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よし、交尾しよ♡(1)

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  エマがノエルの屋敷を再び訪れたのは、夜空に満月が浮かび上がり森のフクロウが静かに歓迎してくれる時間帯、相談を受けたその日の夜だった。


「エマ……あの……僕はうさぎをって言ったつもりだったんだけど…」

「うんっ、うさぎだよ?」


 エマはぴょんっとその場で跳ねてから、くるりと一周してみせる。

 蜂蜜色の長いふわふわとした髪には、黒いレースでできたうさ耳のカチューシャ。

 華奢な身体を覆う衣装は、黒くて艶のある生地が肌にぴったりと張り付いて、上半身は胸元しか隠れいていない。それもむっちりとした谷間を見せつけるようにハート形にくり抜かれており、下半身は下着が隠れるぎりぎりの長さのスカートだ。平均より少し小さい身長を盛るための高いヒールに踊らされれば、お尻の付け根に飾られた長い尻尾のハート形の先端が跳ねるように揺れる。最後にマスカット色の瞳でウインクをすれば完璧。


「はいどーぞ♡ どこからでもかぶりついて♡」

「いやあの、か、かぶりつきません。僕は森のうさぎの血を……って大体どうしたのこの格好」


 ノエルがそんなに脚とお腹を出していたら風邪引くよと、いそいそエマの腰にタオルを巻きつける。


「ちょっと前に街のヴァンパイアコンカフェでバイト始めたって言ったじゃん? お店の制服なんだよね~可愛くない? あ、この耳は来週やるバニーイベントでつけるやつ。ヴァンパイアバニー♡」

「待って、情報量が多い……そもそもその格好はヴァンパイアというよりサキュバスでは……?」

 ノエルが頭を抱えてううんと唸る。どうやら混乱しているようだ。

「ヴァンパイアカフェっていうからてっきり白いシャツに黒いマントで露出なしだと思っていたけどまさかこんな……こんな……」

「まあまあ、細かいことはいーじゃん? 頸動脈からいかないの? 見ちゃうと怖いなら目瞑ってしてもいーよ?」


 首筋を差し出すエマにノエルは手のひらを見せて制止する。


「人間の血は怖くて吸えないよ……それにエマは僕の大切な幼馴染だし」

「あたしはノエルが大好きだよ? 好きな人がヴァンパイアで、困ってるなら助けたいもん」

「ありがとう、エマは優しいね」


 だめだ。なんか伝わってるけど伝わってない気がする。


「よし、ノエル交尾しよ♡」

「……え?」

「ノエルもあたしのこと好きでしょ? だからうさぎとヴァンパイアで交尾しよ♡」

「こ、こう、!? へ、あ、な、なな、なんで急に!?」

「急じゃないよ~昨日のノエルのお兄さんの話聞いて思ったんだよねーなんでベッド?って。カフェのお客さんが前に言ってたの思い出したの。ヴァンパイアが乙女をベッドで食べるのは血だけじゃなくて他の体液からも栄養を摂取するためなんだって。本当か分かんないけど、お試しすればよくない?♡」


 エマが谷間のハートの部分を引っ張ってちらりと強調する。見えそうで見えない、案外そういうのが好きらしいノエルは真っ赤になって目をそらすもそろりとまた視線を戻す。


「だ、だめだよ、そういうの好きな人とじゃなきゃ……」

「好きだよ?」

「お、幼なじみとしての好きじゃなくて、恋人になりたいとか……そういう好きな人とすることだと思うんだ」

「うん? あたしはノエルとキスしたりエッチしたりしたいって思う好きだよ?」


 エマが当然、と言わんばかりの表情で首をかしげてノエルにぎゅっと抱きついた。

 さあ、このまま首筋にがぶっときてくれてもいいし、ロマンチックにキスしてくれてもいい。きっと、ノエルも全部はじめてだから優しく、ゆっくり進めていきたい。急に舌入れたり、がっつくようなことはしないからね……♡

 にこっと微笑んだエマからノエルが気まずそうに目をそらす。


「……ご、ごめんエマ……僕、好きな女性がいて……」

「は? なにそれ聞いてないんだけど? てか聞こえなーい♡」


 ぴょーんと跳ねたエマはそのままノエルを床に押し倒してキスをした。


「んっ!? むっ……え、ま……」


 たぶん、ノエルのファーストキスだ。てか、そうじゃなきゃ許さない。

夢にまでみたノエルの唇は想像していたよりずっと冷たくて気持ちいい。その奥で固く縮こまった舌も少し裏側をくすぐっただけで逃げ場をなくしてされるがままになってくれる。

 それに、やはり体力が落ちているのか、ノエルの腰にまたがって少し押さえつけただけでほとんど抵抗をやめてしまった。

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