私のわがままな異世界転移

とみQ

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第3章 隼人の力、美奈の力

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  村に辿り着くと、そこにグリアモールの姿は未だなかった。
  平穏な空気が流れていることと、穏やかな小鳥のさえずりがそれを物語っている。
  ともすればグリアモールの襲撃を受けて家屋から火の手が上がっていてもおかしくはないとすら思っていたのだ。
  私達の方が早かった?
  その事にふと頭の中に違和感が駆け巡る。 
  私はあの魔族の消える能力は空間を移動するようなものだと思っていた。
  なので一瞬にして村へとテレポートしたのかと思い、急いだのだがどうやら検討違いだったようだ。
  とはいえこれはただの好機でしかない。
  まだ着いていないとなれば、更に状況を有利に出来る可能性を得る。

「あ!?  あなた方は、無事に戻られたのですね!?」

  村の門番の一人が私達に気づいて駆け寄っそのまま私達は村の中へと足を踏み入れる。

「つーかアイツ来てねーじゃねーか!」

「そうね。でも必ず現れるはず。今のうちに美奈の毒をを治しちゃいましょう?」

「うむ、そうだな。それと念のために村の人達を一ヶ所に避難させておくとしよう。工藤、出来ればそれを頼みたい。無駄な犠牲は出ないようにしたいのだ。何かあればすぐに知らせてくれ。地の能力で大きな音でも出してくれればいい」

「ああ、わかってるよ」

  私は門番に事情を説明し、工藤と共に村の人達に声を掛けてもらうよう頼んだ。
  門番は疑う事なく二つ返事で協力してくれるようだ。
  本当に常に思うのだが、この村の人達は素直で親切すぎる。
  外から来た私達の言葉を何故そこまで信用し、言うことを聞き入れてくれるのか。
  それにも私は違和感を覚えていた。今はそれが助かってはいるのだが。
  次に私達はネムルさんの元へと向かった。
  彼は私達を見るなり破顔して帰還を喜んでくれた。

「おおっ、よくぞご無事で戻られましたなっ!」

  ネムルさんは帰還を破顔して喜んでくれた
  私達も彼の笑顔に少しホッとした気持ちになる。
  だがゆっくりしている場合でもない。
  そんな事を考えていた矢先、ネムルさんの方が神妙な表情を作ったのだ。ことりと杖を鳴らし、俯いた。

「実は……あなた方に後でお話があります。――ですが、まずはミナ殿を助けるのが先ですな」

「はい」

  ネムルさんの物言いは引っ掛かるが、今は美奈のいる部屋へと向かう。
  彼女の容態が心配で正直気が気ではない。
  部屋に着くと、美奈は眠っているというよりうなされていると形容した方がしっくりくるような状態だった。
  私達が出発する時よりもさらに息が荒く、汗だくだ。

「美奈!」

  私は彼女に駆け寄り、手を握りしめる。
  掌はねっとりと汗ばんでおり、火でも吹くのではないかというくらい熱かった。
  まだ二日目だというのにこの苦しみよう。
  早く戻って来ることが出来て、本当に良かった。

「はあっ……、はあっ……」

「美奈、かなり苦しそう。早く、薬を!」

「出来ました! どうぞ!」

  メリーさんが丁度、先程渡していたココナの花びらを煎じた薬を持ってきてくれた。仕事が早くて助かる。
  陶器の器に入ったそれは白濁色の液体であった。
  それを受け取った私は美奈の体を支えつつ、体を斜めに起こす。

「隼人……くん?」

  気がついた美奈が弱々しく、掠れた声を上げた。胸が締めつけられる。

「美奈、薬だ。ゆっくり飲むんだ」

  私は手にした薬の容器をゆっくりと彼女の口の中へと注ぎ込む。

「けほっ……けほっ……」

  薬が思ったよりも苦かったのか、喉を通すのが辛いのか、すぐに咳き込む美奈。

「大丈夫だ美奈、焦らなくていい」

  黙って頷き、そこからはこくこくと喉を鳴らしながら少しずつ、少しずつ飲み込んでいく。
  ゆっくりと時間を掛けて全てを飲み干した頃、荒い息づかいは落ち着き、最後には穏やかな表情で目を閉じていた。

「……すう」

「また眠ったみたいね」

「……ああ、本当に良かった」

  安堵したのか、美奈は再び眠りについたようだ。
  安らかな寝息を立てて、呼吸も落ちついた。これでもう大丈夫だろう。

「……良かったのだ。美奈を――救えて」

「うん。本当に良かった」

  胸に熱いものが込み上げてきた。椎名の手が肩にぽんと乗せられて、彼女の声も若干震えていた。
  美奈の手からは確かな温もりが伝わり、緊張の糸が切れそうになってしまう。

『ドガァンッ!!!!』

「――っ!!」

  外で岩が物にぶつかる音が響き、ネムルさんが顔を上げる。

「今の音は……」

  ようやくその時が来たのだ。
  感傷に浸っている暇はない。

「椎名、美奈の事は頼んだのだ」

「うん。すぐに二人で駆けつけるから」

  私達は互いに目配せするとパチンッと手を合わせた。
  彼女の瞳からは一筋涙が零れていたが、それは言わないでおく。
  私は顔を上げ、前を向く。
  二人をその場に残したまま、私は扉を開き外へと駆けていったのだ。
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