私のわがままな異世界転移

とみQ

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間章2 椎名と工藤の腕試し

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 久しぶりに見る椎名は元気そうだ。
 久しぶりとはいってもせいぜい一週間かそこらぶりなのでそんなに時間は経ってるわけじゃない。
 だがそれでも強くなるためにそれなりに濃い時間を過ごしたという気持ちがあるため、そういう感覚にとれわれもするというものだ。
 だが俺はそんな事よりもまず、コイツの服装が気になってしまった。

「おいおい椎名……。てゆーか何でそんなに服破れてんの?」

 数日ぶりに見た椎名は何故か服の手足の部分が破れて、随分と露出の多い格好になっている。
 流石に胴体部分はどうもなってはいないが、生足と生腕の破壊力は十分だ。
 ただでさえそんな格好なのに、俺と椎名との距離は数十センチ程しか離れていないときたもんだ。
 なんでなのか分からないがすごくいい匂いもして、俺はくらくらと立ちくらみそうになった。
 前から思っていたのだが、本当にコイツのパーソナルスペースは近すぎる。
 更に言うと男の目を気にしなさすぎる。
 もうちょっと男というものを意識すべきだ。
 いや、男を意識と言うよりもしかしたら俺が男だと意識されていないだけかもしれない。

「何よえっち。久しぶりに会っていきなりそれ?」

 椎名はやや不服そうに目を逸らす。
 別に露出した部分を隠す素振りもない。
 とはいっても手足くらい見られてもどうということはないのかもしれない。
 これが胸とかお尻とかなら流石の椎名も恥ずかしがるだろうし。
 結局自分が過敏すぎただけなのかもとちょっと考えを改める。
 だけど何でそんな不服そうなのかもよくわからない。
 健全な男子なら女の子の柔肌に気を取られるのは仕方のないことだ。
 それに俺がそう思う椎名はそれだけ魅力的な女の子ってことなのだ。
 それは本来喜ぶべきことであって不満に思うようなことじゃないのではないだろうか。

「……ていうか何か喋りなさいよね……バカ」

「あ……すまん……」

「ふんっ……バカ……」

「……」

「……」

 急に流れる沈黙。
 というかそれは俺が喋べらないせいだと気づく。
 俺は慌てて何か話題を探した。

「あ……ってか急にどうしたんだよ? ……あ、ひょっとしてネストに戻らなきゃなんねー時間か?」

 俺はこの一週間山籠りだと告げて村を離れていた。
 もちろん一人でせっせと修行に励むためだ。
 とは言いつつ何度か腹が減りすぎて、飯(めし)にありつくため帰りもしたが、お陰で時間感覚も少し失ってしまっていたのかもしれない。

「あ~。いやいや、違う違う。何かさ、面白いことないかと思ってさ」

「は? 何だよそれ」
 
 ぽりぽりと頭を掻きつつ、視線は逸らしたまま。
 俺は不思議に思いつつ、椎名の次の言葉を待った。

「い~加減この辺の魔物も相手にならないのよね。だからさっ! 工藤くん、何ならちょっと私と手合わせしてみない?」

 急にパッと表情を明るくし、こちらを振り向く椎名。
 それに俺は不覚にもちょっとだけ可愛いなどと思いつつ、それでもその話の内容に納得しかねる。

「なっ!? んなことできっかよっ! 女の子殴ったりとか最低野郎のやることじゃねーかっ!」 

「大丈夫よ! 私、そんなに簡単にやられないし」

 否定する俺にさらに詰めよってくる椎名。
 ほんのり蒸気した頬が赤みを帯びて、瞳が輝いて見える。
 本当にこういう時の椎名は質が悪い。
 まるでお気に入りのおもちゃでも見つけた子供のように無邪気にずいずいと人の懐に踏み込んでくるのだ。
 彼女のこういう部分は嫌いじゃないけどとにかく俺はこればっかりは嫌だった。

「いや……。と、とにかく嫌だ! 嫌なんだよ! んなこと!」

 俺は駄々っ子のように強く否定した。
 椎名と戦うぐらいなら一日中罵倒されてた方がまだマシだ。
 頑なな俺の様子に流石の椎名も無理だと思ったらしい。
 頬を膨らませ眉根を寄せて不服そうな表情を見せた。

「……ぶ~。……ケチ」

「け、ケチでけっこーだよ! ざけんなってのっ」 

 とは言いつつ若干の罪悪感もあるにはある。
 別に本来は椎名を否定したり、拒絶したりしたいわけじゃないのだ。

「じゃあ代わりに面白いこと用意してよ」

「ど、どんだけ退屈なんだよ!?」

 手合わせを諦めてくれたかと思えば次はこれだ。
 しかもついさっきまでの不服な態度はどこへやら。
 椎名は俺の胸に人差し指を突き付け、再び小悪魔のような笑みを浮かべ、上目遣いで俺を見る。
 クソ……何こいつ……今日ちょっと、ほんのちょっとだけ可愛いんだが……。
 いや、ほんのちょっとだけな!

「だって~! 腕試ししてみたいんだもん! 刺激が欲しいってゆーか? 私、マンネリなの」

 そう言い自分の身体を抱く様子が露出の多いのも手伝って、妙に艶(なまめ)かしく感じる。
 ダメだ……なんつーか今日の俺はちょっと頭がおかしい。
 椎名なんかにこんな感情……ちょっと一回落ち着こう。
 そうは思いつつも、俺は顔に血が昇っていくのを感じてしまう。
 あーくそっ! 
 コイツと話していると、どんどんペースに乗せられるし!
 なんか悪態をついてしまいそうにもなる!
 もちろんそれは心の中で。

「ねえっ! 工藤くんってばっ!」

 再び椎名に呼ばれてそこで俺は我に帰る。
 俺は一体何をぐちぐちと考えているのだろう。

「だ、だからっ! 諦めろっての! 別に何もお前が期待するようなことはね~……」

 そこまで言い掛けて俺はふと思いついたことがあった。

「ことは……ないか」

「え!? うそ? 何かあるの?」

 急に顔を輝かせ、満面の笑みを見せる椎名。
 寄ってくる仕草はまるで子犬みたいで、もしコイツにしっぽがあったらフリフリと激しく動いているだろうと思えた。
 俺子犬好きなんだよな。
 ……じゃねーしっ!
 ……やれやれ。しょうがない。
 俺は観念して小さくため息を漏らしつつ、顎に手をやる。

「そういやこっからちょっと上に行ったとこに祠みてーなのがあるみたいなんだよな」

「は? 上ってどっちよ?」

「あ~。あっちだな」

 俺は自分の後ろの方を指指した。

「……上ってゆーか北東だけど。意味わかんない」

「い、いーんだよ! 俺ん中でこっちが上ってことになってたんだよ!」

 とりあえず俺は、この一週間方向を見失わないように、自分の中でこっちが上、下、右、左と方向を決めていたのだ。
 方角とか、正直よくわかんねーし。どっちに何があるとか認識できればいーわけだし。
 ちなみに下に行けば村に戻れる。
 まあそんなこと決めなくても、途中からは感知の能力の幅が広がったため、村から離れすぎなければ場所はすぐ分かるようになったので、それも関係ないと言えばないが。

「……なんか相変わらずバカっぽいわね……。まあいいわ、行きましょ」

「え? 行くのか!?」

「え? だって工藤くんが言い出したんじゃない。それに祠(ほこら)って面白そうだし」

 椎名はそう言いつつ楽しそうに笑顔を浮かべた。
 それを見た俺はまあいいかという気分になる。

「……まあ、二人なら多少なんかあっても大丈夫か」

「そうよ。私とは戦いたくないんでしょ? じゃあ暇潰しに付き合って」

 確かに椎名とやり合うくらいなら、付き合ってどこかへ行く方が何倍もマシだ。
 それに俺も、多少腕に自信がついた。
 ちょっと刺激が足りなくなってきたのは事実だし、祠の近くに魔物の反応もない。
 そこへ行ってくるくらい、大したことにはならないだろう。

「……わーったよ。しゃーねーな」

「よし決まり! じゃあ行くわよっ!」

「へいへい」

「へいは一回っ!」

 まあ椎名のこういう所も今に始まったことでもねーし。
 いつものノリで、俺は椎名と祠に向かうことにした。
 ……それに、椎名と二人っきりってのも久しぶりだしな。
 息抜きだと思って俺も楽しむことに決めた。
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