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2-㉖ パルさんの話
しおりを挟む緊張して変な汗が出てきたよ。
この部屋の静けさに耐えられそうにないので早く誰か話して欲しい。
「…フルドさんは、それを誰かに話しましたか?」
慎重に言葉を選ぶようにパルさんが重い口をやっと開いてくれた。
ヴァン様には話したけど、これは言わない方が良い雰囲気だ。
「いいえ誰にも言っていません。秘密なのかもしれないと感じたので…」
パルさんは何も言わずに頷いた。
「確かに秘密です。ここからの話しはここだけの秘密にしていただけますか?」
「…はい」
やっぱりわざと隠していたんだ!
いつも賑やかなポルさんが心配そうな顔をしながらパルさんの後ろに立って肩に手をあてた。その手の上にパルさんが自分の手を重ねて握りしめた。
「その昔、我々獣人だけの国があったのはご存知ですか?」
「はい」
「ご存知なんですね…。我々の国が滅びたのは、ある国が獣人を奴隷にして違う国に戦争をしようとした事がすべての始まりなんです」
「え?戦争ですか…」
この平和なご時世に戦争を仕掛けようとしていた国があるの?
「信じられないのも無理はありません。何百年と戦争がおきることはなく平和なご時世でしたからね」
いったいどの国がそんなことを考えたんだ?
「きっかけは一人の女性から始まったのです」
「え…女性からですか?」
王様の野心とかではないの?女性?
「その女性はある国では聖女と呼ばれる人で、ある時我々の国にやって来てこう言ったのです…「神様が獣人の皆さんの力を人の為に役立てよと言っている。私に協力するように」と…」
はあ?なんだそれ。
他国の聖女が突然やって来てそんな事を言われても誰が信じるんだ。その聖女ってかなり危ない人なんじゃない?
驚きのあまり固まっているとパルさんがそのまま話を続けた。
「それをもちろん断りました。我が国ではある国とは違う神を信仰していましたし、突然そんな話をされてわかりました…とは言えませんよね」
「その通りだと思います」
僕は食いぎみに返事した。
「それでその後どうなったんですか?」
まさか聖女のお願いを断っただけで戦争なんて事にはならないよね。
「その後、聖女が激怒されて…婚約者だった皇太子も同行されていたのですが…」
パルさんの言葉がそこで止まる。
嫌な感じしかしない。婚約者が皇太子…。その皇太子がまともな人間なら聖女を止めるんだろうけど、今のパルさん達の状況を考えるとな…。
「結局、皇太子も一緒に怒り出して…国同士の揉め事に発展したんだ」
…予想通りすぎたね。
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