永久不変の剣を手に、人々の命の守護者となる

なで鯨

文字の大きさ
36 / 67
第一章 白銀成長編

第三十六話 先へ

しおりを挟む
「俺が攻撃を防ぐ。ヒイラギとコンとオニキスは、できるだけ傷つけずに無力化していってほしい」

 ジョンは手短に指示を出すと、相手3人の攻撃を同時に大盾で受け止めた。
 そしてそのまま、まるで大地に力強く根を張った大木のように動かず、ジョンの背後には何の脅威も及ばない。

「やるっすよ! こんな戦いはすぐに終わらせるっす!」

 コンがその後ろから姿を見せると、ジョンに攻撃を止められていた傭兵たちを殴り倒していく。
 その殴打はかなり加減をしており、うめいてはいるものの、意識を飛ばした者はいなかった。
 
 
「頼むからやられてくれ!」

 オニキスに斬りかかる傭兵が心からの叫び声を上げる。
 それを空中に移動して避け、着地と同時にその傭兵を地面に組み伏せた。

「…………」

 冷静さを保ったまま肩の関節を外すと、再び空へと登って行った。
 

「ソジュさん。道をあけてください。必ず元凶を倒しますから……!」

 ソジュの激しい連続斬撃をさばきながら、ヒイラギは説得を試みる。

「いや。絶対に先へはいかせない。たとえお前の片腕を切り落とすことになっても」

 言葉の終わりにひと際鋭く剣が振られたが、ヒイラギは見切り、勢いを殺して止めた。

「どうしてそこまでするんですか! 傭兵会の上位の方々の実力でも勝てないということですか!?」
「そういう問題ではない……!」

 乱暴に振り払われたヒイラギは、少し後ろに下がりながらもソジュから目を離さない。

「既に言ったが、奴の盾に触れただけで人が死ぬのだ。そんな馬鹿げた相手のところにお前や傭兵会の主力を向かわせて死なせるわけにはいかない!」

 ソジュは新参大会でヒイラギに負けはしたものの、大会後は傭兵として順調に活躍をしていった。
 通り名は”乱攻下らんこうげ”。ヒイラギよりも少し早い段階でその名が付いていた。
 そんな中依頼を受けて南の森を調査する隊の隊長を務めることになり、ソジュは自信とやる気にあふれていた。
 
 その全てを、たった1回その謎の盾に触れてしまっただけで、一瞬にして無にされたのだ。
 生き返ったあとのソジュに残ったのは、無力感と使命感だった。
 
「私ができるのは、これ以上犠牲者を出さないことだ。私たちのような者を増やさせはしない……!」

 ソジュの震えた声を聞いてうつむいたヒイラギへと、歯を食いしばって剣を振った。
 ヒイラギはそれを止める様子もなく、そのまま腕を引き裂くかと思われた。
 刹那、白銀の剣がソジュの剣をものすごい力で弾き飛ばした。
 あまりの力によって折れたソジュの剣先は、回転しながら薄暗い森の奥へと消えた。
 反対に傷ひとつ付いていない白銀の剣。
 それを血がにじむほど強く持ったヒイラギは、折れた剣を呆然と見つめるソジュに悲痛な顔を向ける。
 
「……そこまでして止めようとしてくれるソジュさんの命を奪った相手を、僕は絶対に許しません」

 ヒイラギの碧い瞳に強い憎悪の感情が宿る。
 
「自分の意志で、僕たちを引き留めようと必死な方々の命を奪った相手を、僕は絶対に逃がしません」

 ヒイラギの耳に、ジョンの大盾に阻まれ、コンとオニキスにやられても、這いつくばって必死にあがく者たちの声が聞こえる。

「必ず、討伐します」

 ヒイラギはソジュを見ながらも、その先にいるであろう姿も見えぬ元凶を睨みつけていた。
 ソジュの手から折れた剣がこぼれ落ちた。
 それを見届けると、ヒイラギは白銀色の剣を鞘に収めた。

「ぐああっ!」
 
 そのタイミングで、ソジュを除く最後の傭兵が地面に倒れた。
 
「……ふん。強くなったくせに、相変わらず優しすぎるのではないか」

 ソジュは少しぎこちなく笑った。

「私は奴に殺され、生き返らされ、無様にお前たちへ挑み、止めることもできなかった。結局、それまでの人間だったということか……」
「違います。ソジュさん」

 力なく座り込んでしまったソジュに、優しい声でヒイラギは言う。

「あなたが僕たちに謎の人物の盾や剣について教えてくださったおかげで、覚悟を決めることができましたし、これから対策を考えることもできます」
「突拍子もないことを言っただけだがな」
「でも、それは虚言ではない。そうですよね」

 ソジュは鼻で笑った。

「生きている状態でこんなことを言うのも変だが、ヒイラギ」

 心の底から悔しそうな表情で伝えた。

「私たちのかたきを取ってくれ……!」
 
 胸が痛くなるほど辛い感情を声にのせると、糸が切れたようにソジュの体から力が抜けた。
 目から光が失われると、もともとそうであったかのように動かなくなった。

「…………」

 ヒイラギは体を震わせて、感情のままに大地を思いきり叩いた。

「命をなんだと思っている……!!」

 そのヒイラギの元へ、とぼとぼとコンが歩いてきた。
 その表情もまた悲しみと怒りに満ちていた。

「その人も死んじゃったんっすね」

 うなだれるヒイラギの背中に手を添える。

「あのダリーとか言う奴も頭に穴の空いた死体に戻ったっす。他の傭兵もみんな……」

 そこから先は言いよどむ。
 
「コン、ヒイラギ。先に進もう。オニキスには先に偵察をお願いした」

 冷静なジョンの言葉に思わず顔を上げて睨んでしまったヒイラギ。
 だが、あまりにも真剣なジョンの表情に、ぐっと感情を押し殺して立ち上がった。
 
「皆さんは手厚くとむらいます。もう少しだけ待っていてください」

 そう言い残すと、再び3人で死角を補いつつ、さらに暗い森の奥へと進んでいったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

処理中です...