【R18】いつか、あのお姉さんにさよならを

３．昭和63年

（２）真夏の昼の空虚な気持ち

長崎市内に到着したふたりが投宿したのは、大浦天主堂近くのシティホテル。
荷物を置いて高台から港町までの煌びやかな夜景を眺めてから、ゆうこの友人カップルも交えてちょっと贅沢する気分で中華料理のコース料理を堪能。

夜もだいぶ遅くなってからタクシーでホテルに戻り、部屋に入る。
互いの体からほのかに発散される真夏の汗の匂いをむさぼるように抱き合い、キスをしながら脱がせ合い、そして絡み合いながら転がり込むようにバスルームへ。

ユニットバスのバスタブの中でもシャワーの下で体と体を密着させ、肌と肌をすり合わせながら泡にまみれる。
ゆうこの脚の付け根の隙間にいきり勃った性器を差し込む友彦、「うふふ」と妖しく含み笑いをしながら彼を強く抱きしめ太腿に力を入れる彼女。

友彦はシャワーヘッドを取ってゆうこの体を洗い流し、そしてわざと湯量を上げてシャワーを勢いよく彼女の性器に当てる。
壁に背中を付けた彼女は「あっ！　あっ！」と声を上げながら身を捩らせ、友彦はシャワーで責めながらもう片方の手で乳房を責める。

友彦はわざとゆうこに呼びかける。

「声大きいんじゃない？　もう夜も遅いし、他の部屋に聞かれるかもよ？」
「ああ・・・意地悪！」

彼はシャワーヘッドを揺すって水勢にさらに強弱をつけ、そして指先ではゆうこの乳首をクリクリ、コリコリと弄う。
喘ぎながら彼女はだんだんと泣きそうな表情となり、膝が小刻みに震えはじめたと思った次の瞬間、骨盤が動いているのではないかと見間違えるほど腰周りの筋肉を震わせながら絶頂に達した。

全身の力が抜けたように、バスタブの隅にしゃがみ込むゆうこ。
シャワーキャップもタオルも着けない長い黒髪は、さらに艷やかさを増して彼女の背中に流れた。

身を屈めたままの彼女にできるだけ飛沫がかからないように、友彦はシャワーの水勢を弱めて自分の体を流した。
そんな彼に、ゆうこは言った。

「ありがとう・・・今度は私がヒコにしてあげる・・・そこに腰掛けて」

言われるまま、バスタブの縁に腰掛ける友彦。
ゆうこはその両脚の間に入り、ずっと猛ったままの彼の性器に顔を寄せる。

両手で柔らかく弄うように撫でてから、彼女はそれを口に頬張った。
強弱をつけて口から出し入れしながら、同時に舌を絡みつかせて舐る。

ゆうこの愛撫を受けて陶然としながら、あの「お姉さん」のことは友彦の意識の底に静かに沈んでいった。
ただただ無心になって彼女の濡れた髪をそっと撫で続けるうちに、下腹に気が集中する感覚がやってきて、そして彼女の口の中に発射。

ゆうこは吐き出さずに彼の尿道に残ったものも搾り取るように吸い、それも飲み込んでから彼の両膝に手を添えて見上げるように言った。

「ねぇ、ヒコ・・・私ね、こうして口でしてあげてるの、今はヒコだけなんだよ」
「ハハ・・・それウソだ。どうせみんなにそう言ってるんだろ」
「ホントだよ。それに他の人の、飲んだこともない・・・ヒコのだけ飲んであげてるんだ」
「ええ・・・まぁそういうことにしとこうかな」
「・・・もう！」

むくれてしまったゆうこを抱え上げてキスをして、バスタオルを取ってその肌を軽く拭く友彦。
軽く首を振って（しょうがない）と言いたげに薄っすらと苦笑するゆうこ。

ふたりはそのまま裸のまま、絡み合いながらベッドに。
そして狂おしげに抱き合い、改めてお互いを激しく求めた。

翌日は遅めに起きて市内観光。
そして夜は前の晩と同じ部屋に泊まって熱い一夜を過ごし、そして3日目は九州横断バスに乗って雲仙へ。

九州横断バスとは当時、長崎から熊本を経由して別府まで結んでいた定期観光バス。
雲仙観光してから島原に下り、そこで途中下車。

ゆうこの実家は島原半島の南の口之津にある。
島原駅で彼女を乗せて南へ向かう列車を見送り、友彦は北の諫早に向かう列車に乗り込んだ。

寒いくらいに冷房が効いた車内で列車の振動に身を任せながら、彼はゆうこと別れた後の空虚な思いをやり過ごそうとしていた。
彼女と特別な関係になりたいという思いは彼女に一蹴されてしまっていたが、しかしそれでも彼女はやはり彼にとってはかけがえのない存在になっていた。

そしてふと、前々日にゆうこが彼に打ち明けたことを思い出した。

「私ね、こうして口でしてあげてるの、今はヒコだけなんだよ・・・それに他の人の、飲んだこともない、ヒコのだけ飲んであげてるんだ」

後から思い返せば多分に藪から棒に投げかけられた言葉、その意味を友彦は改めて考え直そうとした。