猫かぶり紳士の癒し方~子リス系OLは疲れた彼に愛でられる~

松丹子

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.第3章 食べられ方のお作法

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 嵐志の舌と唇が、菜摘の敏感な芽を嬲る。

「っぁ、あっ、あ、あっ……嵐志さんっ……!」

 顔を隠そうとした手は嵐志の手に繋がれ、菜摘のあえぎ声の他は、嵐志の口淫の音と菜摘の愛液をすする音だけが部屋に響く。

「あ、あっ、あっ、あっ……!」
「……イキそう? イッていいよ」

 微笑む嵐志は、菜摘にとって不思議なほど紳士的だ。興奮して息を荒げている様子もあまりなく、ただただ菜摘の芽を愛でている。

「っぁ、はぁっ、ぁあっ……!」

 びくん、と菜摘が震えて、嵐志はふふっと笑った。抱きしめられて、抱きつき返す。それだけでも、達したばかりの身体はまた震えた。

「かわいい。……けど、ちょっと失敗だったな」
「……え?」
「せっかくのかわいい顔、見られなかった」

 口でしてたから仕方ないけど、と嵐志は笑う。
 そして菜摘の頬に唇を落とすと、「次は」と微笑んだ。

「ちゃんと顔が見られる形でよくしてあげるから……」

 その言葉が終わるかどうかのところで、菜摘の腿を撫でていた手が、するりと股に入り込んできた。
 節のある指が一本、菜摘の中に入ってくる。
 あっ、と息を詰める菜摘の髪を、嵐志の手がゆっくり撫でた。

「中でイッたことは?」
「あ、あんまり……」

 まだ果てた名残の残る身体は、嵐志の指がゆっくり出入りするだけでも反応した。
 震える声で答えると、嵐志は「そっか」と嬉しそうに微笑む。

「大丈夫、俺に任せて。……もう一度、今度は中でイこうね」

 ちゅっ、と頬に触れた唇は、そのまま菜摘の耳に移動した。
 ぐちゅぐちゅと、舌が耳を犯す音と同時に、菜摘の中で指が動く。

「――あっ」

 その指が一点をこすったとき、菜摘の腰がぴくんと跳ねた。

「……ここ? ここがいいんだね」

 イエスともノーとも言わない菜摘だったが、嵐志は「教えてくれてありがとう」とくすりと笑うと、菜摘に口づけた。

「息、ちゃんとできてる?」

 はふはふ浅い息をしながら、菜摘は嵐志を見つめる。
 嵐志の動きに合わせて、口からは押さえられない声が漏れた。
 身体が熱くてたまらない。

「ああもう……かわいいな……目、潤んでて……ここもピンク色で」

 カップをずらしたブラジャーから、はみ出た桃色の飾りをはむと咥えられる。
 舌で舐められ吸い上げられ、同時に嵐志が察した「いいところ」をこすられて、菜摘はまた「ああっ」と喘いで背中を反らした。

「敏感だね。……かわいい」

 うっとりとした嵐志の目は、菜摘だけを映している。たまらずその首に腕を伸ばすと、嵐志が首筋にキスを落とした。

「つらいんだろ? イかせてあげるよ……俺の指、ちゃんと感じて」

 耳元で囁く甘い声だけでも意識が飛びそうだ。菜摘は自分のあえぎ声をどこか遠くに聞きながら、的確に自分を高ぶらせる嵐志の指使いに溺れた。

「っ――は、ぁ、ああああっ――!!」

 びくびくん、と再び、菜摘が果てる。
 名残の震えが収まるまで、嵐志は菜摘の髪を撫で、額に、頬に口づけを落とした。

「菜摘……明日の予定は?」

 低く問われて、菜摘はかろうじて首を横に振る。

「そう。それじゃあ……明後日は?」

 ……明後日?
 菜摘の顔が強ばったのを察したのか、嵐志はふぅと横を向いた。

「いや……なんでもない。そうだな、さすがにそこまでは……やめておこう。今回は」

 最後に小さく恐ろしい一言が付け加えられた気がしたが、自分の荒い呼吸が聞かせた幻聴かもしれない。きっとそうだと菜摘は自分に言い聞かせて、乱れた呼吸を整えた。
 小休憩のつもりか、嵐志はまた、菜摘の身体を撫で、そこら中にキスを落としていく。
 肌だけでなく、髪にも、爪にも――まるで王子様の接吻みたいだ、と菜摘はふわふわと漂う思考で思った。
 心地よくて、なんだかこのまま眠りたくなってきた――
 と、思ったとき、脚が持ち上げられて、また内ももにキスが降って来る。

「んっ……?」
「うん?」

 菜摘の疑問符に、嵐志も穏やかに疑問符を返してきた。
 その片手は菜摘の腿を持ち上げ、もう片手はさっきと同じく、菜摘のぬかるみの中に入っている。

「さっきは浅い場所だったから、今度はもう少し深い場所にしてみようか」
「えっ……えっ?」

 嬉しそうに言われて、菜摘はうろたえた。今度こそ繋がるものと思っていたが違うのか。

「でっ、でも……神南さんは?」

 思わず問うてから、嵐志の表情が変わったのを見てあっと口を押さえた。嵐志と呼べとしつこく言われたのに、もう戻ってしまっている。

「あ、あの……嵐志さん、は?」

 慌てて言い直すと、嵐志はほっとしたように微笑んだ。
 柔らかい笑顔はすっかり恋人に向けるもので、菜摘の胸は性懲りも無くときめく。

「俺は、まだいいんだ。もう少し君を愛でたいから」

 もう少しとはいつまでなのか。
 菜摘は慌てて、「で、でも」と嵐志の腕を引いた。

「は、はやく……嵐志さんが、欲しい、です」

 こんな言葉を言ったのは産まれて初めてだ。あまりの気恥ずかしさに、顔を見つめて言えずにうつむいた菜摘に、しばし動きを止めた嵐志が、ふぅと息をつくのが聞こえた。

「……そうか」

 呟きが聞こえて、ぎゅっと抱きしめられる。
 早足の鼓動は自分だけでなく、嵐志のそれもだと身体で感じて、菜摘は嬉しくなった。

「……もうちょっと、君のかわいいところを見ていたかったけど……そんな風に言われたら仕方ないね」

 頬を撫でた嵐志の手が、くいと上を向かせる。
 唇が重なって、深く口づけられた。
 その熱を受け止めながら、嵐志の首に手を回す。
 嵐志の手も菜摘の背中に回った。
 触れ合う身体が、ズボンの奥の一点に触れる。
 ――求められている。
 菜摘の身体に、ぞわぞわと甘い期待が走った。

「……ごめん。あんまりかわいかったから……」

 ちゅ、ちゅ、と嵐志のキスが、首や胸に降りてくる。
 ベルトを外す音がして、嵐志は服を脱ぎ始めた。

「挿れたらたぶん、あんまり我慢できないかも……」

 熱い吐息が菜摘の首筋にかかる。菜摘は何も言えずに、こくこくこくとうなずいた。
 嵐志が笑う。

「その動き、ほんっとかわいい」

 菜摘には何のことか分からない。まばたきすると、嵐志は「分からないならいいんだ」とまた笑った。

「……それじゃあ……挿れるよ?」

 気づけばもう、嵐志のそれは立派に臨戦態勢を整えていた。
 菜摘がはっと息を詰め、期待に胸を高鳴らせる中、嵐志は昂りの切っ先を、菜摘のぬかるみに押し当てて――

 ブーッ、ブーッ、ブーッ……

 食卓に置かれた嵐志のスマホが、鈍い音を立てて揺れ始めた。

「……あ」
「……っ……」

 思わずふたり、動きを止める。
 嵐志が菜摘とスマホを見比べた。
 菜摘は慌てて、身をよじるように身体を縮め、「どうぞ」とスマホを示した。
 嵐志はなおもためらってから、「ごめん」とため息まじりにベッドを降りる。

「――はい、神南……なんだ、君か」

 菜摘はベッドに身体を起こしながら、電話する嵐志を見ていた。
 嵐志の色気に溶かされ、痺れていた頭が、段々と動き出す。
 かかってきた電は、どうも仕事の話のようだ。「終わったことにした」と言っていたのを思い出す――が、本当は終わっていなかったということか。

「明日確認するから――ああ、駄目か、明日は筑波に出張だ――くそっ。分かった、今から行く」

 嵐志は電話を切ると、ため息をついた。
 ベッドの上の菜摘を見やり、がっくりと肩を落とす。

「……すまない、あの……」
「謝らないでください」

 申し訳なさそうな嵐志に、菜摘は微笑んだ。

「本当なら、今日会う予定はなかったんですし……会えただけでラッキーだったので」

 はにかんだ微笑みに、嵐志は気持ちを整えるように息を吐き出した。身なりを整えて、菜摘の方に歩いてくる。

「……菜摘」
「はい」
「落ち着いたら、連絡するから……もうちょっと、待っててくれる?」

 菜摘はこくりと、うなずいた。

「はい、待ってます。……行ってらっしゃい」

 嵐志は困ったように、けれど照れくさそうに微笑んだ。
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