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72. ヴァン様のブラディーボール (ヴァン様視点)
しおりを挟むマリーの生まれ変わり?
こんなことがあるのだろうか。若き日になくした宝物が思わぬ所で見つかったような気持ちだ。
嬉しい気持ちは勿論あるが複雑な心境だ。
マリーアという女性は確かにマリーに姿も似ている。しかし…。
全てを覚えているわけではない彼女にとってコウモリの姿の私は彼女の瞳にどう見えるのだろう…。
ヴァンパイア一族のことも全てを覚えていない彼女に私が元は人間だと説明してもきっと信じてもらえないだろう。
私は不安なのか?
自分でも自分がどうしたいのかわからない。
彼女と話がしたい。
彼女に触れたい。
彼女に私の事を思い出してほしい。
だけど…私は今はコウモリだ。
彼女は動物が嫌いではないだろうか?
コウモリは好きだろうか?
考えればキリがない。
フルドは私にどうするのか?と尋ねてくるがそんなもの私もわからない。
しかし、ひとつ言えるのは「人間の姿に戻りたい」ということだ。
その為には…私の奪われたブラッディーボールを取り返さないといけない。
フルドには失くしたと言っていたが、真実を話す日がきたのかもしれないな。
もっと先の話しだと考えていたが…。
あの一族はそう簡単には見つからないだろうし、その間にフルドには力をつけてもらおうと思っていたがそうもいかないようだ。
だが、今のフルドでは力不足だろう。きっとあの一族にすぐにやられてしまう。
もう少し色んな経験をさせて、力をつけさせれば…一族の子孫なのだからきっと大丈夫だろうとは思うが…。
ここはフルドに期待しよう。
そうして人間の姿に戻れた時には彼女に会いに行こう。
うん、それが一番良いだろう。
「ねえヴァン様、さっきからお顔が百面相してますけど何を考えているんですか?気持ち悪いですよ」
『な、何を言っている!私はいつでも男前だ!』
せっかく考えがまとまり、気持ちも整ってきたというのに…フルドのこの言い様。
「で、ヴァン様はどうするつもりなんですか?」
フルドのやつ…自分の時はなかなか結論を出さないくせに他人事だと思って急かしてきてるな。
『それは考えてある。だがその前にお前に話さなければならないことがある』
「へ?話さないといけないこと…ですか。マリーアさんとの関係ですか?」
『ち、違う!その事ではない!!』
「え~!教えて下さいよ!」
フルドが目をキラキラさせながら顔を近づけてきた。
こいつは何を期待しているんだ?
『それはまだ早い!それを教えてやるのは私のブラディーボールを取り返してからだ!』
「え…?取り返すですか?」
キラキラしていた目が見開いて驚いた表情になっている。
『そうだ。実は私のブラディーボールは失くしたのではなく奪われたのだ』
「…誰に?」
『それは…』
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