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番外編〈第一部 終了ボーナストラック〉
番外編 メイドズ☆ブラスト episode15
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「本当にワンパターンね! 生憎だけどマリンと違ってこのモニカに海蛇の毒は効かないよ!」
飛んできた毒の粉をモニカは顔をしかめて手にした半月刀で払いのけた。
それでも大量の紫色の粉は空気中に舞い上がり、モニカの周囲に毒々しい紫色の空間が立ち込める。
「ちっ!」
モニカは後方に飛びすさってその毒煙幕から脱出した。
「ふん、お前──毒耐性があるのか!」
バルレッタは憎らしそうにいった。
「そうよ。カルゾ邸の使用人はあんた達のおかげで殆んど耐性訓練を受けてるんだから!」
身体についた粉を払いながらモニカは言った。
モニカの言うとおり、カルゾ邸に勤める者は海蛇の襲撃に備えて毒の耐性訓練を受けている者が殆んどだ。
私、マリン・ハーランドに耐性がないのは、私が極度のアレルギー体質でどうにも薬品の類いに反応し過ぎてしまい、耐性訓練にドクターストップがかかってしまったためである。
「くそっ……」
バルレッタはいまいましそうにモニカを睨みつけた。
そして、ゆっくりと立ち上がると、
「ダリャッ! キェェェッ!!」
奇声を発しながら、両腕に仕込んであった巨大な針のような暗器をモニカに向かって繰り出した。
まともに当たれば、内臓まで串刺しにされてしまっただろう。
そんな怒濤の早業だ。
しかし、モニカは軽く飛びすさってそれをすべて避けていく。
「臆病者!」
そんなモニカに向かって、バルレッタは歯を剥き出しにして叫んだ。
そして、モニカに向かって突進し、一気に距離をつめる。
モニカは、先ほどバルレッタが地面に突き刺していった半月刀でそれをイヤイヤ受け止めた。
キィン!
ギュイン!
シュパッ!
繰り出される、紫色にてらてらと光る物騒な針が突然、伸びてモニカの顔面を襲う。
「……!」
モニカは器用に上体を反らし、ヌンチャクのように伸びた暗器を紙一重でよけた。しかし、暗器から液体のようなものが発射され、モニカのアーマーの胸部にドロッとふりかかる。
ジュッ!
嫌な匂いが立ち込め、毒液に浸食されたモニカの体操服アーマーの胸ゼッケン部分だけがドロリと溶け落ちた。
ゼッケン部分だけが不自然にくり抜かれたように穴が開き、そこからモニカの肌色の上気したピンクの肌がのぞく。そして谷間のない、ツルッペタの胸がペロン、と殆んど露出した。
辛うじて溶け残った布がニプレスのように先っぽを隠していたが、逆にその模様がペタンコ胸なだけに卑猥にうつる。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
モニカの絶叫が会場にコダマした。
「「モニカ──っ!」」
目を凝らして見つめていた私とダルバが悲鳴をあげる。
「……!?」
毒でダメージを受けてしまったのだろうか。
うつむいて胸を両手でおおったモニカの全身がブルブルと震えていた。
「おや、そんなヤワなアーマーじゃあたしの毒液を防げなかったようだねぇ。それにしても貧相な洗濯板だこと。その辺の太った男の方がまだ胸があるんじゃないか? アハハハ──」
勝ち誇ったようにバルレッタが自らの胸をブルンブルンと揺らしながらバカにしたような笑い声をあげる。
「許せない──! 絶対に許せないわ……」
尋常ではない殺気がモニカの全身から膨れ上がった。
その時。
「わぁ、うまくいったみたいねぇ」
観覧席でやきもきしていた私とダルバの背後から嬉しそうな声があがる。
「「パロマ──!」」
昼寝から復活した変態娘は、私たちを押しのけるとバルコニーから身を乗り出し、目を輝かせた。
「ほらほら、上手くゼッケンだけ溶けてるじゃないの! 計画通りだわ。本当に私って天才よねぇ……」
パロマは浮き浮きとした声をあげながら、オペラグラスを取り出すとモニカの身体を舐めるように見た。
「え?」
「パロマあんた、まさか……!」
私とダルバに詰め寄られたパロマはニヤリと嫌な笑いを浮かべた。
「当たり前でしょ、あんな綺麗に胸だけ溶けるわけがないじゃない!
私が作ったものなのよ?そんな簡単に溶けてたまりますか。演出よ、演出。
胸だけ溶けるなんて、またブロマイドの売り上げを煽るわよねぇ~。グフグフフフフ……」
「あんたねぇ……」
この大会で公式ショップで取り扱われている選手のブロマイドの売上金の半分は当日に参加チームに還元されている。
アーマーの製作費を削られているパロマには、この還元金が喉から手が出るほど欲しいのは分かっていたが、まさかこんな方法をとってくるとは──!
「なによぉ。ほら、ブルマーは無事なんだからさ。別にスッポンポンになった訳じゃないんだから、いいじゃないの……」
「そういう問題じゃないし!」
「本当にサイテー!」
私たちの非難をスルーしたパロマは、
「ほらほら。おかげでモニカがキレたわよ。これで初戦は勝ったも当然ね。私のおかげじゃないのよ!」
これまたムダに大きい胸をぷるるん、と得意気に震わせ、バルレッタより邪悪な高笑いをあげたのだった。
飛んできた毒の粉をモニカは顔をしかめて手にした半月刀で払いのけた。
それでも大量の紫色の粉は空気中に舞い上がり、モニカの周囲に毒々しい紫色の空間が立ち込める。
「ちっ!」
モニカは後方に飛びすさってその毒煙幕から脱出した。
「ふん、お前──毒耐性があるのか!」
バルレッタは憎らしそうにいった。
「そうよ。カルゾ邸の使用人はあんた達のおかげで殆んど耐性訓練を受けてるんだから!」
身体についた粉を払いながらモニカは言った。
モニカの言うとおり、カルゾ邸に勤める者は海蛇の襲撃に備えて毒の耐性訓練を受けている者が殆んどだ。
私、マリン・ハーランドに耐性がないのは、私が極度のアレルギー体質でどうにも薬品の類いに反応し過ぎてしまい、耐性訓練にドクターストップがかかってしまったためである。
「くそっ……」
バルレッタはいまいましそうにモニカを睨みつけた。
そして、ゆっくりと立ち上がると、
「ダリャッ! キェェェッ!!」
奇声を発しながら、両腕に仕込んであった巨大な針のような暗器をモニカに向かって繰り出した。
まともに当たれば、内臓まで串刺しにされてしまっただろう。
そんな怒濤の早業だ。
しかし、モニカは軽く飛びすさってそれをすべて避けていく。
「臆病者!」
そんなモニカに向かって、バルレッタは歯を剥き出しにして叫んだ。
そして、モニカに向かって突進し、一気に距離をつめる。
モニカは、先ほどバルレッタが地面に突き刺していった半月刀でそれをイヤイヤ受け止めた。
キィン!
ギュイン!
シュパッ!
繰り出される、紫色にてらてらと光る物騒な針が突然、伸びてモニカの顔面を襲う。
「……!」
モニカは器用に上体を反らし、ヌンチャクのように伸びた暗器を紙一重でよけた。しかし、暗器から液体のようなものが発射され、モニカのアーマーの胸部にドロッとふりかかる。
ジュッ!
嫌な匂いが立ち込め、毒液に浸食されたモニカの体操服アーマーの胸ゼッケン部分だけがドロリと溶け落ちた。
ゼッケン部分だけが不自然にくり抜かれたように穴が開き、そこからモニカの肌色の上気したピンクの肌がのぞく。そして谷間のない、ツルッペタの胸がペロン、と殆んど露出した。
辛うじて溶け残った布がニプレスのように先っぽを隠していたが、逆にその模様がペタンコ胸なだけに卑猥にうつる。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
モニカの絶叫が会場にコダマした。
「「モニカ──っ!」」
目を凝らして見つめていた私とダルバが悲鳴をあげる。
「……!?」
毒でダメージを受けてしまったのだろうか。
うつむいて胸を両手でおおったモニカの全身がブルブルと震えていた。
「おや、そんなヤワなアーマーじゃあたしの毒液を防げなかったようだねぇ。それにしても貧相な洗濯板だこと。その辺の太った男の方がまだ胸があるんじゃないか? アハハハ──」
勝ち誇ったようにバルレッタが自らの胸をブルンブルンと揺らしながらバカにしたような笑い声をあげる。
「許せない──! 絶対に許せないわ……」
尋常ではない殺気がモニカの全身から膨れ上がった。
その時。
「わぁ、うまくいったみたいねぇ」
観覧席でやきもきしていた私とダルバの背後から嬉しそうな声があがる。
「「パロマ──!」」
昼寝から復活した変態娘は、私たちを押しのけるとバルコニーから身を乗り出し、目を輝かせた。
「ほらほら、上手くゼッケンだけ溶けてるじゃないの! 計画通りだわ。本当に私って天才よねぇ……」
パロマは浮き浮きとした声をあげながら、オペラグラスを取り出すとモニカの身体を舐めるように見た。
「え?」
「パロマあんた、まさか……!」
私とダルバに詰め寄られたパロマはニヤリと嫌な笑いを浮かべた。
「当たり前でしょ、あんな綺麗に胸だけ溶けるわけがないじゃない!
私が作ったものなのよ?そんな簡単に溶けてたまりますか。演出よ、演出。
胸だけ溶けるなんて、またブロマイドの売り上げを煽るわよねぇ~。グフグフフフフ……」
「あんたねぇ……」
この大会で公式ショップで取り扱われている選手のブロマイドの売上金の半分は当日に参加チームに還元されている。
アーマーの製作費を削られているパロマには、この還元金が喉から手が出るほど欲しいのは分かっていたが、まさかこんな方法をとってくるとは──!
「なによぉ。ほら、ブルマーは無事なんだからさ。別にスッポンポンになった訳じゃないんだから、いいじゃないの……」
「そういう問題じゃないし!」
「本当にサイテー!」
私たちの非難をスルーしたパロマは、
「ほらほら。おかげでモニカがキレたわよ。これで初戦は勝ったも当然ね。私のおかげじゃないのよ!」
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