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2.昭和62年

(2)復讐のお仕置き

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言ってしまってから、しまったと思った。
怒りの気持ちが、新たに浮かんできた後悔に押し込められた。

彼女は、「えっ、そんなこと言っちゃうん?」と驚いた表情を向けてきた。
無理もない、いくら怒りに任せて彼女を困らせようとして言ったにしても、ひどいことを言ってしまった。

友彦は、その場をどう取り繕おうかと考え始めていた。
しかし彼女からの返答は、全く思いもよらないものだった。

「でも・・・いいよ。それで荒瀬くんの気が済むなら」

これは明らかにいけないことだと、友彦は心底焦った。
彼がしようとしていることは、彼女の負い目につけ込んで性的関係を強要しているようなものだ。

彼女の返事で、彼が言ってしまったことは取り返しがつかなくなってしまった。
なんとか彼女の口から拒絶してほしくて、彼は迫った。

「コンドーム持ってないけど、いいの?」

彼女はハッとした表情を浮かべ、数瞬の間考えた。
友彦は(いいぞ、断ってくれ)と念じたが、彼女の返事は期待を裏切るものだった。

「いいよ・・・生理前だし、中で出さなければ」そして友彦の腕を掴んだ。「今日は家には誰もいないから、私の部屋で・・・」

強要しているはずなのに、なぜか連行されるように彼女の部屋の中に連れ込まれてしまった。
いやもうこれは同意ということだろう、と思い直し自分に言い聞かせて落ち着こうとする友彦。

しかし彼女とセックスしたとして、心の空白は埋められないし心の傷は癒やされないのは予め分かっている。
逡巡する彼のそばで彼女は2度3度深呼吸してから上着を脱ぎ、ベッドに腰掛けた。

どこか慣れたふうなので友彦は訊いた。

「初めてじゃないんだ」
「どうだっていいでしょ・・・」

顔を赤らめて横を向く彼女に、さらに重ねて訊く。

「相手は誰? 同級生? 先輩? まさか後輩?」
「やだ・・・なんでそんなこと訊くん? それにもう別れたし・・・」

彼女は立ち上がり、友彦に正面から抱きついた。
抱き返しながら、再び怒りが沸いてきた。

乱暴にキスをし、胸を揉み、着ているものを下着まで剥ぎ取ってベッドに押し倒した。
友彦も急いで裸になり、いきなり彼女の両脚の間に顔を埋めた。

お姉さんと比べると、薄い恥毛だった。
4年前のあの頃は、もっと薄い子供だったはずだ・・・そんな子供に、大人のお姉さんとの幸せを奪われたのだ。

怒りのまま指で彼女の性器を開き、舐め上げる友彦。
同時に虚しさもこみ上げてきて、犬みたいに舐め続ける自分が情けなくもあった。

「あっ・・・あっ・・・ああん・・・」

彼女は次第に感じてきたようで、性器は彼女の内部からあふれる露で濡れてきた。
曲げ伸ばしされる彼女の脚の間で、充血してぷりぷりと肥大した肉の襞や小さい突起も舌で刺激する友彦。

だんだんと彼女の反応は高まってきた。
それでもやはり友彦の虚しさは募るばかりで、辛うじて彼を動かしていたのは怒りの感情。

「・・・荒瀬くん、気持ちいい・・・あの人に教わったん?」

友彦の頭に震える手を添え、荒い息の合間に彼女は訊いてきた。
彼にとっては無神経なその言い方は、さらに彼の怒りの度合いを上げた。

彼は彼女の問いには答えず、彼女の腰を抱えるように持ち上げてひっくり返し四つん這いにさせた。
本当にコンドーム無しで大丈夫だろうか・・・不安を覚えながらも、刃物でも突き立てるように後ろから挿入。

彼女の内部は熱く濡れていたが、お姉さんの柔らかさとは違って固い感じがした。
そこへめり込むように進んでいき、いっぱいに入る。

「ああ!」

彼女は頭を上げ、背中を震わせた。
すぐに友彦は、大きく腰を振って突いた。

首を振り、激しく喘ぐ彼女。
怒りと虚しさを心のなかで拮抗させながら、友彦は突き続けた。

お姉さんとの性行為には少なくとも愛があったが、それがない。
それほど虚しく悲しいことがあろうかと、彼は葛藤を抱え続けて彼女の腰を掴んだ。

そうしてなかなか気分は高まらないままかなりの長い時間、腰を振り続けた。
その間に2度、彼女は背中をうねらせ全身を震わせ絶頂に達した。

それでも友彦は様々な感情、そしてお姉さんへの想いに邪魔をされてなかなか心は昂らない。
もう破れかぶれみたいにさらに腰を激しく振ると、彼女は呂律が回らずしかも裏返った声で「許して、ああ! 壊れる! 壊れちゃう! お願い許して!」と悶えた。

(許すもんか! 壊れろ! 壊れてしまえ!)と彼は心の中で繰り返しながら、ひたすら突いていく。
仕返しするような、あるいは苛めるかお仕置きするかのような、残忍な心持ちで。

もがき苦しみのたうつような彼女の腰を両手で強く掴み、突き続けた末にようやく彼にも快感の大波の気配がやって来た。
寸前で彼は彼女の腰から離れ、粘液でヌルヌルするそれを右手でしごいて彼女の背中に向けて白いものを飛ばした。

ベッドにうつ伏せになって伸びてしまった彼女の背中をティッシュで拭き取りながら、虚しい気持ちばかりが大きい空洞になって彼の心を飲み込もうとするのを感じていた。
彼女はうつ伏せになったまま、そんな彼に顔を向けた。

彼女は真っ赤な顔に微笑を浮かべながら、Vサインを作ってみせたのだ。
まるで(あの女に勝った)とでも言いたげに。

その笑顔と仕草に、彼女の計略に嵌められたこと、復讐が達せられなかったことを悟った友彦。
そしてもうあの優しくて柔らかいお姉さんとは2度と会えないのだろうことを改めて実感した。

過ぎ去った4年の月日は彼にとって取り返しのつかない永遠に等しい年月のように思われた。
そして、心にできた埋められない空洞を持て余して慄くことしかできなかった。
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