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第五章~早瀬陽介side~
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翌日、出社後すぐに母の再婚相手の早瀬社長の元へ出向いた。
大切な話があると伝えて、終業後に時間をもらえることになった。
社長室を出た足で専務にも同じように声を掛ける。専務には八乙女茜にも声を掛けるようと頼んでおいた。
早瀬専務は「そうか。ようやくお前も重たい腰を上げる気になったか」と勘違いした様子を見せたが、放っておくことにした。
コンコンッと社長室の扉を叩く音がする。
「失礼します」
わざとらしく頭を下げて入ってきたのは白洲さんだった。母が再婚してから今まで、公私ともにお世話になっている。今の俺がいるのはこの人のお陰といっても過言ではない。
扉をパタンッと閉めてきっちり鍵をかけると、白洲さんは応接テーブルのソファにドスンッと腰かけた。
「それで、秋月さんのことはやっぱり専務が企んだことだったの?」
「はい。白洲さんのお陰で助かりました」
八乙女社長が来訪した際、娘の八乙女茜を引きつれていたと俺に教えてくれたのは白洲さんだった。
専務が俺と八乙女茜を結婚させたがっていたことも、白洲さんにはすべて話していた。そのおかげで不穏な動きをすぐに察知することができた。
「これからどうするつもり?」
「罪を犯したなら、それ相応の罰が必要です。今までは社長の弟ということもあり我慢していましたが、結乃にまで……。さすがに堪忍袋の緒が切れました」
「ははっ、自分のことは信じられないぐらい我慢強いのに、秋月さんのこととなるとまるで別人みたいだね」
「当たり前です。彼女は俺の初恋相手でもあり、十年間ずっと思い続けてきた相手ですから。彼女以上に大切なものはありません。そんな彼女を傷付けて、さらには俺から奪おうとするなんて……。絶対に許せません」
高校時代、サッカー部のマネージャーだった彼女は、今と変わらず常に穏やかで主張することもなく淡々と真面目に業務をこなすタイプだった。
彼女は場の空気を読んで、人の顔色を気にするところがあった。
大変でも辛くても、泣き言一つ言わない彼女が心配で、いつからか目が離せなくなった。
気付いたときには、恋に落ちていた。
春合宿の日、海まで彼女を呼び出したのにいざ気持ちを伝えようとすると怖気づいてしまった。
彼女に振られるのが怖かったのだ。今日がダメでもまだチャンスはある。
そう思っていた矢先、母が早瀬社長と結婚して俺の生活は一変した。
地元の国立大学に進学する予定が、母の強い希望もあり経営学部の強い都内の私立大学へ行くことになった。
卒業式の日、気持ちを伝えようと思った。でも、意気地なしの俺は結局彼女に気持ちを伝えることはできなかった。
もし仮に彼女とうまくいったとしても、地方の国立大学へ進学した彼女とは遠距離になる。
慣れない継父との生活や、大学進学。さらには、サッカー漬けの毎日でまともな恋愛経験のない俺が彼女を幸せにできるとは到底思えなかった。
結局あれから十年が経っても、結乃への恋心と思いを伝えなかった後悔がずっと胸に燻り続けていた。
そんな時、今まで一度も参加していなかった結乃がクラス会に参加していることを知った。
大切な話があると伝えて、終業後に時間をもらえることになった。
社長室を出た足で専務にも同じように声を掛ける。専務には八乙女茜にも声を掛けるようと頼んでおいた。
早瀬専務は「そうか。ようやくお前も重たい腰を上げる気になったか」と勘違いした様子を見せたが、放っておくことにした。
コンコンッと社長室の扉を叩く音がする。
「失礼します」
わざとらしく頭を下げて入ってきたのは白洲さんだった。母が再婚してから今まで、公私ともにお世話になっている。今の俺がいるのはこの人のお陰といっても過言ではない。
扉をパタンッと閉めてきっちり鍵をかけると、白洲さんは応接テーブルのソファにドスンッと腰かけた。
「それで、秋月さんのことはやっぱり専務が企んだことだったの?」
「はい。白洲さんのお陰で助かりました」
八乙女社長が来訪した際、娘の八乙女茜を引きつれていたと俺に教えてくれたのは白洲さんだった。
専務が俺と八乙女茜を結婚させたがっていたことも、白洲さんにはすべて話していた。そのおかげで不穏な動きをすぐに察知することができた。
「これからどうするつもり?」
「罪を犯したなら、それ相応の罰が必要です。今までは社長の弟ということもあり我慢していましたが、結乃にまで……。さすがに堪忍袋の緒が切れました」
「ははっ、自分のことは信じられないぐらい我慢強いのに、秋月さんのこととなるとまるで別人みたいだね」
「当たり前です。彼女は俺の初恋相手でもあり、十年間ずっと思い続けてきた相手ですから。彼女以上に大切なものはありません。そんな彼女を傷付けて、さらには俺から奪おうとするなんて……。絶対に許せません」
高校時代、サッカー部のマネージャーだった彼女は、今と変わらず常に穏やかで主張することもなく淡々と真面目に業務をこなすタイプだった。
彼女は場の空気を読んで、人の顔色を気にするところがあった。
大変でも辛くても、泣き言一つ言わない彼女が心配で、いつからか目が離せなくなった。
気付いたときには、恋に落ちていた。
春合宿の日、海まで彼女を呼び出したのにいざ気持ちを伝えようとすると怖気づいてしまった。
彼女に振られるのが怖かったのだ。今日がダメでもまだチャンスはある。
そう思っていた矢先、母が早瀬社長と結婚して俺の生活は一変した。
地元の国立大学に進学する予定が、母の強い希望もあり経営学部の強い都内の私立大学へ行くことになった。
卒業式の日、気持ちを伝えようと思った。でも、意気地なしの俺は結局彼女に気持ちを伝えることはできなかった。
もし仮に彼女とうまくいったとしても、地方の国立大学へ進学した彼女とは遠距離になる。
慣れない継父との生活や、大学進学。さらには、サッカー漬けの毎日でまともな恋愛経験のない俺が彼女を幸せにできるとは到底思えなかった。
結局あれから十年が経っても、結乃への恋心と思いを伝えなかった後悔がずっと胸に燻り続けていた。
そんな時、今まで一度も参加していなかった結乃がクラス会に参加していることを知った。
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