君の恋人

risashy

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 腹ごしらえも終わり、次はお揃いの何かを買いに行くことになった。茅野はアクセサリー店で足を止め、熱心にディスプレイされている商品を見始めた。高校生でも手が出せる、手ごろな価格の店だ。
 これまで茅野が装飾品を身につけているのは見たことがない。首とか手に何かつけていると、違和感があると前に言っていたっけ。

「買ったら付けるつもりか」

 ネックレスを手に取っていた茅野は頷いた。

「買ったのに付けなかったら意味がないじゃないか。恋人は常に揃いの何かを身に付けるものらしいぞ。だからお前の恋人になるにあたり、是非取り入れようと思ったんだ」

 大真面目な顔の茅野の発言に、俺は何とも言えない気分になった。
 取り入れる。ずいぶんと事務的な動詞である。およそ付き合い始めの恋人同士が使う言葉ではない。

「朝賀、お前はどんなのが好みだ」
「いや、アクセサリーはやめようぜ。部活もあるし、何よりお前、そういうの付けてたら鬱陶しくなるんじゃねぇの」

 茅野はしばらく考えこんで、そうかもしれない、と眉間にしわを寄せた。

「じゃ、やめとけ。そういうのは、いやいや付けるもんでもない。俺は小物がいいと思う」

 俺の言葉に納得したのか、茅野はそのままネックレスを戻し、次は雑貨屋へと足を向けた。

 散々悩んだ末に、俺たちはシンプルなストラップを買った。俺は青、茅野は黄色。茅野はストラップを手に、満面の笑みだ。

「学校の鞄につけよう。朝賀もつけろよ」
「うん。こういうのも、結構嬉しいもんだな」

 同じものを共有していると思うと、なんだかくすぐったいような気持ちになる。満足そうに頷く茅野が可愛い。できれば、その顔は俺以外に見せてほしくない。

「本当はアクセサリーが定番らしいけど」
「お前、本当にさぁ。どこで仕入れてきてんの。そういう情報」
「……ネットとか?」

 付き合ったときから茅野がやけにこだわる「恋人らしさ」には、少し違和感を持っていた。お揃い、なんて言い出したのも、何だか茅野らしくない。

「そんなん、別に調べる必要ないんじゃねぇの」

 他の奴らの定番の付き合い方なんて、参考程度で十分だ。自分たちなりの形で付き合いをすればいい。しかし茅野はストラップを指先に通し、笑みを浮かべながら、俺の意見を否定した。

「俺は、朝賀の良い恋人になりたい。頑張りたいんだ」
「……別に頑張らなくてもいい」

 俺の言葉が聞こえているのかいないのか、茅野の返事はなかった。

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