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記憶の断片

少女、機巧少女と出会う。

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「う~ん…ここもハズレかぁ…」

私は扉を片っ端から開けてはガックリと肩を落とす。

『記憶力悪いんですね。』

「いやいや、あの時から変わってるところが多いだけだから!伊達にダンジョン化してないって事だよ!」

『はいはい。左様でござ…』

突然、ティアラが何かを警戒するように黙り込む。

『シェラ様、なにか来ます。魔力情報無し、生体反応無し、ゴーレムの類いにしては妙な物体です。』

「え?そんな変な物体ある?超音波エコー…ほんとだ!」

この世界の「物質」にはのだ。

これによって「鑑定」でその魔力を見る事で解析が可能なのだが…

私はワクワクしながら、ティアラが警戒している方向を見る。

『はぁ…どんな奇妙なものが出るのかワクワクしてらっしゃいますね…もし敵性体だったら、どうするんですか…』

「まあまあ、その時はその時だよ!」

「コツコツ」と静かな足音が聞こえると目の前に1人の少女が現れる。

「ネイア?いや…でも、いろいろ小さいな…」

私はその少女に見覚えがあった。

翡翠の長い髪、アメジストの様な綺麗な紫の瞳、その全てがネイアであると感じられるほどにそっくりだった。

メイド服を着ているところもネイアにそっくりだった。

ただし、ネイア本人とは明確に違う部分があり、それは背が低く、胸が平らであることだ。

ネイアは背も高くて胸も大きかった。

胸は五大神官の中で一番胸が大きなアレイシアよりも大きかった。

指数が160くらいあるとか言ってたっけ?

一番大きいアレイシアで130、私は60、一番平らなカリアンは50って言ってた気がする。

あれ?あの子、いつの間に私のを測ったんだ?

…まあ、寝てる間にでもやってるか。

ネイアの事だし、私に対しては直接触るか魔法で計測するかはしてそう。

他は多分、魔法だと思うけど…

ネイアは他の人の身体には触れたがらなかったしね。

少女が私の前で立ち止まる。

「当機の名称はネイアではございません。機巧神エクスマキナ計画:プロトタイプのディアにてございます。この個体はネイアード・エル・ティスタ・ロッタ・ユーティエル・ロイアーデによって作成された機械仕掛けの女神デウス・エクス・マキナの複製個体です。」

少女…ディアが私の目の前で跪いて頭を下げる。

ネイアード・エル・ティスタ・ロッタ・ユーティエル・ロイアーデとはネイアの本名である。

ネイアは本名が長いので普段はネイアを名乗っていたため、ほとんどの文献ではネイアの呼び名が使われている。

…と言うか、ネイアが本名だと言われている。

まあ、ネイアが本名を明かした相手も私と五大神官くらいなものなので、当然と言えば当然である。

「マスター:シェテラエンデ様、これより当機は貴方様に仕える機体となります。なんなりとお申し付けくださいませ。」

「あ、えっと…シェテラエンデは私の前世の話で今はシェラ・アルフェルンなんだ。それと仕えるって言ってるけど、私は別に下僕が欲しいわけじゃないし、仲間としてなら喜んで迎えるよ。」

私がそう言うとディアが跪いたまま言う。

「了解しました。マスター情報を更新します。更新完了。契約内容を変更します。変更完了。今後、当機はマスター:シェラ様の仲間として活動する事を約束します。」

ディアは立ち上がると私の顔を見る。

見れば見るほど、その辺の幼い子供の様な姿だ。

魔力を一切感じない事を除けば、普通の子供だと言われても納得出来ると言える。

「マスター:シェラ様、如何なさいましたか?」

私が見つめているので、ディアは不思議そうに首を傾げる。

「あ、あのさ…出来たら、私の事はシェラって呼んでよ。それと普通の友達みたいに接してくれない?」

ディアは礼儀正しくお辞儀をすると言う。

「かしこまりました…マスター:シェラ様ではなく、シェラとお呼びしますね。普通の友達のように…がどのような感覚なのかは、当機の情報には無いのでわかりかねますが、当機は高性能の学習チップが積まれておりますので、シェラを見て学習します。」

私はディアにいろいろ聞いた。

ディアはネイアのによって作成された神のような力を持った機巧少女エクスの一体なんだそう。

ディアの役目は輪廻の輪の操作であり、その中からありとあらゆる事象をコントロールする事が可能なんだそう。

また様々な機構によって敵対者を攻撃する能力があるらしい。

外部装甲には、魔力を吸収したり跳ね返す能力があるらしく、魔法が効かないみたいだ。

「では、シェラは転生の原因と理由を知りたくていらっしゃられたと…?」

「まあ、それもあるんだけど、回収したいものがあったからね。前の時よりトラップが多くてビックリしてるけど…」

「それはおそらくネイアード様の仕業ですね。あの方はシェラ様を驚かせたいとよく仰っていましたから…」

「あーね…ネイアならやりそう。て言うか、何気に転生した私の事もわかるなんてすごいね。」

私がそう言うとディアは「ドヤァ…」と言う声が聞こえてきそうなほど自慢げに言う。

「当機にはネイアード様の魔法が組み込まれているので、計測ならなんだってお手の物なのです。エッヘン。」

訂正、めっちゃ自慢してた。

ディアが自慢げに胸を張りながら言う。

「あ、シェラの中に居らっしゃられる魔族のお方の事も存じてございますよ。名前までは存じませんけど…」

ティアラが出て来て驚いた様に言う。

「凄い…本来なら魔族が契約者の中に居る時は感知されないのに…」

ティアラが驚くのも無理はない。

ティアラの言う通りで本来なら憑依…契約者の中に収納されている時は存在が統合された状態であるため、感知が出来ないのが通例なのだ。

これはシェテラエンデも出来なかった事なのだが…

たった今、その通例が覆されてしまった。

「フッフッフッ…ネイアード様の計測魔法を甘く見てもらっては困るのです。当機…いえ、私にはとても高性能な機巧が組み込まれているのもありますし、私に計測出来ないものは無いです。」

ディアは「フッフーン」と自慢して言う。

私も魔術回路を完璧に学習ラーニングしたが、それでも憑依した魔族を感知するのは無理だと理解出来るほどに異質な能力だった。

「…とすると、残りは機巧か…そこに鍵があるって感じがするね…でも、分解する訳にはいかないし、かと言って魔法で解析も出来ないとなると、設計図があればいいんだけど…いや、ネイアのことだから、適当に作ってるよね…」

(「シェラ様が凄い怖い事呟いてます…余程気になっているのでしょうか…」)

「シェラ、当機のデータを出しましょうか?」

ディアがそう言って魔術言語で未知の機巧や性質の情報を書き始める。

「ストップ!ストップ!ここで書かなくていいから!」

私が止めるとディアは少しだけ残念そうに言う。

「そうですか…では、また当機に聞いてくださいませ。シェラの頼みなら聞きますよ。」

「あはは…その時はよろしくね。」

私たちはそんなことを言いながら、他の部屋も探索する。
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