
私は一人で黙々と欲しい物を選ぶ方が落ち着くのだ。
「――店主、ここは良い店だな。防具もしっかりと手入れが行き届いている」
しばらく店の品々を見ていたアリーシャが店の品質に対する称賛を述べる。
それに店主は素直に嬉しそうな表情を見せた。
「おっ! 嬢ちゃん中々見る目があるじゃねえか! いい鎧も装備してるしな! ……て待てよ。良く見ると王国騎士団の鎧じゃねえかっ!?」
流石防具屋の店主といった所か。
鎧を見てアリーシャの身分に気がついたようだ。
「ああ、そうだ」
「道理でっ! ……しかし王国騎士団の団員がこんな所まで出てくるってことはやっぱりヒストリアでの事件調査ってえことなのか?」
この店主が事情通なのか、それとも元々事件の噂がこの街にまで普通に及んでいるのか。
そこまでは分からないが、少なくともこの店主の耳にもヒストリアでの話が届いているらしい。
「――まあそんな所だ。私達が駆けつけた時、丁度魔族と鉢合わせてな」
アリーシャは当たり障りなく会話を進めていく。
途中私に軽く目配せをしてきた。察するに、余り大っぴらにはしたくないという事なのだろう。
しかし思うに、アリーシャはこの国の姫様だというのに、思ったよりも顔が割れていないようだ。
ヒストリア王国では流石にこうもいかないだろうが、姫ともなれば正直もっと有名人かと思っていた。
この世界にはテレビやインターネットというような情報のツールが存在していない。
そうなれば人の認知などは所詮このくらいに止まってしまうのかもしれない。
「そうかそうか。まああんたらがいてくれて助かったぜ! ありがとよ! とにかくゆっくり見ていってくれや!」
こうして幾つかの言葉を交わした後、私達は店内をじっくりと見て回る事にしたのだ。
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小説家になろうにて4年以上連載中の作品です。https://ncode.syosetu.com/n2034ey/続きが気になる方はこちらでも読めますのでどうぞ。ブクマや感想などしていただけるととても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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