友達の肩書き

菅井群青

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変わった事

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 元々友達として付き合ってきたので急に恋人らしいことをするのも恥ずかしい。
 
 先にシャワーを浴びていた琢磨が千紘の部屋でストレッチをしている。同じくシャワーを浴びた千紘が戻ってくると場所を空けてそのスペースを手で叩く。首にタオルを掛けた千紘が座ると琢磨が嬉しそうに千紘の半乾きの髪を摘む。
 
「慌てて出て来なくていいのに。風邪引くじゃん……貸して」

 千紘の後ろにまわるとそのタオルを使って髪を乾かしてくれる。琢磨の大きな手が頭を包み込むのが心地良い。


 あれから変わったことは琢磨が千紘の部屋に泊まるようになったこと。

 琢磨の着替えを部屋に置くようになったこと。

 一緒に料理を作るようになったこと。

 一緒のベッドで眠るようになったこと。

 少しずつだけれど私たちは変わった。一番変わったのは琢磨の視線だ。意味もなく私の顔を見てふわりと笑う。声を掛けるわけでもないのにじっと見つめる。その瞳が甘くて思わず目を逸らすと琢磨は追いかけて私の視界に自分の姿を入れようとする。その口元は緩んでいる。

「なんで逃げんの?」

「え? いや、逆になんで追っかけるの?」

「え? 好きだから」

「…………」

 琢磨はこうして自分の気持ちを伝える。私が不安にならないように、特別な存在と自信がつくようにしてくれているのかもしれない。有難いが、まっすぐ見つめたまま言われると恥ずかしい。炭酸水に浸かったように胸がときめく。

「なぁ、俺……千紘に勝てる事分かったかもしれない」

「何?」

 琢磨が胡座をかき嬉しそうに体を左右に揺らす。千紘は居心地が悪くなり琢磨と少し距離を取る。琢磨は私の腕を取ると私の体を引き寄せる。カーペットの上を滑ると互いの膝小僧がぶつかる。これ以上近付けないぐらいまで密着すると琢磨は私にキスをした。離れる時にもう一度軽くキスをして離れる。

「にらめっこ……なら勝てるな」

「…………そう?」

 素直じゃない私は動揺していることを隠して唇を結ぶ。とにかく甘い……琢磨がこんな顔をするなんて知らなかった。今までの彼女にも同じ顔をしていたのかと嫉妬する。今までスタートラインにも立てなかったのに琢磨の過去に嫉妬するようになってしまった私はやはり欲深い。

 琢磨は私の顔を見て吹き出して笑う。
「はいはい」と言いながら私の頭を撫でる。
 
 脈絡のない琢磨の行動に訝しげな顔をすると琢磨が表情を消す。

「こんな風に……愛おしくてたまんないのは千紘だから。千紘だけだから……」

「な……」

 千紘が唖然としていると琢磨が歯を見せて笑う。

「可愛い可愛い千紘ちゃん、素敵な素敵な千紘ちゃん」

「な──た、琢磨ー!」

 いつもこうして昔のようにふざけ合う。これは琢磨の照れ隠しだ。私を揶揄いながら琢磨の耳は真っ赤だ。きっと自分でも戸惑っているのだろう。琢磨を惑わしているのが自分なのだと思うと胸が熱い。
 私たちの間を流れる友情と恋情は少しづつ混ざり合って新たな形になりつつある。

 私が琢磨の赤い耳に触れると琢磨は笑うのを止めて目を細める。その瞳に映っているのは、私だ。

「……おいで」

「……うん──」

 今日も一つのベッドで眠りにつく。

 琢磨の香りが私の香りになり、私の香りが琢磨の香りになっていく。

 私たちは混ざる──何もかも……。
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