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第2章 新国家「エデン」
第36話 蜂の巣
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大雷鳴とともに現れた明けの明星様は、これまでにないほどお怒りの形相でした。美しい金の髪は逆立ち、体には稲妻をまとってゆっくりと天から降りて来られました。そのお怒り凄まじくフェデリコの精鋭部隊が震え上がるほどの殺気に満ちていました。
そして、それほどの怒りの矛先が私であることを私はよくわかっておりました。
明けの明星様の下にたどり着けなかった。私は試練に勝てなかったのです。
そんな私に明けの明星様はお尋ねになりました。
「おう。オンドラ。
なんでそいつにすがりついまま動かんのじゃ。なんで走らんかったんじゃ?
フィリッポやその配下の者も何人死んだと思ってるんじゃ?
なんでそいつだけ特別扱い何じゃつ!! ああっ!?」
明けの明星様は私を怒鳴りつけました。しかし、そんな事を言われても私にはわからなかったのです。
「特別扱い? そんなの。そんなの私にだってわかりませんよ!!
きっと今日、私は多くの人を失いすぎて、もう誰を失うのにも耐えられなくなったからとしか、言いようがありませんっ!!
ヴァレリオを特別扱いした理由を言えと仰るなら、彼が常に私を支えてくれたからでしょうとお答えしますっ!!。
どんなに苦しくても、怖くても、挫けそうでも彼が私の側にいてくれるだけで、私は心が安らいで耐えられたのです。」
「そんな彼がいなくなったら、自分でも何故だかわからないくらい悲しくて悲しくて・・・私はもう、走れませんっ!! 生きていけませんっ!!
それがご不満なら、どうぞ処罰してくださいっ!!
お願いですっ・・・彼と一緒に死なせてぇ・・・っ。」
私がそう言って思いの丈をぶつけると明けの明星様はギョッとしたような表情を浮かべて固まっていました。それからしばらくしてようやく周囲にいるフェデリコ達に意見を求めるかのように私を指さして、首を傾げるというジェスチャーをするのでした。
しかも、明けの明星様に意見を求められたフェデリコ達も不可思議な表情を浮かべたまま首を傾げる者や頭を振る者まで出る始末。
(何なのですかっ! 私を馬鹿にしているのですかつ!!)
私は、彼等の対応がまるで私だけでなくヴァレリオの死まで馬鹿にされた気がして、腹が立ち、猛抗議をします。
「何なのですかっ! 言いたいことがあるならハッキリおっしゃったらどうなんてすかっ!!
私の何が間違っているというのですかっ!!」
私にそう言われた明けの明星様とフェデリコ達は皆で同じことを言いました。
「嘘やろ? ・・・お前、マジかっ!?
・・・・・・この期に及んで・・・そこまで思いつめとるのに・・・無自覚なの・・・か?」
明けの明星様は珍しい生き物を見るかのような反応を見せるのでした。
それが私をさらに苛立たせるのですっ!!
「意味がわかりませんっ!!
私が何を自覚していないというのですかっ!?
男なら言いたいことがあるならはっきり仰ったらどうなんですかっ!!」
私にそう言われて、明けの明星様は明らかに困惑の表情を浮かべて言葉に詰まってしまわれました。
「いや・・・だから、それはお前な・・・・・・ええっ!?」
こんなにも狼狽えておられる明けの明星様は始めてみます。そんな明けの明星様を見かねたかのようにフェデリコが口を挟んできました。
「ああ~っ。その・・・ラーマ姫様。
・・・ですからぁ、あなたが他の家臣達との死に直面した時とは違って、ヴァレリオ男爵のときだけは側から離れられない理由はですなぁ・・・
・・・・・・いや、わかるでしょ? ほら、ね?
・・・あ~・・・あの~・・・その・・・つまりはそのですなぁ・・・。」
と、明けの明星様を補足しようとしたフェデリコさえも困惑しながら、要領をえない返事を返すのでした。
それがさらに私を苛立たせるのですが、突然、明けの明星様は大笑いしながらフェデリコを制止するのでした。
「待てっ!! ・・・・・・はははははははっ!!
いや、黙っていっ!! このまま教えない方が絶対に面白いっ!!」
そういうと、お腹を抱えて明けの明星様は更に嬉しそうに笑うのでした。
「はははははっ!! ラーマっ!! お前と言う奴は、つくづく俺の予想を超える女よっ!!
お前ほど自分に疎い女はおらぬっ!!
まったく、これではヴァレリオも浮かばれんっ!! はははははははっ!!」
明けの明星様は美しいお顔を歪めて大笑いされたのち、「ふ~っ」とため息を一つつかれると「許すっ!!」と仰いました。・・・・・・いや、私は何を許されたというのですか?
「ラーマよっ!! お前は俺の課した試練をクリアできなかったっ!! だからお前もなりそこないだ。
なりそこないだと決めようと思った。
しかし・・・クククク・・・お前ほど面白い女は珍しいっ!! 許すっ!! 特別に及第点を出そうっ!!」
明けの明星様はそう言うと私を指差して尋ねました。
「俺の下を目指したのは、俺に話があるからだろうっ?
お前は試練を乗り越えられなかったが、特別に聞いてやろう。
俺に何の話があるっ!?」
明けの明星様はどういうわけかはわかりませんが、私の話を聞いてくれるというのです。
話を聞いていただける・・・。そう思うと本来ならば、私の心は晴れたのでしょう。ですが、そこに至るまでに失ったものが多すぎました。
フィリッポ、マヌエル・・・みんな・・・私は死んでいった家臣たちの顔を思い浮かべながら、動かなくなったヴァレリオの髪を撫でて大粒の涙をこぼします。ここからは希望に胸を膨らませてお放しするわけではありません。ここに至るまでに多くの犠牲を強いた私の義務として明けの明星様に直訴するのです。
深呼吸を一つ。覚悟を決めなさい。ラーマ・・・。私は自分にそう言い聞かすとお話ししました。
「恐れ多くも畏くも明けの明星様には、私とスパーダ軍との和平交渉の見届け人になっていただきたく存じます。そのためにも戦争の停止をお願いいたしたく、私はここまでやってきました。」
私がそう言うと明けの明星様は笑顔を崩して、真顔になって「ほうっ!? 俺に見届け人になれ・・・やと?」と、短くお答えになりました。
「お前はアホのクセに頭は切れる。
俺に見届人になれと言うときながら、戦争停止をさせるのが本音やろ?」
「それともアレか?
ここで俺と話をする姿をそこにいるスパーダの将軍に見せることで奴の心変わりを狙う気か?。」
明けの明星様は、意地悪な笑みを浮かべてそういいました。全てを見越しておられるというわけです。
「お前が和平交渉をしたいと言うなら勝手にすればええ。
せやけど、そこのアホタレはそもそもお前との和平交渉に応じると言うたんか?」
フェデリコは首を横に振って答えました。
言葉を発しないところを見ると本当に明けの明星様と縁を作らないように気を使っていることがわかります。高位の霊格と交わす言葉には強制的に契約を持たされてしまう。その可能性について危惧してのことでしょう。流石です。フェデリコ。用心深く、そして油断がない。
しかし、そんな道理が明けの明星様に通ずると思っている辺り、まだまだ明けの明星様の恐ろしさがわかっておられないようですね。
首を振って返事をしたフェデリコの対応は本来ならば正しい対応でした。しかし、それをお許しになる明けの明星様ではありません。
ツカツカとフェデリコの前に進み出ると明けの明星様に怯えて地面に座り込むフェデリコの髪を掴み上げて睨みつけました。
「オンドラ。なんで口きかんのや? 俺に返事するのが面倒やというんかい? あ?
それとも俺に縁を作りたくないちゅーんかい? あん?」
「言うとったるけどな。己が口きかんかったら、俺と縁を作らんでええと思たら大きな間違いやぞ。
己の意思なんか知るか。この戦場におるもんは全部、俺の供物と知れ。今度、返事せんかったらおのれの部下を皆殺しにするぞ。わかったな?」
明けの明星様にそう言われてフェデリコはどう反応するべきか悩んでいるようでしたので、私は大きく首を横に振って話すべきだと伝えました。明けの明星様は、恐らく返事をしなければその場でここにいる人達を容赦なく殺したでしょう。私は無駄な人死を避けるために合図したのですが、フェデリコはそれでも悩んでいるようでした。きっと明けの明星様と意思の疎通が取れるのか怪しんでいるのでしょう。しかし、その態度は明けの明星様の怒りをかいました。
明けの明星様が右手を握る仕草をするとフェデリコの家臣数名が空間ごと握りつぶされたのです!
「あああああっ!!」
その場に吹き飛ぶ血飛沫を見てフェデリコが悲痛な叫びを上げました。自分の判断ミスが優秀な家臣を数名、殺してしまったのです。なんという酷い事を。フェデリコの悲痛な思いは察するにあまりありました。
しかし、明けの明星様は気になさりません。
「やかましいっ!! ギャーギャーおらぶなっ!! アホンダラァッ~!!
おのれの責任やろがっ!!」
「それでどないすんねん? 返事するんか? せぇへんのか?」
明けの明星様はフェデリコの頭を引っ叩きながら脅しました。あまりにも理不尽過ぎる暴力ですが、それに抗う力など私達にはなかったのです。
そして、明けの明星様は続けておっしゃいました。
「おいっ!! おのれ等、勘違いするなよ?
おのれ等こそ、ラーマの国民を理不尽に殺しに来たんと違うのか?
それが殺られる側に回ったら、途端に被害者ヅラか? あん?」
「おのれ等の仲間の死に様見て、おのれの罪を知れっ!!
アホンダラ共がっ!!」
フェデリコは震えながら何度も頷きながら「逆らいません。逆らいません。」と答えるのでした。それを見た明けの明星様はフェデリコの頭を掌でぴしゃりと押さえつけると
「違うやろが? お前は戦の勝ち筋が見えとるのにラーマなんかと和平交渉に応じるつもりなんかい? と、尋ねとるんじゃ
さっさと答えたらんかい、ハゲよ。」
・・・。いえ。フェデリコは剥げてはいません。ロマンスグレーのふっさふさです。
そんなことを言おうかと悩んでいると、フェデリコは
「明けの明星様の仰る通りに御座います。和平交渉に応じるつもりはございません。」と、ハッキリと答えるのでした。
それを聞いた明けの明星様は私の方を振り返り、両掌を私に見せて「ほらな?」と、言いたげなポーズを取るのでした。
しかし、ここで引き下がったらこれまでの者達の死が無駄になってしまいます。
私はフェデリコを睨みつけると覚悟を決めて和平条件を言うのでした。
「フェデリコ将軍。この度のその方らの進軍、凄まじいものがありました。敵ながら天晴れと褒めておきましょう。
しかし、戦というものは、長引けが長引くほど、双方の損害は増すばかり。
ここいらで和平交渉をして見るのも悪しくはないのでは?」
「こちら側としても敗戦側の責任として、それ相応の対価を支払うとお約束いたしますが。いかが?」
私、一世一代の和平交渉を始めるのでした。
そして、それほどの怒りの矛先が私であることを私はよくわかっておりました。
明けの明星様の下にたどり着けなかった。私は試練に勝てなかったのです。
そんな私に明けの明星様はお尋ねになりました。
「おう。オンドラ。
なんでそいつにすがりついまま動かんのじゃ。なんで走らんかったんじゃ?
フィリッポやその配下の者も何人死んだと思ってるんじゃ?
なんでそいつだけ特別扱い何じゃつ!! ああっ!?」
明けの明星様は私を怒鳴りつけました。しかし、そんな事を言われても私にはわからなかったのです。
「特別扱い? そんなの。そんなの私にだってわかりませんよ!!
きっと今日、私は多くの人を失いすぎて、もう誰を失うのにも耐えられなくなったからとしか、言いようがありませんっ!!
ヴァレリオを特別扱いした理由を言えと仰るなら、彼が常に私を支えてくれたからでしょうとお答えしますっ!!。
どんなに苦しくても、怖くても、挫けそうでも彼が私の側にいてくれるだけで、私は心が安らいで耐えられたのです。」
「そんな彼がいなくなったら、自分でも何故だかわからないくらい悲しくて悲しくて・・・私はもう、走れませんっ!! 生きていけませんっ!!
それがご不満なら、どうぞ処罰してくださいっ!!
お願いですっ・・・彼と一緒に死なせてぇ・・・っ。」
私がそう言って思いの丈をぶつけると明けの明星様はギョッとしたような表情を浮かべて固まっていました。それからしばらくしてようやく周囲にいるフェデリコ達に意見を求めるかのように私を指さして、首を傾げるというジェスチャーをするのでした。
しかも、明けの明星様に意見を求められたフェデリコ達も不可思議な表情を浮かべたまま首を傾げる者や頭を振る者まで出る始末。
(何なのですかっ! 私を馬鹿にしているのですかつ!!)
私は、彼等の対応がまるで私だけでなくヴァレリオの死まで馬鹿にされた気がして、腹が立ち、猛抗議をします。
「何なのですかっ! 言いたいことがあるならハッキリおっしゃったらどうなんてすかっ!!
私の何が間違っているというのですかっ!!」
私にそう言われた明けの明星様とフェデリコ達は皆で同じことを言いました。
「嘘やろ? ・・・お前、マジかっ!?
・・・・・・この期に及んで・・・そこまで思いつめとるのに・・・無自覚なの・・・か?」
明けの明星様は珍しい生き物を見るかのような反応を見せるのでした。
それが私をさらに苛立たせるのですっ!!
「意味がわかりませんっ!!
私が何を自覚していないというのですかっ!?
男なら言いたいことがあるならはっきり仰ったらどうなんですかっ!!」
私にそう言われて、明けの明星様は明らかに困惑の表情を浮かべて言葉に詰まってしまわれました。
「いや・・・だから、それはお前な・・・・・・ええっ!?」
こんなにも狼狽えておられる明けの明星様は始めてみます。そんな明けの明星様を見かねたかのようにフェデリコが口を挟んできました。
「ああ~っ。その・・・ラーマ姫様。
・・・ですからぁ、あなたが他の家臣達との死に直面した時とは違って、ヴァレリオ男爵のときだけは側から離れられない理由はですなぁ・・・
・・・・・・いや、わかるでしょ? ほら、ね?
・・・あ~・・・あの~・・・その・・・つまりはそのですなぁ・・・。」
と、明けの明星様を補足しようとしたフェデリコさえも困惑しながら、要領をえない返事を返すのでした。
それがさらに私を苛立たせるのですが、突然、明けの明星様は大笑いしながらフェデリコを制止するのでした。
「待てっ!! ・・・・・・はははははははっ!!
いや、黙っていっ!! このまま教えない方が絶対に面白いっ!!」
そういうと、お腹を抱えて明けの明星様は更に嬉しそうに笑うのでした。
「はははははっ!! ラーマっ!! お前と言う奴は、つくづく俺の予想を超える女よっ!!
お前ほど自分に疎い女はおらぬっ!!
まったく、これではヴァレリオも浮かばれんっ!! はははははははっ!!」
明けの明星様は美しいお顔を歪めて大笑いされたのち、「ふ~っ」とため息を一つつかれると「許すっ!!」と仰いました。・・・・・・いや、私は何を許されたというのですか?
「ラーマよっ!! お前は俺の課した試練をクリアできなかったっ!! だからお前もなりそこないだ。
なりそこないだと決めようと思った。
しかし・・・クククク・・・お前ほど面白い女は珍しいっ!! 許すっ!! 特別に及第点を出そうっ!!」
明けの明星様はそう言うと私を指差して尋ねました。
「俺の下を目指したのは、俺に話があるからだろうっ?
お前は試練を乗り越えられなかったが、特別に聞いてやろう。
俺に何の話があるっ!?」
明けの明星様はどういうわけかはわかりませんが、私の話を聞いてくれるというのです。
話を聞いていただける・・・。そう思うと本来ならば、私の心は晴れたのでしょう。ですが、そこに至るまでに失ったものが多すぎました。
フィリッポ、マヌエル・・・みんな・・・私は死んでいった家臣たちの顔を思い浮かべながら、動かなくなったヴァレリオの髪を撫でて大粒の涙をこぼします。ここからは希望に胸を膨らませてお放しするわけではありません。ここに至るまでに多くの犠牲を強いた私の義務として明けの明星様に直訴するのです。
深呼吸を一つ。覚悟を決めなさい。ラーマ・・・。私は自分にそう言い聞かすとお話ししました。
「恐れ多くも畏くも明けの明星様には、私とスパーダ軍との和平交渉の見届け人になっていただきたく存じます。そのためにも戦争の停止をお願いいたしたく、私はここまでやってきました。」
私がそう言うと明けの明星様は笑顔を崩して、真顔になって「ほうっ!? 俺に見届け人になれ・・・やと?」と、短くお答えになりました。
「お前はアホのクセに頭は切れる。
俺に見届人になれと言うときながら、戦争停止をさせるのが本音やろ?」
「それともアレか?
ここで俺と話をする姿をそこにいるスパーダの将軍に見せることで奴の心変わりを狙う気か?。」
明けの明星様は、意地悪な笑みを浮かべてそういいました。全てを見越しておられるというわけです。
「お前が和平交渉をしたいと言うなら勝手にすればええ。
せやけど、そこのアホタレはそもそもお前との和平交渉に応じると言うたんか?」
フェデリコは首を横に振って答えました。
言葉を発しないところを見ると本当に明けの明星様と縁を作らないように気を使っていることがわかります。高位の霊格と交わす言葉には強制的に契約を持たされてしまう。その可能性について危惧してのことでしょう。流石です。フェデリコ。用心深く、そして油断がない。
しかし、そんな道理が明けの明星様に通ずると思っている辺り、まだまだ明けの明星様の恐ろしさがわかっておられないようですね。
首を振って返事をしたフェデリコの対応は本来ならば正しい対応でした。しかし、それをお許しになる明けの明星様ではありません。
ツカツカとフェデリコの前に進み出ると明けの明星様に怯えて地面に座り込むフェデリコの髪を掴み上げて睨みつけました。
「オンドラ。なんで口きかんのや? 俺に返事するのが面倒やというんかい? あ?
それとも俺に縁を作りたくないちゅーんかい? あん?」
「言うとったるけどな。己が口きかんかったら、俺と縁を作らんでええと思たら大きな間違いやぞ。
己の意思なんか知るか。この戦場におるもんは全部、俺の供物と知れ。今度、返事せんかったらおのれの部下を皆殺しにするぞ。わかったな?」
明けの明星様にそう言われてフェデリコはどう反応するべきか悩んでいるようでしたので、私は大きく首を横に振って話すべきだと伝えました。明けの明星様は、恐らく返事をしなければその場でここにいる人達を容赦なく殺したでしょう。私は無駄な人死を避けるために合図したのですが、フェデリコはそれでも悩んでいるようでした。きっと明けの明星様と意思の疎通が取れるのか怪しんでいるのでしょう。しかし、その態度は明けの明星様の怒りをかいました。
明けの明星様が右手を握る仕草をするとフェデリコの家臣数名が空間ごと握りつぶされたのです!
「あああああっ!!」
その場に吹き飛ぶ血飛沫を見てフェデリコが悲痛な叫びを上げました。自分の判断ミスが優秀な家臣を数名、殺してしまったのです。なんという酷い事を。フェデリコの悲痛な思いは察するにあまりありました。
しかし、明けの明星様は気になさりません。
「やかましいっ!! ギャーギャーおらぶなっ!! アホンダラァッ~!!
おのれの責任やろがっ!!」
「それでどないすんねん? 返事するんか? せぇへんのか?」
明けの明星様はフェデリコの頭を引っ叩きながら脅しました。あまりにも理不尽過ぎる暴力ですが、それに抗う力など私達にはなかったのです。
そして、明けの明星様は続けておっしゃいました。
「おいっ!! おのれ等、勘違いするなよ?
おのれ等こそ、ラーマの国民を理不尽に殺しに来たんと違うのか?
それが殺られる側に回ったら、途端に被害者ヅラか? あん?」
「おのれ等の仲間の死に様見て、おのれの罪を知れっ!!
アホンダラ共がっ!!」
フェデリコは震えながら何度も頷きながら「逆らいません。逆らいません。」と答えるのでした。それを見た明けの明星様はフェデリコの頭を掌でぴしゃりと押さえつけると
「違うやろが? お前は戦の勝ち筋が見えとるのにラーマなんかと和平交渉に応じるつもりなんかい? と、尋ねとるんじゃ
さっさと答えたらんかい、ハゲよ。」
・・・。いえ。フェデリコは剥げてはいません。ロマンスグレーのふっさふさです。
そんなことを言おうかと悩んでいると、フェデリコは
「明けの明星様の仰る通りに御座います。和平交渉に応じるつもりはございません。」と、ハッキリと答えるのでした。
それを聞いた明けの明星様は私の方を振り返り、両掌を私に見せて「ほらな?」と、言いたげなポーズを取るのでした。
しかし、ここで引き下がったらこれまでの者達の死が無駄になってしまいます。
私はフェデリコを睨みつけると覚悟を決めて和平条件を言うのでした。
「フェデリコ将軍。この度のその方らの進軍、凄まじいものがありました。敵ながら天晴れと褒めておきましょう。
しかし、戦というものは、長引けが長引くほど、双方の損害は増すばかり。
ここいらで和平交渉をして見るのも悪しくはないのでは?」
「こちら側としても敗戦側の責任として、それ相応の対価を支払うとお約束いたしますが。いかが?」
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