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SIDE ジョフリー2
4. 叔父と甥の会話4
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エリサの要望で、森の入り口まで魔物を見に連れていった。
もうここまできたら、辺境の実態を見せて、その後どうするかエリサに選ばせたほうがいい。
そこでエリサは、傭兵に魔女と呼びかけられても気軽に応じて、魔法陣を披露した。
傭兵は、金銭で戦闘力を提供する者だ。つまり、金銭で簡単に寝返る。だから、あまり信用されていないし、中にはスパイもいるから、傭兵とは距離を置く者も多い。ただこの領は傭兵に助けられているので、家臣たちにはなるべく波風を立てないように言ってある。
そんな中、エリサは相手が傭兵と知りながらも、特に身構えることなく話しかけ、要望に応えて魔法陣を書いた。そのことはあっという間にうわさとして広がるだろう。
魔女とは、怪しげな術を使う女のことだが、魔物のような女という意味でつかわれることもある。アニエスは、後者の意味でうわさを広げたかったのだろう。
だが、エリサが城下で子どもたちに小さな照明弾を披露したことで、うわさは落ち着きつつある。今回のことで、さらに下火になるだろう。それを狙って許可を出した。ただ、魔女という呼び方だけは残ってしまいそうだが。
「森では問題なかったか?」
「はい。たくさんの護衛をありがとうございました」
「嬢ちゃんを近くで見たいという奴らが立候補したんだよ」
襲撃の際の指揮に加え、魔法陣の供給、さらに魔女のうわさで、実物を見たいという兵が続出したらしい。
「森では、魔女と呼びかけられて、魔女を怒らせると魔法陣を渡さないと返事していましたよ」
「あのうわさには怒っていないのか?」
「呼び方は気に入っていますね。侮蔑の意味でも使われることを知らないようです。それよりも、魔法陣のことが外に漏れたことに怒っていました。機密管理がなっていないことが許せないようです。クレッソン男爵家は商会ですから、そのあたりは厳しいでしょう」
「アニエスに任せっぱなしで、私が城内のことに気を配らなかったからだな」
「仕方ありませんよ」
とはいえ、エリサの能力が城外へ漏れたのは、不味い。王宮や隣国のスパイの目を引いてしまう。王都に帰っても、エリサの身辺には気をつけなければならない。
そして、その原因を作ったアニエスを許すことはできない。動機がただ娘のクロエを日の当たる場所にいさせるためだとしても、やったことは辺境への裏切りだ。もう少し賢いと思っていたが、子どものためとなると、道を誤るのだろうか。
「ダンカンからアニエスとの離縁の申し出があった。離縁はともかく、城からは出す」
「そうですか。エリサが王都にいる間はどうするのですか?」
「クロエに任せる。クロエは反省して、心を入れ替えるらしい」
「ピエール、そうなのか?」
「魔物襲撃の際、的確に指示を出すエリサ様を見て、敵わないと悟ったそうです」
権力には責任が伴う。
あの襲撃で魔物が城に押し掛け、被害が出たなら、エリサが責められることになった。クロエはその責任を負うことまでは考えていなかったのだろう。
「エリサは、クロエに同情的ですよ。辺境伯家の犠牲になったのだと」
「犠牲、か」
「ええ。ピエールが王都にいるのに自分は危険のある辺境に残され、さらに王都から来た小娘に仕事を取られたら、八つ当たりしたくもなると言っていました」
「嬢ちゃんが優しくて助かったな、ピエール」
どうだろうか。優しさではなく、他の適任者を探すのが面倒なだけのような気もする。
エリサについて知れば知るほど、エリサは貴族令嬢ではなく、商人だと思う。感情ではなく、自分に利があるかないかで判断していると感じる。
「で、嬢ちゃんは辺境にいてくれそうなのか?」
「はい」
「魔物を見てもまだ揺らがないとは、肝が据わってるな」
「想像していたよりも普通だったそうです」
正直何を想像していたのかまったく分からないが、無理しているわけでもなかった。
エリサが辺境にいて、魔法陣を安定的に供給してくれれば、この魔物の増加も乗り切れるだろう。
「叔父上、ここ十年の討伐報酬の記録を見せてください」
「構わんが、不正はないぞ? そこは一番厳しく見張っている」
「魔物がどれくらい増えているのか、討伐報酬から分かるのではないかと、エリサが」
「あの嬢ちゃん、いったい何者だ?」
今回の訪問で、実際にジョフリーも魔物の増加を実感しており、そこにさらに討伐報酬の増加を数字として見せれば、国も信じざるを得ないだろう。
「王都の兄上にも毎年送っているから、領の管理するものはそちらで調べてくれ。こっちは傭兵に何かそういう変化が分かるものがないか聞いてみる」
「お願いします」
辺境が魔物の跋扈する地となってしまえば、穀倉地帯である隣の領に影響が出る。それは国として避けたい事態なので、場合によっては騎士団が動くことになるかもしれない。
どこまで辺境で対応できて、どこから国に助けを求めるのか、冷静に見極めなければならない。
もうここまできたら、辺境の実態を見せて、その後どうするかエリサに選ばせたほうがいい。
そこでエリサは、傭兵に魔女と呼びかけられても気軽に応じて、魔法陣を披露した。
傭兵は、金銭で戦闘力を提供する者だ。つまり、金銭で簡単に寝返る。だから、あまり信用されていないし、中にはスパイもいるから、傭兵とは距離を置く者も多い。ただこの領は傭兵に助けられているので、家臣たちにはなるべく波風を立てないように言ってある。
そんな中、エリサは相手が傭兵と知りながらも、特に身構えることなく話しかけ、要望に応えて魔法陣を書いた。そのことはあっという間にうわさとして広がるだろう。
魔女とは、怪しげな術を使う女のことだが、魔物のような女という意味でつかわれることもある。アニエスは、後者の意味でうわさを広げたかったのだろう。
だが、エリサが城下で子どもたちに小さな照明弾を披露したことで、うわさは落ち着きつつある。今回のことで、さらに下火になるだろう。それを狙って許可を出した。ただ、魔女という呼び方だけは残ってしまいそうだが。
「森では問題なかったか?」
「はい。たくさんの護衛をありがとうございました」
「嬢ちゃんを近くで見たいという奴らが立候補したんだよ」
襲撃の際の指揮に加え、魔法陣の供給、さらに魔女のうわさで、実物を見たいという兵が続出したらしい。
「森では、魔女と呼びかけられて、魔女を怒らせると魔法陣を渡さないと返事していましたよ」
「あのうわさには怒っていないのか?」
「呼び方は気に入っていますね。侮蔑の意味でも使われることを知らないようです。それよりも、魔法陣のことが外に漏れたことに怒っていました。機密管理がなっていないことが許せないようです。クレッソン男爵家は商会ですから、そのあたりは厳しいでしょう」
「アニエスに任せっぱなしで、私が城内のことに気を配らなかったからだな」
「仕方ありませんよ」
とはいえ、エリサの能力が城外へ漏れたのは、不味い。王宮や隣国のスパイの目を引いてしまう。王都に帰っても、エリサの身辺には気をつけなければならない。
そして、その原因を作ったアニエスを許すことはできない。動機がただ娘のクロエを日の当たる場所にいさせるためだとしても、やったことは辺境への裏切りだ。もう少し賢いと思っていたが、子どものためとなると、道を誤るのだろうか。
「ダンカンからアニエスとの離縁の申し出があった。離縁はともかく、城からは出す」
「そうですか。エリサが王都にいる間はどうするのですか?」
「クロエに任せる。クロエは反省して、心を入れ替えるらしい」
「ピエール、そうなのか?」
「魔物襲撃の際、的確に指示を出すエリサ様を見て、敵わないと悟ったそうです」
権力には責任が伴う。
あの襲撃で魔物が城に押し掛け、被害が出たなら、エリサが責められることになった。クロエはその責任を負うことまでは考えていなかったのだろう。
「エリサは、クロエに同情的ですよ。辺境伯家の犠牲になったのだと」
「犠牲、か」
「ええ。ピエールが王都にいるのに自分は危険のある辺境に残され、さらに王都から来た小娘に仕事を取られたら、八つ当たりしたくもなると言っていました」
「嬢ちゃんが優しくて助かったな、ピエール」
どうだろうか。優しさではなく、他の適任者を探すのが面倒なだけのような気もする。
エリサについて知れば知るほど、エリサは貴族令嬢ではなく、商人だと思う。感情ではなく、自分に利があるかないかで判断していると感じる。
「で、嬢ちゃんは辺境にいてくれそうなのか?」
「はい」
「魔物を見てもまだ揺らがないとは、肝が据わってるな」
「想像していたよりも普通だったそうです」
正直何を想像していたのかまったく分からないが、無理しているわけでもなかった。
エリサが辺境にいて、魔法陣を安定的に供給してくれれば、この魔物の増加も乗り切れるだろう。
「叔父上、ここ十年の討伐報酬の記録を見せてください」
「構わんが、不正はないぞ? そこは一番厳しく見張っている」
「魔物がどれくらい増えているのか、討伐報酬から分かるのではないかと、エリサが」
「あの嬢ちゃん、いったい何者だ?」
今回の訪問で、実際にジョフリーも魔物の増加を実感しており、そこにさらに討伐報酬の増加を数字として見せれば、国も信じざるを得ないだろう。
「王都の兄上にも毎年送っているから、領の管理するものはそちらで調べてくれ。こっちは傭兵に何かそういう変化が分かるものがないか聞いてみる」
「お願いします」
辺境が魔物の跋扈する地となってしまえば、穀倉地帯である隣の領に影響が出る。それは国として避けたい事態なので、場合によっては騎士団が動くことになるかもしれない。
どこまで辺境で対応できて、どこから国に助けを求めるのか、冷静に見極めなければならない。
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