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未来編 7年後の彼ら

7年後の彼ら 2

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 怒りに頭を支配されながらも、声を荒げるのを抑えてほつみは吐き捨てた。

「……てめえはいつも、自分の事ばっかりだな。昔っからそうだ。『許して』の前に言う事があるのがわからねえのかよ。」
「…………?」

 ほつみは震える拳で、ベッドに倒れこむ一綺の前髪を掴んだ。
 家にいた時は、文字通り手も足も出せなかった。
 今なら、この無抵抗の暴君に怒りをぶつけることができる。

「『ごめんなさい』だよ。『弟虐待してごめんなさい』って言え。」
「…………。」
「無駄にプライド高い当主様がよ、犬に食われて死ねばいい。……服離せよ。」
「……すま、ない。虐めて……。」

 うわ言のようにそう呟いて、一粒涙を流した。
 7年前の一綺しかしらないほつみにとっては、それはおよそ信じられない光景だった。
 自分の命令通りに謝った一綺に、ぶわっと燃え上がるような怒りがこみ上げた。
 19年の憎悪をぶつける場所まで、お前は奪うのか。

「一綺くんっ!大丈夫ですか!?」

 その瞬間、ドア付近から男の声がする。
 まずい、先ほど電話した男の声だ。
 10分ほどで着くとの話だったが、まだ5分も経っていない。
 
 急いで駆け込んでくる久留米は、目の前の状況に目を丸くする。
 一綺と全く同じ顔をした男が、ベッドに寝転がり弱る一綺の前髪を掴み上げているのだ。

「……弟、さん!?」

 ほつみが、掴んでいた前髪を勢いよく離すと、一綺の顔が枕にボフンっとぶつかった。

「……俺を知っているんですか。」
「えぇ、まあ。」

 7年前、あなたが犬にされているところを覗き見したからです、とはとても言えなかった。

「俺、一綺くんの大学の時の同期の、久留米、と言うものです。……一綺くんが何かしましたか?」

 そう言いながら、久留米は一綺に駆け寄った。
 一綺の頭を抱きしめながら、顔にかかる乱れた前髪をかき分け、涙目で弱った一綺の顔を覗き見た。

 ほつみはわずかに動揺した。
 なんだこの二人、なんか、距離感がおかしくないか……? 

「一綺くん、大丈夫ですか?」
「ぁ……久留米……?」
「また苦しくなっちゃったんですか?」
「はぁ……はぁ……、俺、これ、夢……。」

 一綺はなおも混乱する。
 久留米とほつみが同じ場所にいる。
 そんな事あるはずがない。
 これは、夢だ。

「夢だと思いたいなら、夢になってあげてもいいですよ。」
「くるめ……。」

 寝ぼけたように、一綺は久留米の首に腕を回した。

「いつもの薬、持ってますか。」
「……持ってる…カバン中。」

 久留米は一綺の背をぽんぽん叩きながら、カバンを慣れた手つきで漁り、薬の紙袋と水のペットボトルを取り出し、一綺に飲ませる。
 一綺はされるがまま、んくんくと喉を鳴らして薬を飲み下す。
 疑問を呈した顔をしたほつみに気づき、久留米は薬を飲ませてから言った。

「不安障害と診断されてて。」
「……そんな事、誰も言ってなかった。」

 三条家の人間とはあまり連絡を取ってなかったが、それでも現在の様子は風の噂で流れてくる。
 一綺が病んでいるなんて話は聞いた事がなかった。

「軽度なので、常時症状が出る訳ではないんですが、たまにこうやって酷くなって、その度に家の人に見られたくなくて外に出ちゃうから。」
「じゃあ、三条の者たちは誰も知らないって事ですか?」
「いつもは動けなくなると僕に電話してくるんですけど、今日はそんな余裕もなかったみたいです。」

 図太い男だと思っていたがそれは、一綺の一面しか見ていなかったのかもしれない。
 可哀想だなんて微塵も思わなかったが、驚きはした。
 しかしそんな驚きは、すぐに塗り替えられた。
 一綺と久留米が醸し出す空気が、明らかにおかしい。

「んぁ……ぁ…ぁあ…。」
「夢の中で一綺くんは、僕にどうしてほしい?」
「さむ、い、から、触ってて、くれ。」

 ガクガクと震える腕で、久留米をぎゅうと抱きしめた。
 ほつみは、熱っぽい雰囲気を持つ二人に目が離せなくなる。
 こんなに弱々しく牙を抜かれた一綺を見るのは初めてで、心臓がどくどくと大きく鳴って痛い。
 久留米は、ほつみに挑戦的な目線を向けて、笑った。

 ほつみが三条家から逃げるまでの間、一綺の一番触れられたくない事、いわば地雷は「弟」であった。
 久留米もその存在を、何度調教に利用したかわからない。
 その張本人が目の前にいる。

 その弟の目の前で、一綺を犯せる日が来るなんて……!

 久留米は歓喜に震えた。
 今は一綺は混乱していて、状況が認識できていないが、先ほどの薬が効いてくるだろう。
 本物の弟が自分を見ているとわかった時、どんな顔をするのか。
 絶望?怒り?諦め?興奮?
 それを見たい。
 一綺も自分も、もう大人になってしまった。
 翌日が平日ならば、羽目を外すこともできない。
 激怒したり、泣いたりすることもほとんどない。
 
 しかし今、久留米の感情は7年前に戻ったようだった。
 嗜虐の興奮に打ち震える。
 ここでほつみを逃すわけにはいかない。

「……お兄さんのこと、恨んでいるでしょう。」
「……な。」

ーーこの男、俺が弟だって知って…!

 男が一綺のシャツの前を開くと、露わになった両乳首は乳首ピアスで飾られていた。
 太さ8mmほどの極太リングだ。
 金属製でずっしりと重く、重力で乳首が伸びてしまっている。
 男がリングに指をかけて、くいっ♡くいっ♡と引っ張ると、一綺は真っ赤な顔を俯かせて、唇を噛んだ。
 んっ♡んっ♡と甘い声を漏らし、じくじくと疼く乳首の快感に耐えている。
 まるで従属を誓った性奴隷の証。
 肥大化してしまった一綺の乳首をねっとりと舐め上げ、久留米は官能的にほつみを見つめた。

「久しぶりのお仕置き、あなたに捧げましょう。」
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