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記憶の断片
獣耳、都市を知る。
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一方その頃…
「シェラさんが消えた?!」
目の前を走って行った少女が「カチッ」と言う何かを踏んだ音と共に姿が消えた。
「シェラちゃん!?」
メイリーンが驚いた表情で追いかけようとする。
「おびゃっふ!?」
しかし、直後に「ドゴォ!」と破壊音と共に衝撃がメイリーンの身体を吹き飛ばす。
「か、壁から出て来た?!」
それは破砕する大鎌と呼ばれるオリハルコンの鎌、鉄鋼よりも硬い外骨格に覆われた大きな赤いカマキリのようなAランクモンスターだ。
その大きさは見上げるほどに大きく、鋭い鎌は周囲100mを瞬時に斬り裂くと言われている。
「帰社アアアアアアアアアア!」
破砕する大鎌がその鎌を振り上げて威嚇する。
『あれ?なんか違うくね?それは社畜じゃね?』
シャタルアさんがなんか言ってるけど、それどころじゃないや。
「いたた…なんなのよぉもう!」
メイリーンは頭についた埃を払いながら立ち上がる。
破砕する大鎌がメイリーンの声を聞いて、そちらに飛びかかる。
「メイリーンさん!」
カリヤが駆け出そうとし、メイリーンが防御の姿勢を取ろうとした瞬間だった。
「撃ち抜け」
破砕する大鎌の真上に影が飛んで、真上から7発の弾丸が破砕する大鎌を貫く。
弾丸は綺麗に全ての足と頭を撃ち抜いていた。
そして、倒れて動かなくなった破砕する大鎌の上に青く長い髪の黄色い瞳のヒトが降り立つ。
『カリヤ、大丈夫かのう?』
シャタルアは間の抜けた声で言う。
(うん。知らないヒトが助けてくれた。多分…)
ヒトがボクの方を向く。
「おや?」
ヒトがボクの顔を見ながら、破砕する大鎌から飛び降りて言う。
「君、名前は?」
声を聴いた感じは女性的な声だとボクは思う。
「人に名を聞くなら、まずは自分から名乗るのが礼儀じゃろ。」
シャタルアがボクの目の前に現れる。
「…ッ!魔王シャタルア…!?」
ヒトが聖なる力を持った剣を構える。
「君は危ないから、すぐに逃げるんだ!」
「待って!大丈夫だから!」
ボクが叫ぶとヒトが驚いた顔をして言う。
「大丈夫なものか!魔王は普通の魔族と違って…凶暴…な…ん……だ………よ…………」
困惑した様子で言って、ヒトは不思議そうにシャタルアを見る。
「…あれ?魔王は凶暴…なんだよな?まさか魔王シャタルアじゃない…事はないし…どうなってんだ?」
シャタルアは「ふわぁ…」と呑気にあくびをしながら言う。
「お主は勘違いし過ぎじゃ。他の魔王どもも領土に侵攻して来なければ攻撃もせんじゃろ。それに我の契約者はこやつじゃし、我は領土を持たないから、別にヒトに攻撃する理由は無いのじゃ。こやつが無事である限りはな。」
シャタルアはボクを指さしながら言う。
「君が…魔王の契約者…?」
ボクは小さく頷いて肯定する。
「そうか…」
ヒトは剣を納めると言う。
「先程はすまなかった。私はルザリア。グランヴェルザの勇者と言えばわかるかな?」
ルザリアはそう言うとボクを見る。
「ふぅ…やっと出られた…あれ?グランヴェルザの勇者様がなんでここにいらっしゃるのですぅ?」
今まで破砕する大鎌の死体に埋もれていたメイリーンがやって来て言う。
ルザリアは驚いた様子で振り返る。
「グランヴェルザって何?」
「「「えっ?」」」
ボクが言うとシャタルア含めた3人がボクの方を驚いた表情で見る。
「えっと…君はグランヴェルザを知らないのかい?」
「ハッ」と我に返ったルザリアがボクの顔を見て言う。
「うん。知らない。」
ボクがそう言うとルザリアは不思議な紋章のある右手で頭を搔いて言う。
「そう…だったのか…困ったな…グランヴェルザを知らないヒトがいたなんて…」
困った表情のルザリアを放置して、メイリーンがボクの前まで来て言う。
「カリヤちゃん、グランヴェルザは人間界で一番強い人たちが集まる冒険者都市なのよぉ。冒険者の最終到達点とも言われてて、自力で辿り着くのも困難な場所にあって、その地に住んでるだけでもAクラスになれるくらいには過酷な場所なのよぉ。」
グランヴェルザは正式には世界冒険者連合都市と呼ばれる特殊な都市であり、世界中から強さを極めた者たちが、さらなる強さを求めてやってくるとされている。
グランヴェルザの周辺は最高クラスのダンジョンと最高クラスの危険度のエリアしかなく、さらに東側には人間界とは段違いで危険な魔界もあると言うとんでもない場所なのだ。
その為、人間界と魔界を繋ぐ都市とも呼ばれている場所なのだと言う。
そこは魔族もヒトも平等に暮らしている人間界では唯一の場所でもあるそうだ。
ただし、魔王は例外だったが…
「そして、魔界で王として君臨するのが魔王なんだ。私たちの間では、魔族は力が強ければ強いほど凶暴で武力行使が多いとされていて、その最上位が魔王なんだ。しかも、君の目の前にいるのは、私たちの間でも千幻万化の魔王と名高い魔王のシャタルアは私たちの中でも太刀打ち出来る相手は居ないと言われているレベルなんだ。」
ルザリアがそう説明するとシャタルアが補足するように言う。
「基本的に魔族は実力主義じゃからのう…そのせいで、衣服もロクに着ておらぬ奴らが多いな。我はシェテラエンデに育ててもらったから、例外なのじゃが。」
「ふ~ん…?」
ボクにとっては結構どうでも良かった。
だって、シェラさんって言う凄い人を知ってるからね。
『相手が誰だろうと大賢者と比べるとさすがに見劣りするのは当然じゃ!あやつはなんでも出来るバケモンじゃからな。』
凄い言いようだ…
ボクは普通を知らないけど、今でも有名な人だもんね。
「ふ~んって…興味無さそうだね。」
ルザリアが呆れた様子で言う。
「ま、こやつの普通はシェ…いや、なんでもない。」
シャタルアが思い出したかのように止める。
『あっぶねぇ…もう少しでシェテラエンデの名前を出すところだったのじゃ…またドジっ子呼ばわりされるところじゃった…』
ボクはもう何も言わない事にした。
「あはは!カリヤちゃんは事情が特別ですからねぇ。無理もない話ですぅ。」
メイリーンはとても楽しそうに言う。
「ふむ…では、勇者についても知らないのか?」
ルザリアがボクの顔を見て言う。
「シェラさんが寝言でなんか言ってたような気がするけど…」
なんとなく勇者は何かを倒してたみたいな事言ってたと思う。
「ま、簡単に言えば、魔王を殺す力を持った人間の事じゃな。」
シャタルアは笑ってそう言うとボクの頭の中に直接語る。
『実際には聖痕が現れた者にのみなれるとか、いろいろ条件はあるのじゃがな…それに魔王って言うよりは理に潜む悪性の獣に対して死の概念を付与出来るもののことじゃ。理に潜む悪性の獣はビーストと呼ばれる世界を終わらせるモノが5つの言葉を背負って現れるのじゃ。ちなみにじゃが、シェテラエンデは現れたビーストを理を破壊するオリジナル魔法で破壊したのじゃよ。あのチート大賢者は敵になるとバケモノ過ぎてヤバいのじゃ。勇者の力が無いと傷をつけることすらままならない相手でも魔法を駆使して完膚なきまでに破壊して殺害するのじゃから、文字通りに人の姿をしたバケモノなのじゃ。』
この時に現れたのは繁栄、祝福、希望、創造、知恵の5体で、それぞれが理として、それを否定する存在となっていたそうだ。
シェテラエンデはそんな5体を目の前にしても、決して怖気付いたりしなかったそう。
むしろ、興味津々で「あにあれ!おもしろーい!研究対象が湧いてきた!やったー!」って大喜びしてたらしい。
うん。変人どころじゃないよね。
でも、そのおかげで勇者とシェテラエンデにしか使えない理を破壊する魔法でのみビーストを倒せる事がわかったそう。
そして、シェテラエンデはビーストが現れた時に覚醒する武具を5つも作成したんだって。
その5つと言うのが、聖剣の「約束された勝利:エクスカリバー」、聖盾の「絶対なる守護:ヘイラムーン」、魔杖の「冥府の権威:ヘルヘイム」、大鎌の「死神の弾丸:ハーディン」、身体の「戦神の洗礼:ヤマトクニヌシ」の5つなんだ。
「…ん?よく考えたら、身体ってどうやって作るんだろ…聞いてみようかな…」
ボクは聞きたい事を覚えておく。
「そして、私が持ってるこの聖剣こそが勇者に代々伝わるエクスカリバーなのだよ!」
ルザリアはドヤ顔で胸を張って言う。
それによって、ルザリアの筋肉質な体格が強調される。
『あやつ、女っぽい声なのに男じゃったか。まあ、我には関係無いな。』
シャタルアさん…今、そこに突っ込むんだね…
『いやぁ…我ら魔族にとってはどうでも良い事じゃが、気になる奴らがおるじゃろ?読者のお前たちとかなっ!』
…読者?
『所謂、メタ発言じゃな。』
…メタ発言?
ボクが首を傾げているとシャタルアがニヤリと笑う。
「ところで、獣人の素敵なお姉さん、貴方のお名前は?」
ルザリアがメイリーンの目の前で片膝を着いて問う。
「私はメイリーンで~す。豪傑の女鬼と言えば、わかりますかねぇ?」
「なんとっ!あのグランヴェルザの伝説に名を連ねる豪傑の女鬼さんでしたか!」
ルザリアが目を輝かせて言う。
「あれ?私、伝説になってるんですかぁ?…それってどんな伝説か、聞いてもいい?」
メイリーンはふわふわっとした雰囲気から、突然真剣な表情をする。
その急変っぷりにルザリアがほんの少しだけ戸惑いを見せて言う。
「まずはAランク龍種モンスターのブレイズドランの群れをソロで壊滅させたとか…」
「それは…事実ね。」
「魔王グレガリオンと素手で互角に殺りあったとか…」
「全て事実ね…」
「Aランクでもトップクラスの強さのゴブリン亜種のグランドオーガを一撃で木っ端微塵にするとか…」
「木っ端微塵以外は事実ね…」
「あ、敵対国家のディアオルディス帝国を一夜で滅亡させたとか…」
「やられたら、やり返す、完膚なきまでに。」
「今も生きてるとされる五大神官のグレイス様と殺りあったとか…」
「いや、それはやってないわね。」
「なんなら、互角以上に渡り合ったとさえされてますよ。」
「めちゃくちゃ盛られてるじゃない!さすがの私もそこまで狂った事はしないわよ?!明らかにおかしいじゃない!」
ルザリアの言った噂にメイリーンがツッコミを入れる。
「大賢者様に耳が壊れるまで聞かせてやりたい言葉じゃ…」
シャタルアが遠くを見るような目をして言う。
『シェテラエンデは誰がなんと言おうとやってみなくちゃわからないじゃない!なんて言って、やっちゃう天邪鬼もドン引きの究極の異常者じゃったからな。邪神王のラヴァナ・オリジア=リバルスが現界に侵攻した時も神以外は傷つけることすら出来ないと知っていたにも関わらず、研究対象としてしか見てないわ、撃破するつもりで挑むわ、挙句には戦いの中で神壊魔法なんて開発してラヴァナ・オリジア=リバルスを撃破するわってやりたい放題じゃからな。』
うん。やっぱり、おかしい人だ。
そして、何もかもが規格外な天才だね。
『…その通りじゃな。アレが正常で無かったからこそ、世界は変わったのかもしれん。』
なんとなく察した様子でメイリーンが見ていた事には触れないでおこう。
「シェラさんが消えた?!」
目の前を走って行った少女が「カチッ」と言う何かを踏んだ音と共に姿が消えた。
「シェラちゃん!?」
メイリーンが驚いた表情で追いかけようとする。
「おびゃっふ!?」
しかし、直後に「ドゴォ!」と破壊音と共に衝撃がメイリーンの身体を吹き飛ばす。
「か、壁から出て来た?!」
それは破砕する大鎌と呼ばれるオリハルコンの鎌、鉄鋼よりも硬い外骨格に覆われた大きな赤いカマキリのようなAランクモンスターだ。
その大きさは見上げるほどに大きく、鋭い鎌は周囲100mを瞬時に斬り裂くと言われている。
「帰社アアアアアアアアアア!」
破砕する大鎌がその鎌を振り上げて威嚇する。
『あれ?なんか違うくね?それは社畜じゃね?』
シャタルアさんがなんか言ってるけど、それどころじゃないや。
「いたた…なんなのよぉもう!」
メイリーンは頭についた埃を払いながら立ち上がる。
破砕する大鎌がメイリーンの声を聞いて、そちらに飛びかかる。
「メイリーンさん!」
カリヤが駆け出そうとし、メイリーンが防御の姿勢を取ろうとした瞬間だった。
「撃ち抜け」
破砕する大鎌の真上に影が飛んで、真上から7発の弾丸が破砕する大鎌を貫く。
弾丸は綺麗に全ての足と頭を撃ち抜いていた。
そして、倒れて動かなくなった破砕する大鎌の上に青く長い髪の黄色い瞳のヒトが降り立つ。
『カリヤ、大丈夫かのう?』
シャタルアは間の抜けた声で言う。
(うん。知らないヒトが助けてくれた。多分…)
ヒトがボクの方を向く。
「おや?」
ヒトがボクの顔を見ながら、破砕する大鎌から飛び降りて言う。
「君、名前は?」
声を聴いた感じは女性的な声だとボクは思う。
「人に名を聞くなら、まずは自分から名乗るのが礼儀じゃろ。」
シャタルアがボクの目の前に現れる。
「…ッ!魔王シャタルア…!?」
ヒトが聖なる力を持った剣を構える。
「君は危ないから、すぐに逃げるんだ!」
「待って!大丈夫だから!」
ボクが叫ぶとヒトが驚いた顔をして言う。
「大丈夫なものか!魔王は普通の魔族と違って…凶暴…な…ん……だ………よ…………」
困惑した様子で言って、ヒトは不思議そうにシャタルアを見る。
「…あれ?魔王は凶暴…なんだよな?まさか魔王シャタルアじゃない…事はないし…どうなってんだ?」
シャタルアは「ふわぁ…」と呑気にあくびをしながら言う。
「お主は勘違いし過ぎじゃ。他の魔王どもも領土に侵攻して来なければ攻撃もせんじゃろ。それに我の契約者はこやつじゃし、我は領土を持たないから、別にヒトに攻撃する理由は無いのじゃ。こやつが無事である限りはな。」
シャタルアはボクを指さしながら言う。
「君が…魔王の契約者…?」
ボクは小さく頷いて肯定する。
「そうか…」
ヒトは剣を納めると言う。
「先程はすまなかった。私はルザリア。グランヴェルザの勇者と言えばわかるかな?」
ルザリアはそう言うとボクを見る。
「ふぅ…やっと出られた…あれ?グランヴェルザの勇者様がなんでここにいらっしゃるのですぅ?」
今まで破砕する大鎌の死体に埋もれていたメイリーンがやって来て言う。
ルザリアは驚いた様子で振り返る。
「グランヴェルザって何?」
「「「えっ?」」」
ボクが言うとシャタルア含めた3人がボクの方を驚いた表情で見る。
「えっと…君はグランヴェルザを知らないのかい?」
「ハッ」と我に返ったルザリアがボクの顔を見て言う。
「うん。知らない。」
ボクがそう言うとルザリアは不思議な紋章のある右手で頭を搔いて言う。
「そう…だったのか…困ったな…グランヴェルザを知らないヒトがいたなんて…」
困った表情のルザリアを放置して、メイリーンがボクの前まで来て言う。
「カリヤちゃん、グランヴェルザは人間界で一番強い人たちが集まる冒険者都市なのよぉ。冒険者の最終到達点とも言われてて、自力で辿り着くのも困難な場所にあって、その地に住んでるだけでもAクラスになれるくらいには過酷な場所なのよぉ。」
グランヴェルザは正式には世界冒険者連合都市と呼ばれる特殊な都市であり、世界中から強さを極めた者たちが、さらなる強さを求めてやってくるとされている。
グランヴェルザの周辺は最高クラスのダンジョンと最高クラスの危険度のエリアしかなく、さらに東側には人間界とは段違いで危険な魔界もあると言うとんでもない場所なのだ。
その為、人間界と魔界を繋ぐ都市とも呼ばれている場所なのだと言う。
そこは魔族もヒトも平等に暮らしている人間界では唯一の場所でもあるそうだ。
ただし、魔王は例外だったが…
「そして、魔界で王として君臨するのが魔王なんだ。私たちの間では、魔族は力が強ければ強いほど凶暴で武力行使が多いとされていて、その最上位が魔王なんだ。しかも、君の目の前にいるのは、私たちの間でも千幻万化の魔王と名高い魔王のシャタルアは私たちの中でも太刀打ち出来る相手は居ないと言われているレベルなんだ。」
ルザリアがそう説明するとシャタルアが補足するように言う。
「基本的に魔族は実力主義じゃからのう…そのせいで、衣服もロクに着ておらぬ奴らが多いな。我はシェテラエンデに育ててもらったから、例外なのじゃが。」
「ふ~ん…?」
ボクにとっては結構どうでも良かった。
だって、シェラさんって言う凄い人を知ってるからね。
『相手が誰だろうと大賢者と比べるとさすがに見劣りするのは当然じゃ!あやつはなんでも出来るバケモンじゃからな。』
凄い言いようだ…
ボクは普通を知らないけど、今でも有名な人だもんね。
「ふ~んって…興味無さそうだね。」
ルザリアが呆れた様子で言う。
「ま、こやつの普通はシェ…いや、なんでもない。」
シャタルアが思い出したかのように止める。
『あっぶねぇ…もう少しでシェテラエンデの名前を出すところだったのじゃ…またドジっ子呼ばわりされるところじゃった…』
ボクはもう何も言わない事にした。
「あはは!カリヤちゃんは事情が特別ですからねぇ。無理もない話ですぅ。」
メイリーンはとても楽しそうに言う。
「ふむ…では、勇者についても知らないのか?」
ルザリアがボクの顔を見て言う。
「シェラさんが寝言でなんか言ってたような気がするけど…」
なんとなく勇者は何かを倒してたみたいな事言ってたと思う。
「ま、簡単に言えば、魔王を殺す力を持った人間の事じゃな。」
シャタルアは笑ってそう言うとボクの頭の中に直接語る。
『実際には聖痕が現れた者にのみなれるとか、いろいろ条件はあるのじゃがな…それに魔王って言うよりは理に潜む悪性の獣に対して死の概念を付与出来るもののことじゃ。理に潜む悪性の獣はビーストと呼ばれる世界を終わらせるモノが5つの言葉を背負って現れるのじゃ。ちなみにじゃが、シェテラエンデは現れたビーストを理を破壊するオリジナル魔法で破壊したのじゃよ。あのチート大賢者は敵になるとバケモノ過ぎてヤバいのじゃ。勇者の力が無いと傷をつけることすらままならない相手でも魔法を駆使して完膚なきまでに破壊して殺害するのじゃから、文字通りに人の姿をしたバケモノなのじゃ。』
この時に現れたのは繁栄、祝福、希望、創造、知恵の5体で、それぞれが理として、それを否定する存在となっていたそうだ。
シェテラエンデはそんな5体を目の前にしても、決して怖気付いたりしなかったそう。
むしろ、興味津々で「あにあれ!おもしろーい!研究対象が湧いてきた!やったー!」って大喜びしてたらしい。
うん。変人どころじゃないよね。
でも、そのおかげで勇者とシェテラエンデにしか使えない理を破壊する魔法でのみビーストを倒せる事がわかったそう。
そして、シェテラエンデはビーストが現れた時に覚醒する武具を5つも作成したんだって。
その5つと言うのが、聖剣の「約束された勝利:エクスカリバー」、聖盾の「絶対なる守護:ヘイラムーン」、魔杖の「冥府の権威:ヘルヘイム」、大鎌の「死神の弾丸:ハーディン」、身体の「戦神の洗礼:ヤマトクニヌシ」の5つなんだ。
「…ん?よく考えたら、身体ってどうやって作るんだろ…聞いてみようかな…」
ボクは聞きたい事を覚えておく。
「そして、私が持ってるこの聖剣こそが勇者に代々伝わるエクスカリバーなのだよ!」
ルザリアはドヤ顔で胸を張って言う。
それによって、ルザリアの筋肉質な体格が強調される。
『あやつ、女っぽい声なのに男じゃったか。まあ、我には関係無いな。』
シャタルアさん…今、そこに突っ込むんだね…
『いやぁ…我ら魔族にとってはどうでも良い事じゃが、気になる奴らがおるじゃろ?読者のお前たちとかなっ!』
…読者?
『所謂、メタ発言じゃな。』
…メタ発言?
ボクが首を傾げているとシャタルアがニヤリと笑う。
「ところで、獣人の素敵なお姉さん、貴方のお名前は?」
ルザリアがメイリーンの目の前で片膝を着いて問う。
「私はメイリーンで~す。豪傑の女鬼と言えば、わかりますかねぇ?」
「なんとっ!あのグランヴェルザの伝説に名を連ねる豪傑の女鬼さんでしたか!」
ルザリアが目を輝かせて言う。
「あれ?私、伝説になってるんですかぁ?…それってどんな伝説か、聞いてもいい?」
メイリーンはふわふわっとした雰囲気から、突然真剣な表情をする。
その急変っぷりにルザリアがほんの少しだけ戸惑いを見せて言う。
「まずはAランク龍種モンスターのブレイズドランの群れをソロで壊滅させたとか…」
「それは…事実ね。」
「魔王グレガリオンと素手で互角に殺りあったとか…」
「全て事実ね…」
「Aランクでもトップクラスの強さのゴブリン亜種のグランドオーガを一撃で木っ端微塵にするとか…」
「木っ端微塵以外は事実ね…」
「あ、敵対国家のディアオルディス帝国を一夜で滅亡させたとか…」
「やられたら、やり返す、完膚なきまでに。」
「今も生きてるとされる五大神官のグレイス様と殺りあったとか…」
「いや、それはやってないわね。」
「なんなら、互角以上に渡り合ったとさえされてますよ。」
「めちゃくちゃ盛られてるじゃない!さすがの私もそこまで狂った事はしないわよ?!明らかにおかしいじゃない!」
ルザリアの言った噂にメイリーンがツッコミを入れる。
「大賢者様に耳が壊れるまで聞かせてやりたい言葉じゃ…」
シャタルアが遠くを見るような目をして言う。
『シェテラエンデは誰がなんと言おうとやってみなくちゃわからないじゃない!なんて言って、やっちゃう天邪鬼もドン引きの究極の異常者じゃったからな。邪神王のラヴァナ・オリジア=リバルスが現界に侵攻した時も神以外は傷つけることすら出来ないと知っていたにも関わらず、研究対象としてしか見てないわ、撃破するつもりで挑むわ、挙句には戦いの中で神壊魔法なんて開発してラヴァナ・オリジア=リバルスを撃破するわってやりたい放題じゃからな。』
うん。やっぱり、おかしい人だ。
そして、何もかもが規格外な天才だね。
『…その通りじゃな。アレが正常で無かったからこそ、世界は変わったのかもしれん。』
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