亡国の王、幼なじみDomと癒され再会ラブ

切羽未依

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暗殺者

暗殺

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 広間に戻されて、カレンダ王国の地図が新たに広げられた円卓の、僭王せんおうが座るにちがいない一番奥の方の椅子の隣に、セイフは座っていた。


 奥の扉から広間へ入って行くウェリスは、言われた通りに、僭王の隣の椅子に座っている、ゆるやかに波打つ長い赤毛のセイフの後ろ姿を見た瞬間、笑いそうになった。
 ふっくらした紅い唇を閉じ合わせて、必死に、こらえる。


 ウェリスは、円卓に着席している16人の王たちと、あいさつ代わりに見交みかわした。
 笑いをこらえて、閉じ合わせている唇は、まるで微笑んでいるように見えていた。


 ウェリスの緋色の正装は、前回と違う、上着の裾が、膝上にかかるほどの、長いものだった。


 ウェリスは、セイフの右隣に座った。
 セイフは前を向いたまで、視線を交わすこともなかった。


 しばらくして、僭王せんおうは、宰相さいしょうともなって、奥の扉から広間に現れた。
 17人の王たちの正装を嘲笑あざわらっているかのような、黒ずくめの、だらしない格好かっこうは、相変わらずだ。


 ドニは、ビズーイに言われた通り、少し後ろに下がって、椅子に座る。

 ビズーイが椅子に座り、話し出す。
「前回、議題に上がった統治についてですが、――」


 ウェリスは、真っすぐ前を向いたまま、円卓の下、上着の長い裾の内側に、縫い付けてもらったポケットに隠していた短剣を、さやの方を持って出した。


 ウェリスは、ビズーイに渡された時よりも、ずっしりと、手の中に重さを感じた。


 隣の椅子に座るセイフのズボンの太腿ふとももに、つかを、触れさせた。


 セイフは前を向いたまま、手探りで、二度、柄を掴むのを失敗した。


 ちょっと、もおおおお!!


 心の中で、ウェリスは叫んでいた。
 右隣に座るウェリスには、短剣のつかを手探りするセイフの上着の右肩が、明らかに動いているのが、横目でも、わかった。

 ようやく柄を掴んで、鞘から短剣を引き抜くセイフの右肩は、明らかに動いている。


 セイフは短剣を引き抜くなり、立ち上がって、短剣を振り上げた。
 座っていた椅子の脚が、石の床に引っ掛かり、倒れて音を立てた。


 ドニは目を大きく見開き、口を大きく開け、驚いた顔をして、セイフを見上げた。


 セイフは短剣を振り下ろした。


 魔術の発動を、ウェリスは感じた。――広間の封印魔術が解除されてる?!


 深々ふかぶかと、短剣のやいばつかまで突き刺さったのは、僭王の前に身を投げ出したビズーイの胸だった。


「ビズーイ?!」
「ビズーイ?!」
 ドニとウェリスの驚きの絶叫が広間に響き渡った。


 16人の王たちは、ただ呆然と、目の前で起きていることを眺めていた。


「裏切ったな!!」
 セイフは叫んだ、

 一瞬のの後、
「すご~い!!ダブルスパイだ!!」
 ウェリスが立ち上がり、ぴょんぴょん、飛び跳ねた。

 セイフは、ビズーイの胸から短剣を引き抜き、振り上げる。
 ビズーイは、ドニの前から崩れ落ちて、足元にうずくまった。

Kneelひざまずけ
 広間に僭王ドニ命令コマンドが響き渡った。

 セイフは膝を砕かれたように、崩れ落ちて、ひざまずき、頭を石の床に付けた。

 16人の王たちも、頭を下げ、円卓の下、椅子に座っている膝は、がくがくしていた。

 ウェリスは、顔を上げたまま、踏みとどまった。


 ドニは、ひざまずくセイフを見下ろした。
「カレンダ王国・国王への謀反むほんの罰として、やしきでの無期限の蟄居ちっきょを命じる」

 石の床に着いたセイフの右手の下、やいばの無いつかだけの短剣を、ドニは見て、小さな声で付け足した。
のないナイフで、襲いかかって、謀反になんのか?って話だけどな…」


 足元にうずくまるビズーイへと、ドニは手を伸ばした。
「ビズーイ。もう、死んでるふりはいいぜ」


 冷たい石の床の上、ビズーイは、自分の胸に、おそるおそる、手のひらで触った。
 短剣で突き刺されて、赤いインクなんかじゃない、本物の血で汚れているはずの胸は、何ともなくて、痛みもなかった。


「ビズーイ、すご~い!!ぼくとセイフ、両方、だましてたってこと?!」
 大嫌いなウェリスの声が、上から降って来る…
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