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第十一章 本戦

第114話 チュートリアル:バルテウス

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 ――王の○宝《ゲートオブ○ビロン》という名を聞いたことがあるだろうか。

 基は同人ゲームで今は大衆に認識されている某運命の主要人物。その彼が持つ宝具の名称だ。

 彼が所有する宝物庫そのものであり、その鍵でもある。

 ではただの一般人がゲートオブ○ビロンを使用したとしよう。波紋を広げるゲート、そこからヌルっと出てくるのはタンスや物置に閉まった家具や小物が精々。俺だったら間違いなくテ○ガが出てくる。

 だが運命の主要人物の彼が、ゲートオブバビロンの持ち主の彼が使用すると話が違う。

 人間の範囲がまだ矮小かつ神がそこにいる神代。ありとあらゆる財宝を集めた彼の宝物庫。様々な神話に出てくる原典が収められていた。

 巨人を、怪物を、神を、人を討った、誰もが一度は聞いたことのある神話の武器。それをゲートオブバビロンから出てくるものだからあぁ^~たまらねぇぜ。

 色々と言ったけど、とどのつまり、背後に無数のゲートが開き、そこから射出される神代武器の数々。ゲートオブバビロンを見たものは、そのあまりにも異様な光景を脳裏に刻まれるだろう。

 要は男心くすぐるほどにカッコいいのだ。

 背後に広がる無数の魔法陣。バビロニアを統べた彼と同様に丁寧な腕組み。惜しくも黄金の甲冑ではなく黒装束だが、マスクの下でほくそ笑む顔は似たり寄ったりだろう。

 そう。それは俺の目の前で模造という形で再現されている。

「♰――魔法発動マジックエフェクト アルテミット・スレイズッ!!♰」

 三回戦第二試合にして今宵最後の試合。

 レフェリーの獅童さんが開始の合図を出したと同時に展開された十個の魔法陣。

 魔法陣の大きさは、巨大魔法陣を有しながらも二回戦で敗退したアズにゃんとは全く違う一般的な大きさだけど、ぽつぽつとアルテミット・スレイズの複数の先端が一つの魔法陣から顔を見せた。

「――」

 瞬間。魔法陣から放たれたアルテミット・スレイズ。

 無数の音と無数の軌道。両方が唸りをあげ一斉にターゲットである俺目掛けて襲ってくるではないか。

「バル〇ウスかよ」

 妙な既視感を覚えたのは、苦節百億年の果てに発売されたアーマードコア6のボス、バルテウス。

 あ~もうめちゃくちゃだよ――でお馴染み、ナショジオのシェフの吹き替え担当である杉田氏もびっくりなミサイルの雨あられ。文字通り初心者も玄人も木っ端微塵に爆ぜさせたバル○ウスのミサイルを彷彿とさせるアルテミット・スレイズだ。

 正直に白状しよう。バル○ウスくん。キミのおかげでコントローラーぶっ潰しちゃった☆ もっと細かく言えば、LRトリガーとL2R2トリガーを圧し潰し、アナログスティックが背面を割って陥没。持ち手はもちろん潰した。

 機体のアセンを変えつつトライアルアンドエラーを繰り返し、やっとこさ倒した。

 え? ワンダと○像みたいなスロー演出で最後の一撃は切ない?

 何言ってんの? 超爽快で思いっ切り唾飛ばしたわ!

「――」

 でだ。近年稀に見る弩級のミサイル攻撃だったけど、なぜゲームの中だけじゃなく現実でもバル○ウスミサイルを見なくちゃならんのか……。

 このままダッシュで回避したとしよう。一瞬画面から消えたミサイルが横と後ろから猛撃。撮影された精子みたいにぶっかけられる事になるだろう。

 じゃあ避ける選択肢ではなく、オーラ剣による撃墜を選択するのはどうだろう。

 確かに出力を上げたオーラ剣なら束になったアルテミット・スレイズの一個団体を消すことは可能だろう。でもそれじゃ別の魔法陣から出たスレイズにカマを掘られるのがオチだ。

 では諸悪の根源であるバル○ウスもといダーク=ノワールを直接狙うのはどうだろうか。
 アルテミット・スレイズが俺に着弾するよりまえに一瞬で決着をつければ問題ない。

 でもそれは現実的じゃない。

 バルテウスが火炎放射器をブレードみたく振り回す近接攻撃。むろんダーク=ノワールも近接武器――ソードオブライトをぶん回して来るだろう。

 確か、合計で三本のソードオブライトを生成でき、しかも浮遊して独自で剣が俺を襲う使用にもなっていた。バル○ウスの火炎放射器による二連撃の方がまだマシである。

「ッチ、フゥーーーーー」

 てな感じで普段しない舌打ちをし、バルテウスに五連続敗退を帰した時と同じように苛まれる。

 結果、事は単純明快。

 張り付いて張り付いての完全ゴリ押しでバルテウスから勝利を捥ぎ取った単純戦法と同様に、俺の行動も単純が良い。

「――おおおおおおおおお!!!!」

 目を見開いた俺はオーラ剣を両手持ち。

(貴様! 人が死んだんだぞ!(プレイヤー)いっぱい人が死んだんだぞ!!(ブレイヤー))

 最大に近い出力を上げ――

「遊びでやってんじゃないんだよ!」

 ドワオッ!!

 ストレスの要因であるバルテウスのミサイル、アルテミット・スレイズを出している複数の魔法陣に向け大出力のオーラ斬り。

 アルテミット・スレイズごと魔法陣を両断し、そのまま下段列に並ぶ魔法陣を捕らえる。

「ここからいなくなれー!!」

 ガラスが割れた様に魔法陣が崩壊。開始間際に放ったアルテミット・スレイズは俺の怒りを受けその一切を消滅した。

《なッ!? なんと言うことでしょうかあああああああ!! 戸島の魔法が魔法陣もろとも一刀両断ッ!! クゥ^~~!!》

 急にワーワーと会場が大いに騒がしくなる。

「萌えええええええええええ!! カッコいいいいいいいい!!」

「押忍ッ!! 押忍ッッ!! きたあああああああああああ!!!!」

「……やるな、萌」

 俺に近しい友の歓声も聞こえてきた。

《まさに破壊の一撃!! これが花房 萌だああああああああああ!!》

《驚かされるばかりですねぇ》

 そう。西田メンバーが俺の攻撃力に驚くと同じ、まったく動じないダーク=ノワールの態度に俺は内心驚かされた。

 己の魔法陣がことごとく破壊されたと言うのに、未だに腕組みをして俺を睨みつけてくる。

「♰小手調べと思い攻撃したが、やはり此れしきの魔法では貴様を倒せんか……♰」

「……」

「♰さすがは我が好敵手……! 貴様の女の乳と同じく、貴様自身の力も強大……! まさに我に立ちはだかる強大な壁としてふさわしい!!♰」

「……」

 ……いやまぁ。急にビシッと指さされたし、なんか黒マスクがもぞもぞ動いてるから喋ってるのかなぁって思ったけどその通りだったようだ。

 しかも俺の毒電波受信乳首アンテナがあいつのセクハラ発言を受信した。サラッとセクハラしてんじゃねーよ中二野郎。

 そんなことを想っていると。

「♰魔法剣――ソードオブライト♰」

 おもむろにソードオブライトを生成。右手に剣、左手にも剣な二刀流だ。

「♰フフフ。近接戦がやや不出来だと思われているからな。それを払拭するため、貴様にも一興を興じて貰うぞ!!」

 脚に魔力を纏い強化。それを見た俺はダーク=ノワールと同じくもう片方の手にオーラ剣を持った。

 瞬間――

 ギギャンッ!!

「おおお!!」

「ッ」

 腕にも魔力を纏い縦に振り下ろされるソードオブライト。それを迎え撃つ形で斜めで受け止めた。

 オーラの欠片と光の欠片が爆ぜる様に散る。

《ここでまさかの接近戦ッ!! 超攻撃型である花房の土俵に戸島が自ら上がったあああああああ!!》

 縦、横、斜め。下から上へ、突きも織り交ぜるダーク=ノワールの剣捌き。魔力を帯びた身体強化に驚くが、加えてソードオブライトの質も上がっているようだ。

 予選の時からずっと強くなっている。

 ブオンッ!

「!」

「♰ソードオブライトはファンネルを有していると忘れたか!!♰」

 奴の頭後ろからソードが襲ってきた。しかし首を傾けて回避に成功。光の剣が床に突き刺さり光って消える。

「――」

 縦一閃。

「――」

 横一閃。

 剣どうしがぶつかり合う度に欠片という光が舞う。

 お互いのスキを作らせる殺陣。それが今行われている剣のしばき合い。したがい、俺と戸島、両名の剣劇は拮抗。バリアも当然無傷。

 だがそれは――

「――ッガハ!?♰」

 俺がダーク=ノワールの一興に付き合っていたからだ。

《唐突の前蹴りいいいいいいい!! 腹部に突き刺さった脚の威力が吹き飛んだ戸島の苦悶な表情で伺えます!!》

《わかりやすく言うとヤクザキックですね。腹からのバリアのヒビが肩まで伸びてる様子……。戸島くんは気が気じゃないでしょうねぇ》

 バリアの具合を目視したダーク=ノワール。目を細め俺を睨んできた。

「これでもまだ手加減してる方なんだ。むやみやたらに俺の土俵でイキるのやめてもらっていいですか?」

「♰……攻撃力は論破王のひろゆき並だがぁ、どうやら論破したいおつむは銀魂の将軍の将軍ほどらしいな♰」

「しょうちゃんに謝れダーク=ノワール!? 最高にかっこよかったろ!?」

 回りくどい事言いやがって! 要は煽ってる俺と同じく煽ってるて事だろ。

「♰……さて♰」

 ダーク=ノワールの雰囲気が冷たくなり、急にガラリと変わった。

「♰認めよう。貴様の土俵ではまだまだ敵わないと再認識した♰」

「一応認識はしてたんだ……」

「♰悔しいが、我が土俵で戦うしかあるまい!!♰」

 瞬間、薄紫の魔法陣が音を立てて展開。二つ、四つ、八つ、そして十を通り越して二十ほど。

 俺の目視では従来の倍は展開された魔法陣が出現した。

《……ウソだろ?》

《戸島の魔法陣が無数に展開!! クゥ^~~!!》

 これで決める。

 その意志が現れた様に魔法陣が発光。

「――アルテミット――スレイズ」

 上げた手を下したダーク=ノワール。

 その言葉が皮切りに、彼が最もあつかい易い魔法が一斉に射出された。

 筆舌に尽くし難い攻撃。

 俺はトラウマを乗り越えるが如くオーラ剣を使って再度魔法陣ごと破壊。

 だが倍以上になった魔法陣を全て斬る事は叶わず、そのまま本体へ直行。

「――!」

 ソードオブライトを構えるダーク=ノワール。

「――」

 俺はそのままオーラ剣で受け立たれたソードオブライトを破壊。

 砕けるソード。

 見開く戸島。

 勢いのまま胸へ突き。

「――マジック・シリンダー♰」

 突如剣先に出現した魔法の筒。

 その中にオーラ剣の剣先が入り、眼前に現れた別の筒からオーラ剣の剣先が見えた。

「ッッ~~」

 辛くも直撃を避け頬のバリアにダメージを負わせられた。

 このまま右手のオーラ剣で戸島を斬る。

「♰聖なる――」

 だが――

「――ミラーフォース!!」

 まるで初めから戸島を守っていたかの様に目視できた鏡の障壁。

 まさかの魔法二段構え。

 しかし、俺は寸ででオーラ剣を手放し、敵意無い力の抜いた手で

 そのまま全力の握撃で戸島の顔面のバリアを握った。

「「――――」」

 パリンとバリアが割れた音が響いた。

 騒然とする会場。

 冷静なレフェリーの獅童。

「勝者ッ――――」

 彼の一声で、勝敗が決まった。
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