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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁24:想定外の助っ人とは 2
しおりを挟む「あんたは知っている筈だ。いや、薄々勘付いていた、か?」
周囲に転がっていた沢山の飛ぶ目達の亡骸が、ポン!という白煙を伴う小さな破裂と共に跡形も無く消えた。
「ここでの戦闘は終了みたいだな。…お、見ろよ。ドロップアイテムだろコレ」
私には目もくれずに辺りにいくつか残された何かを調べる『彼』。背を向けてはいるが意識は間違いなくこちらに向いている。
縮小地図に頼っている訳ではなく感覚で、だ。
「『彼』は…どうなったの?」
「まだ気絶してる」
親指でこめかみをトンと指し、反対の手で落ちている物を摘まみ上げては何かを調べる様に眺め、虚空に開けた穴に放り込んでいく。
背筋がチリチリする。私は意識を集中し───
「やめておけ。いや、やって実際に確かめてもらっても構わないが、【力】ならほぼ使えない」
「…何?」
ならばと遠慮無く精神支配の弾丸を点火する。が、撃ち込めた手応えが全くなかった。
そもそも撃てた感覚もほぼ感じない。
「どういう訳だか、俺達のトンデモ能力が極端に制限されているらしい。再生能力もその影響を受けている」
確かに、頬の傷がようやく完治したらしく手の甲の血も消えてはいるが、あの空間で計測した時間に比べると極端に時間がかかっている。
「私の精神に何かしようとしていたのは『お前』の方か」
「御明察。あんたがコイツを操った一部始終を見させてもらっていたからな。俺も同じ様に実験させてもらった。精神を操るまでは不可能だったが、極短時間の記憶を弄る程度は出来るみたいだな。その証拠に、あんたは何回も俺という可能性に気付きかけていたのに今まで忘れていたろう?」
迂闊…。神々廻さんの記憶を消去すればいいだけだと思っていたが、まさか脳内にもう一人いたとは。
「何故私を助けた? 恐らく『彼』とは違って『あなた』はそういうキャラじゃないでしょう。私を暴力で支配して傀儡にしようと『彼』を唆したのだって…」
「そう、俺の入れ知恵だ」
拾う物が無くなり、立ち上がってこちらに振り返る。
「俺が何なのかはコイツがいつか話すだろうから俺からは何も言わない。だが変な誤解をされても面倒だからこれだけは言っておくが、俺達は悪党じゃない。単に正しいだけの存在が嫌いってだけだ」
「それを信じろと?」
「…あんたにした事はコイツが謝るって言ったんだろ。なら俺は謝らない。俺は俺が楽しめる様に勝手にするだけだ」
言うだけ言うと洞窟の奥へ向かって一人で歩き出す。
「ちょ…、待ちなさい!」
慌てて後を追う。しかし一定の距離は保ったままで。
「手の内を明かした以上、あんたに同じ手は通用しないだろうから安心しろ。記憶を弄ろうとすると煩いんだ、馬鹿が」
警戒する私に掌だけ向けてひらひら振ると『彼』は吐き捨てた。
「それにあんたにこれ以上怪我させたら後で面倒だ。コイツ、案外根に持つ性格なんでな」
「……」
何て返したらいいのか言葉が浮かばなかった。
取り合えず私は無言でその背中を追った。
(次頁/24-3へ続く)
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