友達の肩書き

菅井群青

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女の友情

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 凛花と行きつけのイタリアンにやって来た。ピザの食べ放題にデザートも付いている割にリーズナブルで女性に人気のお店だ。凛花はピザ好きなので二人で会うとしたらいつもこの店に来るのが定番だ。千紘は桃香とのことを凛花に話した。凛花は眉間にしわを寄せながら黙って最後まで話を聞いていた。

「いやー、まさか……だね。あの子なかなかやるわね……」

「ごめん、なんか激動で話すタイミング失っちゃった。いや、桃香ちゃんも反省して──」

 凛花は溜息を吐きながら長い髪を豪快に掻き上げる。その目は怒りで揺れていた。

「千紘は優しいからそれで済んでいるんだろうけど、私だったら裏でシメるね」

「凛花ったら……グレてる時に戻ってるよ。いや、なんかさぁ……気持ち分かるんだよね」

 凛花は首を横に振りマルゲリータピザを頬張る。口の中に残ったまま何か話しているが聞き取れない。千紘を指差して、恐らく「ダメダメダメ!」と言ったのだろう。

「千紘とあの子は全然似てないじゃん!」

「似てるよ、似てる。琢磨が好きだった。それに、私だって彼女持ちの琢磨が好きだった。良くないことでしょ? 人の物を欲しがっちゃ……」

 千紘の言葉に凛花は反論したいが言葉が出ない。千紘は凛花の方へと席を近づけると熱々のピザを取り分けて小皿に置いてやる。

「凛花……桃香ちゃんがいなかったら……今私琢磨と付き合ってなかったかもしれない。今でも友達のままだったかも……」

「そうね、それはそうかも。百歩譲って……だけどね。でも許せないよ……ま、それは一番あの子本人が分かっている事だろうけどね。あの子が自分を省みて自分を許せるかね? まぁ、恋愛ってのは三毒だよ。嫉妬も何かを欲しがるような貪る欲も……恐ろしいね。自分を見失うなんてね……」

 凛花は熱々のピザを頬張る。もう三枚は食べている。凛花は痩せの大食漢だ。

「三毒──煩悩か……。凛花、本当にありがとう。私のことを思って、何度も一緒に泣いてくれて……凛花、大好きだよ」

 凛花が千紘の顔を見た後くしゃっと顔を歪ませた。一瞬で涙が溢れている。それを誤魔化すように食べ掛けのピザを口に放り込むと「このピザ辛いわね……目にくる」と言い千紘から視線を逸らした。千紘はそんな凛花の横顔をじっと見つめていた。千紘も瞬きを繰り返すと天井を仰ぎ見た。

「あ、琢磨から、聞いた? 公言の話……」

「あ、うん、聞いた。琢磨、相当傷ついたんだね……琢磨友達を大事にする人間だから……」

「そうなんだけどさ、もしかしたら琢磨の公言のトラウマが治るかもしれないよ……まだ分からないけどね」

「え? どういうこと?」

 千紘が凛花に顔を近付けると凛花がその額を指先で押し返した。今はまだ話す気ではないらしい。千紘が口を尖らせる。

「あの子が居なくても、もしかしたら公言の呪縛は無くなっていたの……かもよ? 遅かれ早かれ、千紘と琢磨は結ばれていたの……かも。フフッ」

 凛花は不敵な笑みを浮かべてデザートのアイスを美味しそうに口に放り込んだ。
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