100回目のキミへ。

落光ふたつ

文字の大きさ
上 下
14 / 41
〖序章〗

〈思い出⑦〉

しおりを挟む
 彼女をずっと見ていた。
 最初はただ仲良くしていただけで、でも次第に別の感情が生まれ、それは恋とも憧れとも呼べるものになっていた。
 そうしてこの胸の動きに名称を付けてから、彼女との距離がすごく離れているように思えてしまい。
 自分は釣り合わない。
 彼女に相応しくない。
 俺は俺の事が好きじゃなかったから、隣にいたら彼女の輝きを鈍らせてしまうのではと考えてしまう。
 せめて、もっと強くなれたなら……
 それに明確な基準なんてないのに俺は求めた。筋肉でも学力でもお金でも、どれでもいいから、何か誇れるものを手に入れようとした。
 高校生になって、俺にだってまだ可能性はあると思っていた。筋トレを日課にし、テストでは満点を取って、アルバイトに勤しみ節約すれば、理想の自分になれるはずだと。
 そうしていつか、俺が俺を認められる日が来たら。
 この気持ちを伝えよう。
 日に日に溢れていく想いにそう言い聞かせて、俺はそれまで苦しむ覚悟もした。

 けれどその努力は、運命によって潰える。
 その瞬間俺は、本当に全てを失ったと思ったんだ。
しおりを挟む

処理中です...